生物資源とポスト石油時代の産業科学
―生物生産を基盤とする持続・循環型社会の形成を目指して―
委員会名  第6部
報告年月日  平成12年7月17日
議決された会議  第940回運営審議会
整理番号 17期−77

作成の背景

「地球環境を保全しつつ,人類社会を持続的に繁栄させるためには,有限の化石資源のみに依存しないポスト石油社会に移行する必要がある」との認識に立って,植物が恒久的に生産する生物資源の有効利用について検討を加えてきた。生物資源を原料とする産業活動によれば,環境負荷を回避しうる炭素資源循環型の物資の生産体系と二酸化炭素濃度の低減に寄与するエネルギー供給体系を究極的には達成できるはずである。本部会では,このような持続・循環型生産技術システムの構築に関する検討を実施した。

現状及び問題点  

大量廃棄物,酸性雨,地球温暖化などの環境諸問題と予測されている資源の枯渇問題は,化石資源の大量消費に依存する現在の物質生産・エネルギー生産に起因する。このような状況をかんがえみると,資源・エネルギー消費の低減につながるライフスタイルへの転換を目指すとともに,化石資源を温存しつつ,生物資源を活用する新しい物質生産・エネルギー供給体系へ移行することが,人類社会の持続的繁栄には必須の課題となる。まず生物資源を出発物質とする産業科学が化石資源を前提とする産業科学に代替しうる可能性を多方面に検討し,その達成に必要とされるけ研究課題とその実施方策につき提言するに至った。

改善策・提言等

生物資源の安定供給を目指して,第6部は恒常的な最重要課題として耕地・森林を含めた地球の生物圏の保全に取り組んできた。生物資源の安定供給が保証された段階では,生物資源がポスト石油時代の物質生産とエネルギー供給の一翼を担うことが必須であろう。このような時代の養成にこたえ,人類の持続的な繁栄と地球環境の保全を達成する上で,持続・循環型生産技術体系の構築を目指して,次のような研究課題の推進が不可欠であることを提言する。
1. 太陽エネルギーに依存する生物生産の効率化を目標に,二酸化炭素固定機能の増強を企てる。また,微生物による窒素,リン資源の回収についても研究を展開する。
2. 生物資源を物質生産と一部はエネルギーとして高度利用するためのカスケード的利用システムを構築する。
3. 生物起源原料を有効物質に変換するために,メタボリックエンジニアリングを確立する。
4. 新規有用天然生理活性物質を探索するとともに,生物資源を原料とするファインケミカルを創製する。
5. 生物素材が有する複合的特性に着目し,生分解性を有する高分子素材や耐久型生活必需品などの高機能複合素材を開発する。
6. 持続・循環型産業体系の確立を指向した教育・研究システムを構築する。

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1.石油から太陽エネルギー2.二酸化炭素の生物資源化3.リン資源回収システムの確立4.CO2ニュートラル5.物質生産における生物資源の高度利用

関連研究機関・学協会
東京農業大学総合研究所


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