新たなる研究理念を求めて
委員会名  第3常置委員会
報告年月日  平成11年4月12日
議決された会議  第917回運営審議会
整理番号 17期−8

作成の背景  

本報告では,わが国における学術研究の創造性を高めかつ全ての分野で均衡がとれた発展を図るために,今までの基礎研究,応用研究さらに戦略研究という分け方について改めて検討を加え,「モデル転換論」に基づく新しい研究の分類方法を提案している。

現状及び問題点  

日本から貢献によって世界の学術の研究や科学技術が革新された事例は少なく,主として事後の改良に日本の研究が集中しているために,「基礎研究ただ乗り」の非難が起こっている。これは,学術全体の研究を基礎,応用,開発(そしてあらたに戦略研究が加わる)と細分化して固定化する分け方自体が,学術の進歩をゆがめてきたのではないだろうか。また,人文科学,社会科学,自然科学という分類によって研究分野を排他的に区別することも,ひとつの形式にすぎない。最初に何を作り出すかという研究者の明確な目的があり,それを実現するための試行錯誤の中で,新しい現象や考え方の発見をもとにした深い研究が行われ,それがイノベーションを創る。

改善策・提言等

人文・社会・自然の諸科学に渡る分類よりも実際に研究が進む過程での研究者の自然な心の動きに沿った分け方であることが望ましい。 
1. 創造モデル研究(一次:仮説の提唱とその実証)
2. 展開モデル研究(二次:一次モデルの標準化と普及)
3. 統合モデル研究(三次:二次モデルの実社会への融合)
このモデルは,研究者自身の価値判断に基づく分類であるため,相互に循環する研究活動を自ずから促すことになり,その結果,従来のような基礎研究は非実用,応用研究は実用という古い殻に閉じこもった思考を変え,研究の全体を見通した戦略的思考を生み出すであろう。 
このモデルは,研究者自身の価値判断に基づく分類であるため,相互に循環する研究活動を自ずから促すことになり,その結果,従来のような基礎研究は非実用,応用研究は実用という古い殻に閉じこもった思考を変え,研究の全体を見通した戦略的思考を生み出すであろう。
 また,モデル転換論に基づく研究の分類には,学術研究と実社会との融合を目指す統合モデルが必然的に含まれる。それは,研究対象を諸科学の統合的な視点から捕らえる研究方法であり,統合科学という新たな分野を生み出すことになる。「地球環境科学」はこの一例であり,人類および国家の利益と科学のグローバリゼーションの両立を目指すものである。人口,食糧問題などが統合的に配慮されるべきであり,生物の競争,相互作用,共生が諸科学の統合の上に論じられるべきである。

報告書原文  目次を見る  全文HTML(52k)  全文PDFファイル(217k)

キーワード  青色のキーワードをクリックすると解説文がご覧になれます。

1.戦略研究(Strategic research)2.科学技術におけるイノベーション3.米国における研究分類の見直し4.モデル転換論5.統合科学

関連研究機関・学協会
文部科学省


Copyright 2001 SCIENCE COUNCIL OF JAPAN