このホームページは書籍・文献等を参考に構成し,作成したものです。利根川先生ご本人に直接インタビューしたものではありません。
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![]() こっ,怖いー!何これー? ![]() 宇宙人が攻めてきたかと思ったわよ。 早く普通のサイズに戻してよね。 |
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![]() 身体のサイズの設定を小さくしすぎた。 |
![]() 利根川先生 |
利根川です。 どうだい!機能的な形をしてるでしょう! これはウイルスの一種ですよ。 ちょうど今,実験のまっ最中なんだよ。 |
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利根川先生! はじめまして。よろしくお願いします。 ノーベル生理学・医学賞受賞おめでとうございます! 実験の最中におじゃましてしまって,すみません。 これがウイルスなんですか?おもしろい形をしているんですね。 さっそくですが,先生は子供のころ,何になりたかったのですか? |
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私は,野口英世のように医者になって,将来,孤児院をつくろうと思っていたのですが, 大学生になって,分子生物学に目覚めたんだよ。 |
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(小声で)りか,先生は今,お忙しそうだから,また今度お訪ねしたほうが良いかも。 | |||
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(小声で)あっ,そうね。大事な実験の途中ですものね。 | |||
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先生,もっとお話を伺いたいのですが,実験の途中に来てしまったので,後日,ゆっくりと,おじゃまさせて下さい。 どうもありがとうございました。 |
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実験の途中に立ち会えるなんて,ラッキーでした。 先生,どうもありがとうございました。 |
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~おもしろ情報館にて~ | ||||
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博士,ただいま! ![]() どの先生のお話も,とってもおもしろくて,ためになりました。 ただ,利根川先生は,実験の最中だったので,くわしくお話を聞けませんでした。 博士,利根川先生の研究について,いろいろと教えてください。 |
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お帰り。おお,顔つきが変わったな。いいことじゃ。相当ためになったと見える。 科学というのは,おもしろいし,医学は,また学問としてもおもしろいじゃろう。 |
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はい。小柴先生の宇宙も神秘的でおもしろかったけれど,生命の神秘にかかわる医学もおもしろいですね。 | |||
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利根川先生の研究は,生命の神秘の中でも,もっとも興味深い,人間の自然治癒力の話だから,おもしろいぞ。 利根川先生は,1987年に“多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明”により,ノーベル生理学・医学賞を受賞されておるんじゃ。 この人間の自然治癒力じゃが,利根川先生が発見をするまでは,どういうメカニズムで,自分の力だけで,たくさんの病気が治るのかわからなかったのじゃよ。 なにせ,わかっているだけでも,100億種類以上の病原体に対して抵抗する必要があるんじゃ。 しかも,この100億種類以上の病原体に対して,すべて異なる武器で戦う必要があるのじゃよ。 …ということは,人間の身体の中には,病気と闘うための100億種類以上もの武器を作る製造工場が必要というわけじゃな。 この武器というのは,身体を作る物質と同じ,タンパク質じゃ。 武器という,タンパク質の部品の生産工場が必要になるんじゃよ。 ところが,タンパク質を作る遺伝子というのは,3万個ぐらいしかないんじゃよ。 それでは,どうしたら100億個もの武器を作ることができるのか? ということが問題になるの。これは難問じゃな。 |
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(100億個)-(3万個)=99億9997万個。 これだけのタンパク質は,どこから作られるんだろうー?? 生命のミステリーですね。 |
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そう,不思議じゃろう? これは,GODのミステリーと呼ばれていたんじゃ。 ただし,ここでいうGODとは,神様のGODではなくて,Generation of Diversity(多様性の発現)の頭文字をとって,GODなんじゃがね。 これを解く鍵は,なんと,突然変異の考え方にあったんじゃ! 突然変異というのは,もともとは進化を考える中でわかってきたものなんじゃが,普通は,何万年もかけて突然変異が生じるものと思われていたんじゃ。 しかし,これが,免疫系と呼ばれる武器製造システムでは,自由に突然変異を起こすことができることが,利根川先生の研究を通じてわかったんじゃ。 100億個以上もある病原体という敵のうち,まんまと身体に進入してきた敵に対する武器が,たちどころにできてしまうとうものなんじゃよ。 病原体の弱点をたちどころに見つけて,だいたい数日間ぐらいで,この武器の設計図をつくり,その後は,この武器を大量生産するようになるんじゃよ。 武器ができるまでは、熱がでたり,体調がおかしくなったりしているんじゃがな。これは,身体の中で病原体が暴れまわっているときじゃな。 |
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でも,武器といっても,病原体とそうでないものは,どうやって区別するのですか? 身体の中には細胞もあるし,赤血球や白血球や身体を作るタンパク質もありますよね? |
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りかも,いいところに目をつけるものじゃ! ノーベル賞は確実じゃな(笑) 着眼点というか,こういう勘が大切なんじゃよ。勘が悪いと,大発見もできないんじゃ。 さて,話をもどそう。 この武器にはいくつか種類があるのじゃが、敵に目印をつける武器もあるんじゃ。 敵がだれかわからないと,戦いにはならないからの。 スポーツでは,ユニフォームが敵と見方で違うから勝負になるが,みんな同じユニフォームだったらどうじゃ? 混乱して,敵にパスをわたしてしまったり,敵が味方にパスしたり…,なにがなんだか,わけがわからなくなるじゃろ? まずは敵であることを見分ける,印をつけることのできる武器が重要なんじゃ。これを抗体という。 抗体がくっつくと,あとは,マクロファージとかキラー細胞という殺し屋のような白血球が,侵入者をきれいに片付けてくれるんじゃ。 このマクロファージとかキラー細胞というのは,敵を殺す武器で殺し屋じゃ。 この印のついたものに総攻撃をしかけるのじゃが,これが,人間の免疫力というものなんじゃよ。 その後,死んだ病原体は,排泄物として身体から出て行くんじゃ。 |
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印をつけるということが,大切なんですね。 でも,この印というのは,間違うことはないんですか? |
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それが問題なんじゃ。 人間の身体というのは,実に精巧にできているんだが,ときどき間違うことがあるんじゃ。 間違って自分の身体にある細胞を攻撃することもあるんじゃよ。それが,自己免疫疾患という病気なんじゃ。 自分の身体に対して免疫力が働く病気なんじゃよ。 ところで,この免疫システムは,遺伝子によって支えられているのじゃが,この遺伝子がない赤ちゃんがいるんじゃ。 生まれたときから持っている病気で,先天的免疫不全症というのじゃが,生まれつき抗体や病原体を殺す細胞を作る力がないんじゃよ。 |
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え~っ!それは大変だ。 免疫力がないということは、どんな病気にでもかかってしまうということですよね? |
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その通り。 だから,この病気の子どもは,ずっと無菌室で生活しなければならないのじゃよ。 |
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![]() ビックリ |
えー,かわいそう!! |
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エイズと呼ばれる病気は,これに対して後天的免疫不全症で,人間の免疫システムに入り込んで,これを内側から破壊してしまうんじゃよ。 エイズは二重スパイのようなもので,味方のような顔をして潜んでいるんじゃ。 そして,身体が弱ったときを狙いすまして,総攻撃をかけてくるという恐ろしい病気なんじゃよ。 |
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エイズのことは,よく聞くけど,二重スパイなんだ! それは,わかりにくいですよね。 | |||
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それから,白血病というのもあるんじゃ。 これは,そもそも免疫システムというものが血液に含まれているのじゃが,この血液がちゃんと作れない人がいるんじゃよ。 血を造ると書いて,造血細胞というのじゃが,この造血細胞が癌になってしまうと,免疫システムが壊れてしまうんじゃよ。 |
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白血病って、血液の「がん」ですよね? | |||
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その通り。白血病といのはさきほど話した武器なんじゃが,武器が「がん」になったら,どうなると思うかの? 不良品の武器しかできないから,侵入者の病原体を攻撃することができなくなるんじゃよ。怖い病気じゃな。 |
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免疫というのは本当に重要なんですね。とてもよくわかりました。 | |||
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そういえば,おもしろ情報館と田中先生のところで「がん」の勉強したじゃろ? 「がん」というのは,もともと自分の身体の中にある細胞の遺伝子に異常ができて,がん細胞になるので, 敵か見方かの区別が難しいものなんじゃ。 健康で免疫システムが正常に働いていると,ちょっとした細胞の異常も発見できるし,すぐに修復も可能なのじゃが, 年をとると,免疫システムも老化してくるんじゃよ。癌を殺す力も弱ってくるということじゃ。 だから,年をとってから癌になりやすくなるんじゃな。わしも年寄りじゃから,いつも気にしておる。 |
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病気というのは,いろんな原因があるんですね。知らなかったわー。 病気って,身体の中に,ばい菌が入ってくるものだとばかり思っていたのですが,違うのですね。 下にウイルスの絵があるけど,ウイルスって,目に見えない大腸菌よりもさらに小さいのね。 こんなのが,いっぱい,うじゃうじゃいると思うと,なんかイヤだな。 利根川先生が,おっしゃられるように免疫力があるから,大丈夫なんだろうけど…。 ![]() 見なかったことにしておこうっと。 |
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病気には,いろいろな原因があって,これが病気を複雑にしているんじゃよ。 でも,ノーベル賞を受賞したワトソンとクリックが,DNAというものを発見し, 「生命は,遺伝子という設計図をもとにタンパク質でできた精密な機械である」ということがわかってから,この複雑さも解きほぐれてきたんじゃよ。 田中耕一先生が作った質量分析装置で,「がん」がつくるタンパク質を発見することができるようになれば, 敵か味方か区別の難しいがん細胞を見つけることができ,治療もできるのじゃがの。 「がん」は,なによりも早期発見が大切なんじゃよ。大きくなってからじゃと,手がつけられない。 「がん」が小さいうちなら,簡単な治療で治るんじゃよ。 「がん」といえば,放射線や化学物質でやっつけるというのが,これまでの医学じゃったが, 「がん」に特有の印をつけることができるようになれば,人間の免疫力だけで,がん細胞をやっつけることも夢ではないんじゃよ。 |
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人間の体というのは,知れば知るほど不思議なものですね! 自然の治癒力を強化するような治療っていいな。 |
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これからは,手術もだんだんと少なくなるじゃろう。 注射と飲み薬だけで,ほとんどの病気が治せるようになるようになるはずじゃ。 それに,交通事故で手足を失った人にも,自分の細胞を増殖させて生きた手足を再生・蘇生(そせい)させて,もとどおりの姿になったり, 再生されないと言われていた神経細胞も再生させて,目が見えなくなった人が目が見えるようになったり…とか,奇跡のような医療が実現するようになるはずじゃ。 ただ,まだ数十年はかかると思うがの。そんな夢のような話も不可能ではないということがわかってきたのじゃよ。 ゆうきやりかが老人になるころには,こうした医学は,実現しているじゃろうな。 ゆうきやりかも,遺伝子工学を志して,ノーベル賞を狙ってみたらどうじゃな? |
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はい。そうしてみます。尊い人命を救うような仕事をしたいな。 21世紀が「生命の世紀」と呼ばれているのは,そういう意味なんですね! 生命の世紀に,生命の研究や仕事に携(たずさ)わることは重要なことですね。 今回もすごく勉強になったわ? ね、ゆうきくん? ![]() 本当によく勉強したわね。すこし,疲れたわ。 うん,そうだね。ちょっと,疲れたね。 ![]() でも,すごく勉強になったな。いろんなお話が聞けて,とってもおもしろかったよ。 |
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ノーベル賞を受賞した人たちには,いろいろなドラマがあったじゃろ? 机の前に座っていることだけが,研究ではないんじゃ! 失敗や偶然や,普通なら見逃すようなことも,ちゃんと観察し,おかしいと思って疑問を持ち,この疑問を解決する答えを見つける!ということが大切なんじゃな。 よく,ノーベル賞を受賞する人は,天才だといわれるが,どうなのかな? たしかに,天才というのはおるが,天才がみな,ノーベル賞を取るわけではない。 社会のために,人類のために,貢献できたことに対して,ノーベル賞が与えられておるのじゃ。 ゆうきもりかも,そういう発見なり,貢献ができれば,ノーベル賞は受賞できるんじゃよ。 失敗をおそれないこと,間違いをおそれないこと…,むしろ,失敗や間違いの中にこそ,大発見があると考えて,それを喜ぶべきかも知れないのじゃ。 成功するということは,すでに常識として知っていることの延長線上(えんちょうせんじょう)にあるんじゃよ。 失敗には二つあるんじゃ。 一つは,本当に失敗するということ,もう一つは,まだ未知のもので,誰も知らないことがあって,それが常識に照らし合わせて失敗と言われるもの,この二つじゃな。 後者は,失敗しながら,実は,成功しているのじゃ…。 なんか,説教じみた話になったが,そういう意味では,ノーベル賞をとるような人物は,失敗の天才かもしれないな。 |
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それなら,ぼくにもノーベル賞を取るチャンスがあるよね。 失敗の天才という意味では,ぼくの左にでものはいないからね! |
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それを言うなら,右にでるものがいない!ということじゃろ。(笑) | |||
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あはは。さっそく間違ったわね。 ゆうきくんは,失敗の天才というより,間違いの天才だわね。 でも,博士の理屈によれば,ゆうきくんはノーベル賞を受賞する資格は,十分にありそうね! 博士,今回のノーベル賞を巡る旅は,とってもおもしろかったわ! ![]() また,タイムマシンで,いろいろな時代へ行って,たくさんの人と出会いたいな。 そして,知らないことをもっともっと知りたいわ! |
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そうだね,ほんとにすごく楽しい旅だったなー。最後は,ちょっと疲れちゃったけど…。 いろいろ知らないことを勉強できて本当に良かったよ。 博士,勉強って,楽しいものだったんだね!(笑) |
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ふぉ,ふぉ,ふぉ, ゆうきも勉強が好きになってきたようじゃな。 知らないことがわかるようになるということは,すばらしいことじゃな。 また,いつか,二人で冒険旅行をする日がくるとよいのう…。 |
[作成:2003年3月現在内容]
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