このホームページは書籍・文献等を参考に構成し,作成したものです。ローランド先生ご本人に直接インタビューしたものではありません。


ゆうきくん 今回は、タイムマシンというよりは宇宙船のようだなぁ。
まるで、スペースシャトルみたいだ!

 毛利さんもこの景色をながめていらしたのかぁ・・・。
 地球はなんてきれいなんだろう。 本当にきれいだな~。
 (ゆうきはうっとりモードに入っている)

類初の宇宙飛行士のガガーリン
「地球は青かった」と言った言葉がほんとぴったりだわー。 りかちゃん
 ゆうきは「サルの惑星」という顔だけど・・・。
そういう、りかこそ「砂の惑星」という顔だけど!ゆうきくん
カラカラに乾いてうるおいがないっつーの。

 
写真:地球
                 『提供 JAXA』
ローランド先生 これこれそこのふたり。宇宙に来てまで喧嘩しなくてもいいんじゃないかな・・・。

ところで、君たちはこんな所まで何をしに来たのかな?

ゆうきくん

ローランド先生に会いに来ました。
  ゆうきです。ゆうきくん
        りかです。りかちゃん

ローランド先生
Oh!そうだったのか!私がローランドだよ。
ゆうき君、りかちゃん、オゾンホールにようこそ。

ここでは、生き物は生きていけないんだよ。紫外線が強くてね、すべての生物は死んでしまうんだ。
強力な太陽光線が、このオゾンホールと呼ばれるオゾン層の穴から、そのまま地上に降り注ぐと、恐ろしいことになるんだよ。

では一つ、問題を出すよ!
オゾン層というのは、どのぐらいの厚さがあるかわかるかい?
気体というのは、圧力によって体積が変わるので、仮に地上と同じ1気圧とした場合の厚みは、どのくらいになると思うかね?

りかちゃん
1kmぐらいかな?
そんな大切な役割を果たしている層なんだから、もっと厚いかも知れないかしら?


びっくり!気がつくのが遅かった。。。
ゆうきくん ぼくは、10kmぐらいだと思うな。
ローランド先生
ブーっ! ふたりとも間違いです。
実は、たった3mmの厚みなんだよ。
りかちゃん えぇー!!??ゆうきくん
ローランド先生 宇宙は、不思議なことばかりだろう。小柴先生がスーパーカミオカンデで観測したニュートリノは、ものすごい数が宇宙空間に存在するんだ。
例えば、ひとの身体を一秒間に1兆個ものニュートリノが通過しているのだよ。でも、痛くもなんともないし、別に身体になんの影響も与えないよね。そのぐらい小さいものなんだよ、ニュートリノというものは。
しかし、1気圧で3mmのオゾン層が地球上の生物を紫外線から守っている、ということは実に神秘的だね。
りかちゃん 地球というのはなんかどっしりとして安全なものという気持ちがあったけど、3mmの空気の膜に守られていると思うと、なんか不安だな。
人間というのは、そんな薄い空気の膜を破ってしまうようなものを作ってしまったのですね。悪いひとたちがいるのね。
ローランド先生 ところが、そうじゃないんだ。悪いことをしようとしてそんなものができたんじゃないんだ。
むしろ、良いと思われるものの方が皆が使ってあっという間に広がるから、危険なことになるんだ。
このオゾン層を破壊すると言われ、今では悪者になっているフロン(CFC)というのも、最初は夢の化合物として登場して、無害が売りだったんだよ。
実際、吸い込んでも身体に悪い影響は出ないし、身体のなかで分解したりしないんだ。
それに、値段が安いということもあって、冷媒、発泡剤、洗浄剤、エアロゾル噴射剤、などとして使用され、使用量は急速に増加していったんだよ。
フロン
ゆうきくん へーっ、夢の化合物だったんだ。量が多くなるといろいろ問題が生じるんだね。過ぎたるは及ばざるが如し。
ローランド先生 それは、中国の孔子の言葉だね。その通りだよ。
ゆうきくん 昨日、たまたま博士に教えてもらいました。へへっ。
ローランド先生 Hcfc→Cl
フロンはなかなか分解しない安定な物質だったので、成層圏まで到達し、成層圏での強力な紫外線で初めて分解して塩素をだすんだよ。
この塩素がオゾン層のオゾンを破壊してオゾンホールができたんだ。塩素というのは、人間の身体の中では胃袋で食べ物を何でも分解してしまうのに使われているし、塩素ガスというのは化学兵器としても用いられているんだ。また、塩素は海の水の中にも含まれていて、なんでも腐食させてしてしまうんだ。
でも、逆に水道水やプールなんかには消毒用として塩素が使われているから、使い方次第でいいものにも悪いものにもなるということだね。
りかちゃん うーん。なんか、哲学的ですね。バランスが大切ということですね。
ローランド先生 でも、そんなに難しいことではないんだよ。地球に影響がでるほどに使わなければいいんだよ。でも、現代の資本主義経済では、バランスを保つことが難しいね。いいものは、ボーダーレスで、かつ、グローバルに広がっていく。科学技術と経済が手を取り合うのは良いのだけれど、これが巨大化してしまうところに、大きな落とし穴があるんだ。
ゆうきくん わかんないな。わからないけど、この資本主義とかグローバルとかボーダーレスというのは、いずれ意味がわかるときがくるからそのときでいいや。単語だけ覚えておこうっと。
ローランド先生 すべてを理解することはできないが、問題があるということを覚えておくことが、これからゆうき君の人生を大きく変えることになると思うよ。
話はもとにもどるけれど、量が多いと毒になるが、量がすくないと薬になるというものはいろいろあるんだ。このフロンも成層圏まで到達したから、分解してオゾンを分解してしまった。量がすくなければこういうこともなかったのだが、安くて便利でいろいろなものに使えたから、大量に使用されて成層圏まで到達するぐらいの量になったんだ。
 ただ、1974年にネイチャーという雑誌に投稿した段階ではあまり誰も信じてくれなかったのだが、1985年に南極上空でオゾンホールが観測され、オゾンホールの内側と外側で塩素の濃度とオゾンの量に相関が見られたところから、わたしたちのこの説が正しいと考えられ、この功績で1995年にノーベル賞を受賞したんだ。
りかちゃん アインシュタイン先生が南極での皆既日食のときに見えないはずの星が見えたということで、ノーベル賞を受賞できたという話を聞いたけれど、南極というのはノーベル賞にゆかりの深いところなんですね イラスト27:アインシュタイン先生
イラスト28:ローランド先生 そうかも知れないね。ただ、わたしたちのノーベル賞はこれまでのノーベル賞とはすこし意味が違うことに気がついているかな?
イラスト29:ゆうきくん どういうことですか?意味の違うノーベル賞なんてあるんですか?
ローランド先生 地球環境』に関するはじめてのノーベル賞なんだよ。
りかちゃん そういえばそうね。大学や研究所に環境工学なんかができたのも最近のことだし、そういう意味では新しい学問ですよね。
博士の言い方を借りれば、惑星地球号に関する学問ですよね。この惑星地球号に関する研究に与えられたはじめてのノーベル賞ということですよね。
わたしと同時受賞したクルッツェン博士や、モリナ博士も同じ栄誉に輝いている。惑星地球号を考えないといけない時代になったということを反映しているのだと思うよ。
ローランド先生 人間が生命を維持するために必要な惑星に関する研究なのだよ。今、人類は火星に移住しようと考えているが、火星に移住するためにはいろいろな問題を解決しなければならない。例えば、火星にいって人間の免疫力が耐えられるかどうか。利根川先生の研究を紹介したときに免疫の話をしたけれど、火星にいるウイルスに対して人間は耐えられるかどうか興味深いものがある。研究課題は、尽きない。ノーベル賞級の研究はいくらでもある。あとは、君たちがそれに取り組むかどうか、それだけだよ。情熱があれば、研究上の苦しみも乗り越えられる。
イラスト33:ゆうきくん はい。そうですね。イラスト34:りかちゃん
情熱を持って研究に取り組むことが必要なんですね。

どうもありがとうございました。いろいろ勉強になりました。
~おもしろ情報館にて~
おもしろ博士 地球は、どうじゃったかの。美しかったじゃろ?
この地球を守るのは、お前たちの役目じゃ。行きすぎはいかん。過ぎたるは及ばざるが如し、じゃ。
わしらの時代は反省することだらけじゃ。しかし、21世紀はそれではいかん。お前達に頑張ってもらいたいものじゃ。
ゆうきくん はい! りかちゃん

おもしろ博士
あいかわらず、返事だけはよいのう。元気なのはよいことじゃ!

りかちゃん 返事だけじゃないです!
世の中の物が便利になるのはうれしいけれど、便利だからって良い物ばかりとは限らないのよね。
地球に与える影響についても考える必要があるのだと思いました。
今回の旅もとっても勉強になりました!
おもしろ博士 ほぉ!地球環境について、すっかり興味を持ったようじゃのう。
今まで知らなかったことに興味を持つということは、素晴らしいことじゃ。
また、二人で旅ができるとよいのう。
~読者諸君へ~イラスト41:おもしろ博士 ゆうきとりかと一緒に旅をしてみて、どうじゃったかのう?
この旅をきっかけに、君も真剣に「惑星地球号」について考えてみてはどうじゃろう!
では、また会える日を楽しみにしておるぞ!


[作成:2004年3月現在内容]



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