私は小学校4年生の時にツベルクリン反応が陽転し、胸部レントゲン検査を受けた。始めて受ける物々しい検査に自分が重い病気に罹ったのではないかと不安になった。それをきっかけにして、倦怠感が生じ、微熱が出始めた。町医者に診察を受け、肺門リンパ腺炎と診断され3ヶ月の絶対安静を命じられた。今にして思うと多分に心身症的な状態であり結核性の病気では無かったのではないかと思われる。絶対安静の命令はいよいよ不安を増大させ、もう治らないのではないかという気持ちに追い込んだ。そんな時、定期的に往診してくれる医者の顔を見るだけで不安が消えていった。医者とはなんと大きな力を持っているのだろう、もし自分が治ったら人から信頼される医者になりたい、と子供心に思った。 念願叶って精神科の医者なったが、精神科の病気は分からないことばかりだった。ある時、毎日決まったように朝はうつがひどく、夕方から元気になるというそううつ病の患者さんを身近に見て、人間が持つリズムの不思議さを感じ、これが精神科の病気と関係があるかも知れないと思った。それ以来、生物が持っている体内時計に興味を持ち時間生物学の道を歩んできた。そのおかげでリズムの病気に悩む多くの患者さんのお役にたてたものと思っている。 |