■科学者の道を志した理由 |
第2部会員 森 英樹
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高校時代に社会科の教師が、さまざまな冤罪事件を授業でとりあげ、熱っぽく語ってくれたのが、きっかけといえばきっかけだろう。法の世界で展開される正義実現に胸をおどらせ、法学部への進学を決めた。もちろん法曹をめざしてである。選んだゼミは迷わず刑法。ところが、いろいろ考え読んでいくうちに、技術的で細かい解釈論の奥にひそんで法の世界を動かしている原理的問題にひかれるようになった。これもまたゼミ教官の影響である。こうして「法の科学」の研究に進むことになった。こうしてみると、あまり紹介するに値しない平凡なコースではあるが、教育の持つ本来の重みが透けて見える。法学にたずさわる研究者は、法の科学という研究の世界と法実務というすこぶる生臭い世界とを行ったり来たりする例が多い。生臭い世界の俗っぽさに身をおきすぎると、「科学」という世界を憧憬の対象にもする。ひょっとすると、この憧憬心が「法の科学」に身をおきつづける理由なのかもしれない。つきつめて考える面白みがそうさせているのだろうが、これは科学の世界に通底することではある。噂の法科大学院だと「法の科学」はどうなるのだろうか。 |