歴史資料の検証とその社会的活用について
委員会名  歴史学研究連絡委員会
報告年月日  平成13年3月26日
議決された会議  第951回運営審議会
整理番号 18期−69

作成の背景

前期旧石器の出土物は捏造されたものではないかという疑惑が社会的に拡がっている。そこで、歴史学研究連絡委員会としては、この問題を契機に、歴史学の基本的立場と社会的責務についてあらためて確認する作業を行った。 

現状及び問題点  

歴史学は考古学と共通する研究分野に属している。このたびの事態に対しては、歴史学の領域でも、歴史学研究連絡委員会が歴史学の場の自己点検を行い、その結果ならびに諸課題を公表することが必要であると判断した。 

改善策・提言等

@ 歴史学における資料:資料の在り方の多様性、開発・利用の方法の多様性が急発展している。情報の電子化と先端技術の応用は新しい課題を生んでいる。資料を散逸・破壊から救い、保存・公開を保障するため、社会的合意を求めていかなければならない。あらゆる学知は歴史研究を含むから、歴史資料の取り扱いには広い俯瞰的視点に立った諸学の協力が必要である。
A 新知見の検証:厳密な検証システムの運用のため、自由な相互批判の機会を重ねることや資料および研究情報の利用の平等・公開が必要である。学協会の群立という歴史学の現状からなおさらである。検証の場を国際的に開くことに積極的に取り組まなければならない。
B 資料・データの恣意的操作への対処:ここでも公開と平等の原則が重要で、ことに関係諸機関・施設の管理運営・保全面での改善の努力が求められる。資料・データを利用する研究者には、高い倫理意識と責任が求められている。さらに、資料・データを公開する過程では、特に専門的知見を有する第三者的機関などによる検証、相互批判が望まれる。
C 多様な研究者の間の協力の在り方:事件報道の影響により、研究活動で重要な役割を担う、いわゆる「民間」研究者に不利な扱いが生じてはならない。
D 歴史教育との関連:学校教育や社会教育施設の場で、教科書の記述や展示などにおいて、歴史資料、情報・知識に関する周到な検証と学説への多角的な視点の重要性が強調される。学芸員の配置・機能の充実が求められる。
E 行政・メディアとの緊密な協力:これは、歴史資料の調査・収集・整理・公開を進めるために不可欠で、学術の社会的役割を高める上で必須である。それぞれに学術研究活動の動向とその内在的論理への理解を求めていきたい。

報告書原文  全文PDFファイル(27k)

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1.歴史学における資料2.歴史資料は文書だけか?3.学問領域を超越する歴史資料
4.歴史資料の恣意的操作5.新しい知見に対する検証−捏造防止策として

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