法学部の将来 
 −法科大学院設置に関連して−
委員会名  第2部
報告年月日  平成13年5月14日
議決された会議  第961回運営審議会
整理番号 18期−64

作成の背景

 本報告は、第2部において、17期から検討を進めてきた、法科大学院と法学・政治学教育に関する審議結果をまとめたものである。 

現状及び問題点  

 法科大学院構想の検討がすすめられているなか、現在の法学部および法学・政治学系大学院のあり方については、十分な議論がされていない。法学・政治学研究および教育に関心を払ってきた日本学術会議第2部としては、この問題について、重大な関心を払ってきた。本報告の審議にあたり、法学部および法学・政治学系大学院の将来像について、部としての見解をまとめるに至らなかったが、検討すべき論点は、かなりの程度、明確になったといえ、ここに、問題提起者それぞれの見解の独自性を残しながら、論点整理の意味で、報告をまとめることとした次第である。 

改善策・提言等

@ 現在の法学部については、公務員その他の準法律専門職の養成、さらには法的素養(リーガルマインド)を身につけた多数の人材の養成という観点を含めて総合的に検討することが必要である。
A 限られた人的、財政的資源を法科大学院設置のために割かなければならないということから、結果として、法学部の廃止・再編を強いられたり、法学部の実質的空洞化が進行するという事態は決してあってはならない。
B 法科大学院における教育内容の問題としては、まず、実定法のみならず法哲学、法社会学、比較法学、法制史などの基礎法学の教育も重要であり、また、教員には、教育能力、教育意欲などに加えて、研究能力、研究意欲、研究実績が要求されるべきである。
C 法科大学院による実定法分野の研究者養成については、従来よりも多様な人材が実定法研究者になる可能性があるというメリットがある反面、社会科学として法や法制度を分析するという視点や、またドイツ語、フランス語などの外国語の能力が軽視されるおそれがあり、とくに実定法分野の研究者養成のあり方について十分な検討がなされなければならない。
D 政治学については、リベラルアーツの枠の中の学問として広く教育することが期待され、また後継者を養成する研究科が存続することが望ましいが、法科大学院が設置され、法律学の重点が大学院に置かれる結果、政治学が学部教育の中心となる事態や、新たに政治学が中核的役割を果たすプロフェッショナルスクールをたちあげる可能性が検討されるべきである。
E 法科大学院に対する第三者評価の制度は、その内容とシステムのいかんによっては、法科大学院の統制をもたらす危険性があるほか、大学院の「学部化」を防ぎ、法科大学院構想を価値あるものとするためには、新制大学院の理念・目的に添って、学部と修士課程のそれぞれが担当する法学教育・法曹養成の役割を改めて明確にする必要がある。
F 法曹養成を含む法学教育や法学研究者養成のあり方について、法律学の専門分野を越えて横断的に検討する学会の設立が検討されるべきである。

報告書原文  全文PDFファイル(147k)

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1.リーガルマインドの涵養2.法曹養成と法学部3.法科大学院構想の出発点4.二つの法概念
5.法と民主主義

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