睡眠学の創設と研究推進の提言 | |||||||||
|
我が国の成人の睡眠障害の有病率は約20%といわれ、約5人に1人の割合である。睡眠には体内時計の関与が大きいが、文明の進展とともに夜型社会への移行が強くなり、睡眠覚醒リズム障害が増加している。睡眠に関する研究は基礎生物学から臨床医学、さらに社会学、工学、文化学等幅広く行われている。社会的な問題の解決の為には広く社会の理解を得ながら、プロジェクトとして広汎な睡眠研究を推進する必要がある。 |
睡眠障害を惹起する疾患は90種類以上にも上る。主要なものとして神経症性不眠、精神科疾患に伴うもの、睡眠時無呼吸、多くの身体疾患、生体リズム障害、薬物による不眠等である。これらの疾患および障害の原因の解明と治療法の開発研究が精力的に行われており、睡眠障害の診断・治療法が進歩している。しかしながら未だに治療法が確立されていない障害も少なくない。したがって、研究は進展しているものの治療法の確立のためにはさらなる臨床研究が必要な段階である。また、これまでに得られた知識・技術もいまだ限られた専門家にとどまっており、一般医療の段階ではまだ知識の普及が十分ではない。すなわち、医師の教育が必要な段階である。さらに一般国民の睡眠の重要性に関する正しい理解を進める必要がある。 一方、睡眠不足あるいは睡眠障害による国家的な経済損失についての研究はアメリカで行われており、原子力発電所やオイルタンカーの事故、また頻発する交通事故等の経済的損失および睡眠障害にかかる医療費などを併せて5兆円にも上るといわれている。我が国でも少なくても1.5から2兆円の損失はあるものと推測されるが、実証的研究がされておらず、早期に調査研究を行い有効な対策がたてられるべきである。 |
1. | 睡眠に関する研究の統合と推進 |
睡眠科学、睡眠社会学などを統合して研究を促進する。 | |
2. | 研究推進機構の必要性等 |
全国的な研究推進体制を整備し、睡眠科学、睡眠医学、睡眠社会学の振興、研究推進、 支援事業の遂行を行う。 |
|
3. | 横断的研究体制の推進 |
睡眠に関する研究の各専門分野を統合し、研究推進をはかるために競争的な研究を行う。 | |
4. | 睡眠学に関する知識の普及と教育の推進 |
睡眠学研究が人の健康的な生活に不可欠であるとの認識に立ち、研究成果を積極的に 普及・啓発するシステムを構築する。 |
1.睡眠障害と健康問題,
2.睡眠障害と社会経済問題,
3.睡眠と脳,4.睡眠障害とプリオン病, 5.睡眠と免疫機能,6.睡眠時無呼吸症候群,7.不眠と精神疾患,8.小児の睡眠障害 関連学協会 日本医師会、精神医学関連学会、生理学関連学会、呼吸器関連学会、環境保健関連学会、 行動科学関連学会 |
Copyright 2010 SCIENCE COUNCIL OF JAPAN