日本の計画(Japan Perspective)
委員会名  日本の計画委員会
報告年月日  平成14年9月9日
議決された会議  第980回運営審議会
整理番号 18期−52

作成の背景

 日本学術会議に設置された日本の計画委員会における、1年半の議論の成果を中間報告としてとりまとめたものである。さらに検討を重ねるべき問題点が多く残されていることは関係者一同十分に認識しているが、時代の要請に応えるために敢えて現段階で世に問うこととしたものである。 

   問題意識  

 人類は今、21世紀の入り口に立っている。21世紀の世界は、どのような姿になるのであろうか。また人類は、どのような道を歩むべきなのか。それを考えるためにはまず、通り抜けてきたばかりの20世紀に人類が歩んできた道を振り返ることが必要である。 20世紀を特徴づける出来事・現象を3点挙げよと問うたとき、@世界大戦、A科学技術の爆発的発展、B人口の急増を挙げることに異論は少ないのではないか。
 では、科学技術はなぜ20世紀にかくも爆発的な発展の様相を呈したのか。自然界の謎に挑み、理論を打ち立て、新たな知的資産を生み出してきた原動力は、人間のもつ好奇心、探究心、そして競争心であったといえる。一方で、より豊かな生活をしたい、健康で長生きをしたい、持てる権力を拡張したいといった、人間の持つ生々しい欲求が、科学技術に対して新たな発見・発明を強く要請してきた面も否定はできない。
 しかし、20世紀の人類を科学技術の爆発的な発展に駆り立てた要因を、単にこのような個人の行為や欲求のみに帰することはできない。19世紀末に至り、それまで数世紀にわたり世界を席巻してきた欧米列強にとってのフロンティアの消失、言い換えれば領土拡大による繁栄の限界が訪れたという歴史的背景を忘れてはならない。地表面積は、人類にとって、地球の有限性の1つの現われである。その有限性に直面した20世紀当初の人類にとって、科学技術による資源・エネルギー利用の拡大を図ることこそが、歩むべき道であったと考えられる。
 再び現在に戻ろう。21世紀を迎え、科学者は、そして科学そのものが、かつてなかったほどそのあり方を、国境を越えて広く社会から問われている。
 19世紀末に人類が直面した地球の有限性は、20世紀における科学技術の発展により打開され、人類に新たな発展の可能性と豊かさをもたらした。資源・エネルギー消費と人口の急増の結果、20世紀末には、地球の有限性という危機が、より複雑、より大規模、より全面的、より根源的に人類の前に立ち現われるようになった。温暖化、オゾン層破壊、砂漠化、森林破壊、生物多様性の減少といった地球環境問題、発展途上国を中心に増加しつづける人口と南北問題、そして、民族・宗教紛争の拡大・激化、等々の問題群に、人類は直面している。
 21世紀には科学者のコミュニティも変化し、20世紀に蓄積された地球規模の課題に対応しなければならない。科学者コミュニティは、自らを原因として生起した問題を自らの力で解決するという責務を負っている。科学者は、自らが所属する科学者コミュニティのメンバーとしてのみならず、一人一人が人間としてこれらの問題解決に向けてどのような貢献ができるか、厳しく問われる時代となっているのである。
 

報告書原文  全文PDFファイル(1465k)

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1日本の計画により目指すもの2.20世紀の科学者の社会的責任3.21世紀の問題群4.日本の国際貢献
5.人類史的課題としての「行き詰まり問題」6.「行き詰まり問題」への視点7.「日本の計画Japan Perspective」
8.人類の生存基盤の再構築

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