人類社会に調和した原子力学の再構築
委員会名  原子力工学研究連絡委員会,エネルギー・資源工学研究連絡委員会核工学専門委員会
報告年月日  平成15年3月17日
議決された会議  第989回運営審議会
整理番号 18期−42

作成の背景

 20世紀後半、わが国において、原子力平和利用に係る研究・開発は進展し、原子力発電および研究用原子炉、加速器、放射性同位元素などの利用は、医療、産業など広範囲にわたって国民生活を支えるに至った。しかしながら21世紀初頭にあたり、改めて原子力平和利用の現状を見ると、安全面における科学技術上の問題だけでなく、原子力に携わる技術者の行動、社会との関わり等における問題が数多く生じ、国民の不安感や不信感が著しく増すなど、憂慮すべき状況にあり、早急に検討のうえそれらの解決が求められている。
 このような背景のもとで、従来の原子力学からパラダイム転換を図り、人類社会に調和した原子力学として再構築し、それに沿った学術としての進め方と教育の在り方を中心に今後の方策を探求した。 

現状及び問題点  

 今日原子力の社会との乖離が増すとともに、原子力の利用のみならず研究や開発は沈滞し、それに加えて原子力を志望する学生数も減少し、原子力学の研究ならびに教育と人材養成は危機に瀕している。原子力学は本来ミクロの世界の物理学の応用に源を発し、幅広い可能性を有すことに加え、社会とのかかわりが深いにもかかわらず、原子力学の一部分に偏るなど、研究面でも自ら枠をはめ、社会との連携も不十分であった。さらに大学、国公立研究機関および民間の協力体制が十分機能せず、原子力の研究、開発と利用の展開があまり効率的ではなかった。

改善策・提言等

@ 原子力学の研究者および関連する技術者は、まずその倫理を弁え、社会のための科学技術であることを改めて認識し、これまでの工学の枠組みを超え、人文社会科学を含む広い分野の人々と連携や協力を図ることが必要である。
A 資源とエネルギーの安定供給と地球環境の保全、ならびに人類社会の持続ある発展にとって、原子力発電とその核燃料サイクルは今後とも重要であるので、国民に理解される形で内容を公開し、説明責任を果たすことにより、社会的受容性を回復することが第一である。
B 加速器や研究用原子炉から得られる量子ビームおよび同位体に関わる基礎研究の推進と広範な分野への展開は、原子力学の重要な一翼として、独創的研究に重点を置いて推進する必要がある。
C 若者に夢を与え、優れた人材を確保するため、広く開かれた枠組みの中で原子力学の教育と人材養成を再建する必要がある。
D 原子力の研究・開発において、従来十分でなかった産学官の連携と協力を推進すべきである。

報告書原文  全文PDFファイル(368k)

キーワード  青色のキーワードをクリックすると解説文がご覧になれます。

1.エネルギーの視点と原子力学2.ミクロな科学の世界と原子力学3.社会のための原子力学
4.地球環境と原子力5.加速器とビーム工学と医療

関連学協会
高エネルギー加速器研究機構、岡嶋成晃日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構、
放射線医学総合研究所、内閣府原子力安全委員会、原子力安全システム研究所、核融合科学研究所


Copyright 2010 SCIENCE COUNCIL OF JAPAN