物質・材料研究開発に関わる国家戦略確立の必要性について
委員会名  社会・産業と材料研究連絡委員会
報告年月日  平成15年3月17日
議決された会議  第989回運営審議会
整理番号 18期−40

作成の背景

 持続可能な文明、環境調和型社会、身近なところでは資源リサイクルなど、様々な言葉で語られている未来社会の実現のためには「材料」についての多角的な視点が必要である。ナノ科学技術研究の振興によって原子、分子レベルの研究に拍車がかかることが期待されているが、一方で従来の材料研究の重要性が変わる訳ではない。有限な資源と社会資本の中で、研究が効率良く進められ、その成果が直ちに産業、惹いては社会に還元されるような仕組みを考えておく必要がある。「材料」ならびに「材料研究」に関する様々な側面を総合的に検討する時期にあるという認識に立って、(1)材料と社会の関わり、(2)資源枯渇、環境問題の深刻化などを踏まえた材料研究開発の問題点、(3)科学技術研究開発に関する国家戦略確立の必要性、などを骨子とする報告書を作成した。 

現状及び問題点  

 日本学術会議第5部から、これまでに金属、セラミックス、高分子など個別の物質分野についての研究報告書が発表されている。一方で、科学技術の重点分野の一つに、情報、バイオテクノロジー、環境と並んで材料が挙げられており、政府予算はこの括りで重点配分されている。本委員会は、「物質・材料」研究の社会的意義、研究分野の実態を俯瞰的に検討して、広範囲にわたる関係者のコンセンサスを醸成することを目的として設立された。物質研究から材料生産までの道筋を経済的な側面から明らかにすることは現状では極めて困難であるが、将来に向けて研究効率を高めるためには、産業連関表の活用などの工夫が求められる。一方で、物質に関する基礎研究の重要性―技術を通して豊かな生活を支え、また正しい科学的知識を提供することによって安全、環境、健康などの向上に役立つ―について社会的な認識を深める努力も必要である。 

改善策・提言等

 限られた研究者数で、広い領域にわたって、一定の国際水準を保つことは容易ではない。国際的な競争と協調の下で、効率のよい研究開発体制を構築することが必要である。そのためには、(1)物質・材料研究開発の実態を把握する努力(“生きた”人材データベースの構築)と、(2)人的資源を最大限に活用するための仕組みを論じる開かれた場の設定が急務であろう。産・学・官(独)にわたる地道な努力の積み重ねは、いずれ、世界の早い変化にも対応できる我が国独自の国家戦略の確立に繋がるはずである。

報告書原文  全文PDFファイル(376k)

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1.材料の市場と研究開発2.材料の革新と産業へのインパクト3.今後必要とされる材料開発の視点
4.鉄鋼材料の将来5.非鉄金属の将来,6.無機・セラミックス材料の将来,7.有機・高分子材料の将来

関連学協会
財団法人金属系材料研究開発センター、独立行政法人物質・材料研究機構、独立行政法人
産業技術総合研究所高分子基盤技術研究センター、財団法人化学技術戦略推進機構


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