ジェンダー問題と学術の再構築
委員会名  ジェンダー問題の多角的検討特別委員会
報告年月日  平成15年5月20日
議決された会議  第991回運営審議会
整理番号 18期−37

作成の背景

 わが国は1999年に男女共同参画社会基本法を制定し、関係の施策が進められているが、なお社会のさまざまな場面で一層の改善が必要とされている。日本学術会議においても、これまで特に女性研究者の環境改善に取り組む必要があることを指摘するとともに、日本学術会議自体としても女性会員の増加を図るために目標値を定めて活動を行ってきた。 

現状及び問題点  

 女性研究者が次第に増加するようになり、女性研究者による研究が次第に広がってきた結果、これまでの学術研究においては見逃されてきた新しい課題や視点、方法などが、さまざまな学問分野において注目されるようになり、学術の再構築に対して重要な視点の一つをなすようになってきた。さらに多くの分野において、こうしたジェンダー視点による学術の再構築が進められる必要があり、女性研究者によるばかりでなく、男性研究者を含めて、広く新たな視点として共通に受けとめられるようになることが求められている。
 大学などにおける女性教員の配置や学協会における役員の性別構成などを見ると、これまでのわが国の状況は男女共同参画社会にふさわしいものとは言い難い。女性研究者の増加を図り、環境改善を進めることは、日本の学術における重要な課題の一つであり、わが国の男女共同参画社会の確立にとっても必要な方策であるといわなければならない。
 女性研究者をめぐる環境としては、学校教育の場面に残されている「裏のカリキュラム」としてのジェンダー・バイアスをはじめ、研究者としての出発点をなす大学院などにおけるキャンパス・セクシュアル・ハラスメントや人事選考の透明性の問題、研究者としての生活の過程における結婚・出産・育児等における性別分業や支援体制の問題など、多くの問題点がある。また、結婚後の別姓・通称の使用、非常勤講師などの科学研究費の申請資格、育児休業期間における研究の中断・復帰、など、具体的な措置のなされたものや、早急な改善の期待されるものもある。 

改善策・提言等

 ジェンダー問題の多角的検討特別委員会は、これら、ジェンダー視点に基づく学術の再構築の重要性と、女性研究者の研究環境の改善の方策について検討を進めてきたが、なお多くの検討すべき課題が残されていることが明らかとなった。そこで、日本学術会議に対して、さらに引き続きジェンダー問題と学術にかかわる組織的検討を行うことを提言する。また、ジェンダー視点に基づく学術研究の活性化を図り、女性研究者の環境改善の方策を講じること、これらを進める上でわが国社会の男女共同参画の一層の推進を図ることの重要性を指摘し提言する。

報告書原文  全文PDFファイル(152k)

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1.ジェンダー問題と国連2.ジェンダー問題の新たなる意味3.ジェンダーの視点からの学術の再構築
4.ジェンダー問題と人権5.キャンパス・セクシュアル・ハラスメント



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