女性研究者が次第に増加するようになり、女性研究者による研究が次第に広がってきた結果、これまでの学術研究においては見逃されてきた新しい課題や視点、方法などが、さまざまな学問分野において注目されるようになり、学術の再構築に対して重要な視点の一つをなすようになってきた。さらに多くの分野において、こうしたジェンダー視点による学術の再構築が進められる必要があり、女性研究者によるばかりでなく、男性研究者を含めて、広く新たな視点として共通に受けとめられるようになることが求められている。
大学などにおける女性教員の配置や学協会における役員の性別構成などを見ると、これまでのわが国の状況は男女共同参画社会にふさわしいものとは言い難い。女性研究者の増加を図り、環境改善を進めることは、日本の学術における重要な課題の一つであり、わが国の男女共同参画社会の確立にとっても必要な方策であるといわなければならない。
女性研究者をめぐる環境としては、学校教育の場面に残されている「裏のカリキュラム」としてのジェンダー・バイアスをはじめ、研究者としての出発点をなす大学院などにおけるキャンパス・セクシュアル・ハラスメントや人事選考の透明性の問題、研究者としての生活の過程における結婚・出産・育児等における性別分業や支援体制の問題など、多くの問題点がある。また、結婚後の別姓・通称の使用、非常勤講師などの科学研究費の申請資格、育児休業期間における研究の中断・復帰、など、具体的な措置のなされたものや、早急な改善の期待されるものもある。 |