安全工学の新たな展開 −安心社会への安全工学のあり方− |
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国連のミレニアム宣言「恐怖と欠乏からの解放」および国連開発会議(UNCED)の「持続的発展(Sustainable Development)」へ貢献する一環として、国家の枠を超えて地球人のための安全保障を達成する国連人間開発計画(UNDP)のヒューマン・セキュリティーの追求という基幹的命題にしたがい、安全への新しい対応策を探究することが大切になっている。このことは、安全を人権として捉え、個人が危険から守られるべきこと、さらに、現実の安全を確保するだけではなく将来への不安からの解放を目指すことが肝要であることも示唆している。そこで当委員会では、その視座の一つに安全・安心問題があるとの認識に立って、まず、安全工学の立場から「安心社会への安全工学のあり方」に関わる提言を行い、新しい学問体系としての安全工学の新たな展開の可能性について考察した。 |
第18期には、ニューヨーク市ワールド・トレード・センターの炎上崩壊をはじめ、原子力施設の安全に関わる事件・事故、医療行為に関連する事件・事故、食品に関する不正管理や品質表示の詐称、小規模雑居ビルでの大量死火災などが発生し、社会に大きな不安を与え、安全・安心問題に取り組むことの重要性がクローズアップされた。このことは、社会施設や産業の多様化・高度化に伴う安全技術や安全管理の内容の複雑化と安全知識の集成及びその活用方法の構築、社会生活や企業活動における倫理観の醸成などの必要性を示唆し、安全問題を安全・安心問題として、ヒューマン・セキュリティーをベースとするヒュ−マンファクターの視座から安全工学を再検証すると同時に、それを考慮した学問体系として安全工学を整備して安全学の構築に資する必要がある。 |
@ | 事故は人権の侵害に関わる。したがって、航空機・列車事故等以外でも当該事故に関わる調査・研究体制を各分野の実情を勘案して独立的に整備しておくことは、事故の再発防止だけではなくヒューマン・セキュリティーの視点からも不可欠である。各分野に免責規定を導入した独立的事故調査体制を構築すべきことを提言する。 | |
A | 安全神話、絶対安全などの教条的な安全確保対策は、社会に様々な不信感を与え、結果として安全の達成を困難にしている。社会生活や業務システムの安全性評価についてリスクや信頼性工学の導入を更に推進すべきことを提言する。 | |
B | 最近、倫理的に問題とされる事故が多発している。安全教育のあり方を再検証することで社会倫理および技術者倫理の醸成に資すべきことを提言する。 | |
C | 安全文化のグローバルな展開を図り、ヒューマン・セキュリティーを定着させるために、あらゆる分野が「安全知の連合」活動を強化し、人的要件に関する研究技術の交流を深めることを提言する。 |
1.安全事象の変容,
2.倫理と安全,
3.安全に関するデータベースの構築の重要性,4.現代の化学産業と安全, 5.化学産業とリスクコミュニケーション,6.ヒューマンエラーではない人的問題に起因した事故 関連学協会 大学工学部 独立行政法人産業安全研究所、独立行政法人海上技術安全研究所 |
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