土壌資源の保全を求めて
−土壌資源情報センター設置についての提案−
委員会名  土壌・肥料・植物栄養学研究連絡委員会
報告年月日  平成15年6月24日
議決された会議  第995回運営審議会
整理番号 18期−19

作成の背景

 21世紀は資源、食料と環境の問題が人類の前に立ちはだかる世紀となりつつある。土壌資源は、持続的生産を保障する上でも地域や地球の環境を保全する上でも最も重要な役割を持つ資源である。

現状及び問題点  

 わが国の土壌調査は、農林水産省、林野庁、国土庁などがそれぞれの必要性に応じて行ってきており、その情報も関係部署にバラバラに存在している。また、それらの情報のデジタル化も進められていないものが多い。デジタル化は各部署が個別に行っており、その情報を共有できる状態になっていない。持続可能な農林業や地域環境の保全などの場面では、圃場・林班や小流域ごとの管理、計画に対応できる5千分の1程度の大縮尺土壌図が必要となるが、現在そのような土壌図は整備されていない。また、既存の土壌図についても更新が必要なものが多い。土壌資源調査は、その重要性にもかかわらず、直接の生産活動と見なされず、利益やコスト効率の算出が難しいため、予算的に活動が縮小されている。また、土壌調査専門家の育成や情報の整備・更新も進まず、土壌資源調査の枠組みが崩れようとしている。健全な土壌資源を次世代に継承するために、緊急の対応が必要である。

改善策・提言等

環境保全型農林業、陸上生態系の環境保全機能の維持増進、地域環境の保全などの場面では、圃場・林班や小流域ごとの土壌管理が求められるので、それに対応できる5千分の1の大縮尺土壌図の作製が必要である。
日本の土壌資源図の作製と集積、土壌環境モニタリングなどの土壌調査事業の企画・実施と土壌情報の集積、土壌標本・試料の収集・保存、包括的土壌分類体系や土壌調査法の確立、及びこれらの情報・試料の提供・普及と土壌調査専門家の養成は、国家的事業として一元的に行うことが最も効果的であり、あるべき姿である。また、これらの情報は世界とりわけ東・東南アジアの諸国との間で交流させる必要がある。
このような役割を持ち、日本及び世界のかけがえのない土壌資源を次の世代に継承することに貢献する「土壌博物館」を付置した「土壌資源情報センター」の設置を提案する。

報告書原文  全文PDFファイル(1030k)

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1.米国の土壌調査2.欧州の土壌調査3.FAO(国連食糧農業機関)の土壌図と関連属性のデータベース
4.IUSS(国際土壌科学連合)の4決議5.日本の土壌調査の歴史6.農耕地の土壌調査と意外な結果

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