創造的な若手研究者を養成するために −基本的考え方と日本の現状の問題点− |
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大学院博士課程の学生数が近年顕著に増加したことを背景として、若手研究者の処遇の大幅な改善を求める要請が高まっている。本報告書は、創造的な若手研究者を養成するための制度の在り方を検討して、若手研究者の処遇の的確な改善をはかる方向を探る目的で纏められている。 |
若手研究者養成の基本的考え方
若手研究者の効果的な養成を通じて、日本の学術研究を全体としてレベル・アップするためには、基本的に2つの方法が考えられる。 第1の方法は、研究の裾野を形成する中堅研究者層・若手研究者層および研究補助者層の処遇を広範に改善して、堅実な研究活動を底辺から押し上げるボトム・アップ型措置である。 第2の方法は、研究の最先端で突出した業績をあげる潜在能力を顕示した中堅研究者・若手研究者に格段に優れた研究環境を選択的に提供してその潜在能力を十全に実現させ、分野の研究水準を結果的に引き上げるリーダーシップ養成型措置である。 いずれの方法にせよ、競争メカニズムによって複数の研究課題が助成の機会を公平に競いあう公開性・透明性・衡平性に優れた制度的枠組みと、そのなかから優れた研究課題を見抜いて公的助成の対象とする的確・公正な審査機構が確立されていることが、助成措置の効率性と有効性にとって決定的に重要である。また、意欲的な研究を推進・発表する機会への競争的なアクセス、研究成果の敏速な認知・公開・伝播の国際的メカニズムへの競争的なアクセス、研究職・教育職への競争的なアクセスなど、広義の研究環境のシステミックな整備もまた、若手研究者を助成する有効な措置である。 |
(リーダーシップ養成型助成措置に対する提言) | ||
(1) | 競争的研究資金の配分審査にあたる的確なレフェリー層を質・量ともに充実させる。 | |
(2) | 競争的研究助成の対象に選定された優秀な若手研究者に対しては、潤沢な研究費の配分、研究推進の大幅な自律性を認める、など措置を採用すべきである。 | |
(3) | 優れた研究成果を挙げた先端的な若手研究者には、研究成果の敏速な国際的認知を得る機会を確保すべきである。 | |
(ボトム・アップ型助成措置に関する提言) | ||
(1) | 自律的な研究を推進できる若手研究者に対しては、処遇の大幅な改善をはかるべきである。 | |
(2) | 優遇措置に相応しい研究課題を選定する手続きは、厳正な審査機構に支えられた競争メカニズムによって行われるべきである。 | |
(3) | プロジェクトへの貢献に応じて研究助成金の伸縮的・競争的な配分を認める。 | |
(4) | 若手研究者が大学院を終えた後、あるいはPDFの期限が過ぎた後に研究職・教育職その他の職に就くプロセスを円滑にするために、様々なレベルで制度的な援助措置を整備すべきである。 |
1.レフェリーの国際化,
2.研究助成と競争メカニズム, 3.優遇的助成措置の制度化の二つの意義, 4.国際的な研究・教育ネットワークへのアクセス機会の拡大(1), 5.国際的な研究・教育ネットワークへのアクセス機会の拡大(2), 6.国際的な研究・教育ネットワークへのアクセス機会の拡大(3) 関連学協会 全大学、全研究機関、全学会、財団法人電力中央研究所 |
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