21世紀における人間栄養学の構築と
栄養学専攻大学院及び栄養専門職大学院の在り方について
委員会名  栄養・食糧科学研究連絡委員会,予防医学研究連絡委員会
報告年月日  平成15年7月15日
議決された会議  第996回運営審議会
整理番号 18期−14

作成の背景

 21世紀における栄養学は、学際的、俯瞰的人間栄養学でなければならない。家庭・学校・地域・職域の場での健康増進と生活習慣病の一次予防に対する栄養実践活動、臨床医学の場での栄養マネジメント、食品・外食・給食産業での栄養管理と経営管理・安全管理等には、医学、食品科学のみならず社会学、経営学、行動科学、食品工学等の学識と技能が必要不可欠である。このような人間栄養学の研究者、教育者、高度専門職業人に対する社会的ニーズは非常に大きい。

現状及び問題点  

 わが国は超高齢化社会を迎えつつある。そのような時代の保健・医療・福祉・介護の領域では、高度に専門化された知識と洗練された技能を修得し、俯瞰的な視野に立ってマクロ的に対処できる人材を育成することが焦眉の急務となっている。医学、看護学、薬学など保健・医療・福祉・介護の分野においては、これらの要求に応えられる人材育成のプログラムがすでに編成され、大学院教育においてその専門性を高めるとともに、それぞれの分野の研究者・教育者育成が展開されている。
 これに対し、栄養学分野における高度な専門知識並びに技能を修得した高度専門職業人の育成、俯瞰的な視野に立って栄養問題の解決を図る人間栄養学研究者・教育者の育成は、著しく立ち遅れている。これはわが国で有能な栄養学研究者・教育者や高度専門職業人を育成する教育システムと教育環境が整備されてこなかったことに起因している。
 近年、国民の健康づくりの中で生活習慣病の一次予防に大きなウェイトがかけられ、人間栄養学における高度な専門知識と技能を持った専門職業人の出現が期待されている。しかしながら、分子細胞生物学・医学・農学に関連した基礎研究に取り組む研究者は多いが、人間栄養学を意識した研究・教育や実践に興味を示す研究者・教育者は極めて少ないのが現状である。人間栄養学に特化した大学院を設置し、高い意識を持った先駆的指導者の育成が急がれる所以である。

改善策・提言等

 以上のように栄養学の関わる社会的背景を考えたとき、医学・農学の基礎と応用面を取り込み、さらに社会学的、行動科学的な専門性を取り入れて、先進的な栄養学大学院、すなわち、栄養学専攻大学院及び高度専門職業人の養成にあたる栄養専門職大学院を設置する意義は大きく、その必要性は極めて高い。

報告書原文  全文PDFファイル(81k)

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1.日本人の栄養状態−その二重構造2.栄養マネジメント専門家3.日本の栄養士の国際的役割
4.管理栄養士の養成と課題5.臨床栄養士の養成と課題6.栄養学大学院の構想

関連学協会
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