大規模計算力学ソフトウェア開発に関する日本の統合的戦略
委員会名  メカニクス・構造研究連絡委員会
計算力学専門委員会
報告年月日  平成15年7月15日
議決された会議  第996回運営審議会
整理番号 18期−8

作成の背景

 計算力学とは、対象とそれをとりまく現象との間の因果関係を説明するモデルを構築し、計算機シミュレーションによってモデルの妥当性を説明しようとする、さまざまな領域における問題解決の有力な方法論のひとつである。生命科学、ナノテクノロジー、宇宙科学など新たなフロンティア領域の開拓には計算力学が必須である。21世紀において、あらゆる科学技術分野の基盤として計算力学はますます発展することが予想される。

現状及び問題点  

 わが国の計算力学の基礎的学問としてのレベルは欧米先進国とほぼ肩を並べる状況にある。しかし、わが国の産業界において使われているソフトウェアの大半は欧米製であり、わが国独自の研究成果が必ずしも有効に生かされていない。その最大の理由のひとつは、計算力学の研究成果を第3者が使えるように具体化したもの、すなわち計算力学ソフトウェアの開発という点においてわが国は戦略が欠如していたからといえる。また、計算力学の重要性に鑑み、我が国のさまざまな学協会において計算力学関連の活動組織が生まれ、独自の活動が展開されてきたが、計算力学の横断的学問体系としての性格を有効に活かせるような、学協会間の連携がこれまで図られておらず、結果的にわが国全体としては非効率さが目立つようになっている。

改善策・提言等

 現在のところ、国全体で計算力学についての戦略を議論する場が見当たらない。また、これまで我国において、計算力学分野へまとまった国費投入がなされてきた例は少なかった。これまで述べてきた背景から、今後このことは改められるべきである。国が投資すべき対象としては、
・戦略的分野への中長期的な観点からの研究開発
・学際的でありかつ広い分野をカバーするテーマ
・異質な研究者が参加することにより新しい領域を創出できるテーマ
などがあげられる。さらには、それらの産業応用ソフトにまでの育成、出来上がったソフトの流通、メンテナンス、利用法に関する教育・訓練のための中立の産学官交流の場を、各地(できれば各県)に分散させて有することを提案したい。

報告書原文  全文PDFファイル(84k)

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1.大規模ソフトウェア開発の必要性2.計算力学の発達と新たなパラダイム
3.大規模ソフトウェアの開発の困難さ4.計算力学用ソフトウェアの開発体制5.環境問題と計算力学

関連学協会・その他
・研究教育機関:大学、国立研究所など
・産業界:ソフトウェア、製造業など(特に3章、4章)
・計算力学関連学協会(特に2章)
・行政機関:総合科学技術会議(特に4。1節、5章)、文科省(特に3章、4。1節、5章)、経産省(特に3章、4。1節、5章)など


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