21世紀における人工物設計・生産のためのデザインビジョン提言 |
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(1) | 20世紀は、人類の生活が自然物中心から人工物中心へと変化し、人工物によって人々は物質的な豊かさを享受する時代であったが、その一方で人工物の大量生産・供給システムは大量消費・大量廃棄というライフスタイルを誘発し、地球環境問題や資源・エネルギー問題などの深刻な問題群を引き起こしている。 |
(2) | このような状況下、人工物の設計・生産のあり方について、従来明示的に与えられている要求の量的充足だけでなく、地球環境問題や社会との関わり合いも含む質的な満足を目めざしたパラダイムの転換が必要とされている。 |
(3) | 20世紀末からのIT、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等の飛躍的発展は、グローバリゼーションを推し進め、新たな領域への人工物の可能性を広げている一方、倫理面や環境面で更なる問題をはらんでいる。このような中で設計工学は、従来の生産側に立った見地からだけではなく、環境、倫理、社会的な側面も考慮してこれからの方向性を示していくことが必要である。 |
現在、生じてきている諸問題への対応にはパラダイムの大きな転換が必要だと認識されている。人工物の設計・生産のあり方を考える上では地球環境、社会システム、倫理面も考慮した系全体での質的満足が求められるため、長期的、全体的な観点からの研究施策が必要であるが、実際には目先の利益やすぐ役に立つ成果を求めるあまり短期的・中期的、部分的観点からの研究支援になりがちである。 |
(1) | 長期的・全体的な観点から設計工学学術研究を推進するため、領域横断的な学会連合組織の構築を推進するとともに、設計の質的満足と、個々の人工物からトータルな人工物の集合を考慮した設計の営みを広い意味でのデザインと定義し、今日の設計・生産を誘導するデザインのあり方に関する探求をとりまとめ、「21世紀における人工物設計・生産のためのデザインビジョン」として提言する。 |
(2) | 具体的には、@量的充足から質的満足へのデザイン概念の質的転換、Aつくることから育てることへと人工物の進化を促すデザインプロセス、B個々の要素のデザインから環境・社会システムを考慮した関係のデザインへの拡大、C多種多様な主体のコラボレーションによる創発的なデザインの推進、Dこれらを扱う高度なデザイン支援システムの積極的な開発と導入、Eデザインの質を評価するユーザーも含めたデザイン教育・デザイン倫理の普及、F最後にデザインに関する学術研究体制の整備を提言する。 |
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