21世紀に向けた原子放射線の総合研究体制と
  影響研究の推進について
委員会名  核科学総合研究連絡委員会
 放射線科学専門委員会
報告年月日  平成11年9月20日
議決された会議  第924回運営審議会
整理番号 17期−15

作成の背景 

 日本学術会議核科学総合研究連絡委員会放射線科学専門委員会では、21 世紀における放射線影響研究を含む原子放射線の研究体制について検討してきた。ここにその現状を分析し、原子放射線研究における高い学際性という最大の特徴を踏まえて新しい世紀のニ−ズを見据えた研究基盤と研究体制の具体的推進策について提案する。

現状及び問題点 

 21世紀において人類との関わりで問題となる主たる放射線は低線量並びに低線量率の放射線であると想定されている。その主たる線源は、原子力のエネルギー利用、放射性廃棄物、医学診断および核兵器等に由来する放射線などが考えられる。低線量影響の解明には、生命体システムに基盤を置いた量子論的理解と生命科学を融合した新しい研究戦略が要求される。一方、作用源としての放射線研究の側に立てば環境放射能研究や保健物理研究に求められる開発要素の高い新しい課題群がある。

改善策・提言等

1. 低線量・低線量率放射線の人体影響問題の解明には放射線作用の基本原理と生物・生命原理を融合させた新しい研究戦略が要求される。原子力関連予算の予算体系の見直し、科学研究費における特別枠の設定など、国の基本方針を早急に策定し、重点的に研究を推進すること。
2. 低線量放射線の研究は一種の巨大科学であり、研究の総合性と統合性が要求される。特に大学等においては、全国の研究者の意見が反映される研究拠点に、流動的で多様な研究が理念的に統合・集約される必要がある。そのため、放射線生物研究、環境放射能研究および保健物理研究の研究拠点の形成と充実を図ること。
3. 放射線影響・放射線利用など人間との関わりを頂点とする放射線科学は、生命科学や量子科学などの広い分野にまたがる先端的研究を基盤としている。そのため、大学等における放射線科学関連の講座の充実を図るとともに、原子力・放射線の利用・開発研究に関連する領域に放射線生物研究、環境放射能研究、保健物理研究の分野を導入し、研究体系の高度化を図ること。
4. 大学等の放射性同位元素総合センターは、地域を基盤とした放射線科学の拠点としての機能が期待される。研究・教育の側面を充実するとともに、その地域性と研究領域の多様性という特徴を生かしながら放射線科学の一環として他の放射線科学の研究分野と連携をもって研究を進める体制を確立すること。

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原子放射線低線量放射線生命体システム量子論的理解、21世紀、 総合研究体制、
高線量放射線、 放射性廃棄物、放射線影響研究、 環境放射能研究、 生命科学、 作用源

関連研究機関・団体・学協会
科学技術庁放射線医学総合研究所、日本放射線影響学会、日本保健物理学会、
金沢大学理学部附属低レベル放射能実験施設、京都大学放射線生物研究センタ−、
広島大学原爆放射能医学研究所、長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設、
財団法人放射線影響研究所




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