グローバル時代における工学教育


「工学教育研究連絡委員会報告」


平成12年3月27日

日本学術会議
工学教育研究連絡委員会


 この報告は、第17期日本学術会議工学教育研究連絡委員会で取りまとめた検討結果を発表するものである。

[工学教育研究連絡委員会]

委員長 阿部博之(第5部会員、東北大学総長)
幹事 大中逸雄(大阪大学大学院工学研究科教授)
委員曾我直弘(第5部会員、滋賀県立大学工学部教授)
田中俊六(東海大学学長)
丹保憲仁(第5部会員、北海道大学総長)
冨浦梓(第5部会員、新日本製鐵株式会社顧問)


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目次

1.まえがき

2.工学教育を取り巻く社会変化−社会の変化に追随していない教育−
2.1 社会の変化
2.2 教育の変化

3.期待される工学および技術者教育

4.現在の工学教育が抱える問題点
4.1 小学校、中学校教育
4.2 高校教育
4.3 大学教育
4.3.1 学部
4.3.2 大学院
4.4 企業
4.5 国および社会

5.世界の動き

6.工学教育を改善するための方策
6.1 大学として取り組むべき事項
6.2 社会・産業界が取り組むべき事項
6.3 国が取り組むべき事項

7.提言

文献
注1 アンケート回答組織
注2 ヒヤリング関係者
注3 アンケート用紙


1.まえがき

 国内外の社会の急激な変化を受けて、現代を特徴づける人工的環境の先端に立つ技術者の責務はますます重くなり、技術者を育てる教育の重要性が一層高まっている。

 最近の地震で崩壊した手抜き工事建造物、JRトンネルのコンクリート落下、核燃料処理事件などは、技術にかかわる大きな問題として捉えられているが、これは、現代を特徴づける人工的環境を支える科学技術そのものというよりも、それを応用する際に生じる人為的な問題の方が大きく、技術者教育が不足した場合に生じる危険性を示す好例と言える。

 一方、我が国産業の世界競争力は、スイス経営開発国際研究所による評価では1991年には1位であったものが、1999年には16位と急降下しており、「国際競争力強化のための大学教育」も1991年の4位から1999年の45位と非常に低下している。従来の工学教育では、日本の将来は危ういとさえ考える識者が多いのも当然である。

 本報告書は、わが国における現在の工学教育の問題点を関連学協会、いくつかの企業研修所関係者へのアンケート、ヒヤリング(注1,2,3)および文献や委員の討議により明らかにし、その対応としての提案をまとめたものである。

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2.工学教育を取り巻く社会変化 ―社会の変化に追随していない教育―

2.1 社会の変化

 地球環境問題がますます深刻になりつつある。これは地球の有限さに比較して、人類の活動が大きくなり過ぎたためである。今後、さらにエネルギー、資源あるいは食料問題が深刻になることは必至である。

 また、冷戦構造の崩壊と時期を同じくして、情報革命が急激に進行しつつある。このため、経済のグローバル化や企業の国際化が急速に進みつつあり、国際競争が激化し、いわゆる大競争時代に突入した。
また、科学技術の進歩、情報革命により、知識は大学の独占物ではなくなった。地球上どこでも情報設備さえあれば、膨大な知識が瞬時に入手できるようになりつつある。

 一方、飢えと病気による著しい死亡率、部族間あるいは宗教紛争などが激化している国や地域が増えているにもかかわらず、先進国では基本的な衣食住はほぼ満たされ、科学技術や文明への反発さえ現れている。

 これらの結果として、少なくとも先進国では、商品の短寿命化、ビジネスの小規模化・サービス化、開発のスピードアップ、情報氾濫など急激な社会変化などが生じている。

 特に日本では、急激に高齢化社会、少子化時代となりつつあり、この変化が福祉、産業、財政などに大きな影響を与えてきている。
 また、国民、特に若者の科学技術ばなれが生じている。
 OECDの調査によると、世間一般の人々の科学に関する関心度や理解度は、先進14カ国中最下位に近い。科学上の新発見、新技術の開発や発明でも最下位である。

 また、長期に渡る不況と国際競争の激化により、失業率は増加し、理工系学生の就職状況も悪化している。このため、理工系学生の売り手市場から企業の買い手市場に移行しつつある。
一方、企業には、社内教育の余裕がなくなりつつあり、より有能で即戦力となる人材の養成が大学に要請されている。


2.2 教育の変化

 教育の面では、学級崩壊や大学講義における日常茶飯事化した私語や居眠りに見られるように、知的好奇心や学習意欲、論理的思考力、あるいは生きる意欲さえ欠けている学生が増えてきているという教育者あるいは産業界の指摘がある。

 このため、小中学校では知育偏重の風潮や知識詰め込み型の教育を改め、2002年から完全週5日制を実施し、「自ら学び、自ら考える力を育成する」あるいは「ゆとりの中で自ら課題を設定し、解決する力などの<生きる力>を身につけさせる」ことになっている1-3)。

 そして、ゆとりを実現させるために、教育内容は既に約3割減少している。この施策の前提となっているのは、小中学校で問題設定能力や学習意欲を与え、また、必要最小限の基礎的学力を確実に身につけさせ、高校や大学で十分勉強させれば、大学卒業時には従来以上あるいは従来と変わらない学力がつくはずだということのようである2,3)。
 すなわち、このような初等中等教育の上に立って我が国の知的水準を向上させるためには、それ以後、特に高等教育の充実が不可欠である。

 しかしながら、少子化により大学への進学者の減少傾向の下、大学が経営面での生き残りをかけて学生集めを行うこともあって、大学における高等教育を受けるための準備が不足したまま、学ぶ気もあまりなく何となく大学へ進んでいる学生も増えている。

 現在、大学等への進学率は50%近くまで上がっているが、大学進学率が高くなるにつれ、わが国の知的水準は低下しており、このままでは国際競争力強化のための大学教育を行うための基盤が崩れていると言っても過言ではない。

 経済発展を遂げた物不足のない社会で、大学を卒業しないと社会に出てから損をするといった程度の意識で進学する若者にとって、卒業というハードルを越えやすい専攻分野があるなかで、専門的な科目や実験を強いられる理工系分野では学生離れが生じるのは先進諸国に一般的な社会的現象とも言える。

 戦後、日本の高等教育は、形式的には主に米国の制度を取り入れた。
 しかし、実態としては、学問すなわち既知の知識体系を教授するという戦前の教育を引きずり、しかも、科学知識量の爆発的増大と共に、なるべく多くの知識を学生に与えようと努力してきた。

 さらに、高等教育への国の投資も十分でなく、演習や実験が少ない講義主体のマスプロ的教育となってしまった。
また、米国では何十年も前から実施されている1単位取得するのに必要な講義時間以外の30 時間に相当する学習もほとんどの場合学生の自由にまかせている。このため、自己学習時間は極めて短く(自己学習時間は週1時間以内という学生が約80%以上という大学が多い)、講義を聞き、試験前に暗記的勉強をするというパターンが多く、極めて効率の悪い学習となっている。

 また、教育に関する真の国際交流は極めて少なく、海外の進んだ工学教育の実態を知らない人が多い。
教育に関して日本は実質的に鎖国状態であったとも言っても過言ではない。
 また、研究とは異なり、教育に関する競争は国際的にはもちろん、国内的にもほとんどなかった。
 これは有名大学の理工系学生に対する企業の需要が大きく、また、企業が大学には学生に基礎知識をつけてくれればあとは社内教育で技術者として教育するとし、主に大学名と協調性や意欲で学生を採用して来たためである。
 つまり、有名大学では教育に力を入れ、教育において他大学と競争する必要性を感じる状況にはなかったし、それ以外の大学では教育成果をあまり評価されないため、競争にならなかったとも言える。
 このような結果として、過去は別としても、現在では工学教育は社会の変化に追随できていないばかりでなく、教育環境と質が米国、ドイツ、北欧等に比較してかなり劣ってしまっている。

 現在、大学でも、基礎研究能力の向上や上記のような社会の変化に対応して、遅ればせながら改革が進められている。
国立大学では独立行政法人化問題も浮上している。
また、大学審議会の答申では、演習やセミナー等の重視、1単位に必要な45 時間に相当する学習の厳格な実施、成績評価基準の明示と厳格な成績評価などの具体的事項を挙げて、米国では4、50年前から実施されている教育を大学に要求している。
文部省のみならず、我が国の産業経済を司る通産省においても、産業国家戦略の中で、大学に対して、社会で要求される教育の実施とカリキュラムの改革を求めようとしている。
さらに、一般社会あるいは大学自体からも、「面白い授業をすべきだ」、「授業を変えれば大学は変わる」との指摘も少なくない4) 。

 しかし、多くの大学教員は、このような要求に戸惑っているというのが実態であろう。
講義を少々変えた程度ではとても現在の状況を改革できないのではないか、学習意欲のない学生の教育は不可能だ、これ以上忙しくなっては研究もできない、などと感じている教員が多い。

 これまで教育に関しては鎖国状態であり、「大学とは学問体系を教え授ける場」であるという固定概念に捕らわれた大学人にとっては、このような状況に対していかに対応して良いかが分からないのである。
 これは、教員の教育に対する意識が必ずしも高くなく、さらに大学における従来システムが機能しなくなってきたことの結果であるとも言える。

 いずれにしても、大学と社会および産業との間のミスマッチが大きくなっており、しかも、単に組織の変更や、精神的激励だけでなく、抜本的な変化を引き起こす施策が必要となっている。


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3.期待される工学および技術者教育

 前述のような地球的課題を解決し、あるいは社会の変化に対応していくためには、新しいタイプの多くの優れた技術者が必要である。
すなわち、科学技術と社会との関わりを理解できる倫理意識をもち、自律的に行動できる技術者が必要である。
ここでいう、技術者とは「主に数学、科学、技術(情報技術を含む)などの知識と手法を駆使して、人類の安全・福祉のために人工物やシステムの研究・開発・製造・検査・運行・保守等に従事する専門家」であり、工学部のみならず、理学部、農学部等の多くの卒業生、修了生の専門職となるものである。

 従って、大学では単なる工学知識教育というのではなく、
・自分の頭で論理的・批判的に思考できる能力
・コミュニケーション能力
・他者の感情や他文化を理解できる能力
・日本のみならず、海外でも働ける能力
・生涯自己学習能力

なども涵養すべである。さらに、技術者教育としては、以下のような能力・知識が求められている:
・技術と社会との関わりを理解できる倫理意識と技術者としての自覚
・工学専門基礎知識とそれを社会に生かす応用力
・複雑な問題に対して、課題を設定し、創造的に解決する能力
・実践的スキル

 なお、このような要求は日本のみならず、先進国にほぼ共通している。例えば、ABET(Accreditation Board for Engineering and Technology)が実施する米国の技術者教育認定制度の認定を受けるには、卒業生が下記の能力を持っていることを示さなければならない:
・数学,科学,および専門分野のエンジニアリング知識を実際に応用できる能力
・実験を計画・実施し,データを分析・解釈できる能力
・要求にあったシステム・構成要素あるいはプロセスを設計できる能力
・種々の分野の人材から構成されるチームで活躍できる能力
・問題を設定し,解く能力
・専門家としての倫理・責任感
・コミュニケーション能力
・工学的解決策が社会の各方面に与える影響について理解できる広い知識
・生涯学習の必要性を認識し,実行する能力
・現代社会の諸問題についての知識
・技術的実際問題に技術・技能・現代の工学ツールを適用できる能力

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4.現在の工学教育が抱える問題点

 上記のような工学教育に対する期待に応えるためには、現在の教育にはいかなる問題点があるであろうか。
アンケート調査(注1 、2 、3)や出版物から整理すると以下のような問題点がうかがえる。

4.1 小学校、中学校教育

 小学校や中学校ですでに理科科目への関心が薄れつつある。特に技術への関心はあまりない。これには、以下のような原因が指摘されている:

・教えようとする理科の内容を、その発展経緯や産業技術との関係を含めて教えられる先生が少なく、我が国の発展を支えてきた、あるいは支える技術の重要性の教育がなされていない。

・実験等は生徒に人気があるが、準備・後始末に時間・費用がかかり、事故があったときのことを恐れて敬遠される。

 この他、環境の人工化、子供の遊び文化の変化、情報氾濫などにより、生徒が自然や実物に触れる機会が少なく、また驚き、感激する機会が減っている。
 さらに、読書習慣が減り、テレビや漫画等の映像で情報を得るため考える時間がなく、自分の頭で論理的に考える訓練あるいは機会が不足している。
 一方、家庭での躾が不足しており、子供同士の社会生活の経験が少ないため、対人関係が苦手で、精神的進歩が遅れている。

 今後、低学年までインターネットが普及利用されるようになると、ますます実物や自然に触れる機会が減る恐れがある。
 このような社会的な一般傾向が、「自ら学び、自ら考える力を育成する」という新しい初等中等教育方針により変わることを期待する声が大きい。しかし、その一方では、このような「ゆとり教育」により、学力低下が一層顕著になるのではないかと危惧する声もある。


4.2 高校教育

 父兄、学生、教員共に、大学で学ぶために必要な基礎学力を付けることよりも、大学へ入学することを目標とする教育が一般化している。
 従って、理数系の点数で、早い時期に理系と文系にコース分けされる場合が多く、一般的に知識の詰め込み教育となっている。
 特に受験校では、受験技術が進歩し、真の知識の獲得ではなく、いかに筆記試験点数を上げるかという教育となっており、実験や観察を通じて、自分の頭で考えさせる訓練が不足している。
 また、知識の詰め込みに忙しく自立して社会生活をするための訓練が不足している。受験校以外では、学習意欲の高い学生が少なく、教員の意欲も空回りとなって、やはり教育の質は十分ではない。

 さらに、自然や実物との触れ合いは、小中学校より不足しがちで、自分の目と手による体感的知恵を身につける機会に恵まれていない。

 これらの結果として、工学系も含め、大学入学時の学生の多くには以下のような問題点があるとされている。

 ・自立心の不足:精神的に幼稚で、社会との関わりや、人生計画が幼稚である。また、我慢ができず、すぐあきらめる。学習意欲も少ない。

 ・知的好奇心、抽象力、想像力の低下:未知の概念や事柄に出会う「驚き」や、言葉により紡ぎだされた抽象的・象徴的な世界に触れる「喜び」を感じる力が弱く、抽象化能力や想像力が不足している。

 ・読書習慣と思考力の低下:暗記的知識が多くても、「なぜか」をじっくり考える能力、論理的思考力が不足している。

 ・コミュニケーション能力不足:自分の意見、意思、感情を文章や口頭で相手に伝え、また相手の意見、意思、感情を汲み取る能力が不足している。

 ・理科、数学の基礎知識低下:工学の基礎といえる科目を十分理解していない。


4.3 大学教育

4.3.1 学部

(1)経験的学習理論の軽視
 過密なカリキュラムで、学問体系や知識を講義主体の教育で伝授させようとしており、自分の頭で考えさせたり、実物に触れさせる機会が少ない。このため本当の「知識」としては伝わっていないし、応用力も少ない。本当の知識、特に工学的知識は、具体的経験,深い観察・思考,抽象的概念化,積極的体験(追体験)というサイクルを繰り返して得られるが5) 、このような能動的学習の機会・環境を学生に与えることを軽視している。

(2)学習への動機付けや技術の楽しさを誘導する教育不足
 ほとんどのカリキュラムは基礎科学を講義した後で技術的問題に取り組ませている。従って、学生は何のために学ぶのか分かりにくく、学習意欲もわかないし、基礎科学も身に着きにくい。

(3)大衆化した学生への対応の遅れ
 学習意欲が非常に低い学生が増え、私語が多い、ビデオを見せても見ようとしない学生がいるといった現象が顕在化している。実力をつけることより,楽しく,楽に卒業出きればよいと考える風潮が一般的である。このような学生には従来の大学教育方法で対応するのは非常に困難である。

(4)社会的要請の強いカリキュラムの不足と技術者教育の軽視
工学系として、3で述べたような社会から要望されている能力、特に以下のような能力を養成するカリキュラムが少ない。
 ・技術者倫理
 ・コミュニケーション能力
 ・自分の頭で考える能力
 ・生涯自己学習能力
 ・種々の学問を統合して社会の要求を解決するための構想力、デザイン力
 ・実務的課題の処理能力

 これは、従来の教育が「技術者」教育をほとんど無視してきたこととも関係している。欧米におけるように、新しい技術開発に積極的に貢献する大組織に属さない意欲ある「技術者」を養成するためには、技術者教育を企業内教育だけに頼ることはできない。大学院教育を含め、大学での技術者教育が必要である。

(5)教育成果の評価不足と継続的に改善するシステムの欠如
 多くの場合,学生の評価は半年の講義後の数問の試験問題で,各教員が独自の判断で点数をつけて単位を与え,その総計として合否を判定している。
 場合によってはゲタを履かせて点数を上げることもある。
 また、教育目標が「広い視野と深い専門知識を持った人材を養成する」などと非常に抽象的であり、評価困難である。
当然、教育を継続的に改善するシステムを作ることもこれでは容易ではない。

(6)教員への教育能力の訓練不足
 前述のような今後の社会で要求される人材の養成に責任を持つ教員には、研究能力のみならず、教育能力も必要であり、その訓練と継続的研鑚が必要であるが、多くの大学でなされていない。

(7)教育基盤・環境整備の遅れ
 スペースや教育設備、教育スタッフ数が国際的にみて大幅に劣る。
後述のように、教育を変えるには、それなりの施設、スタッフが必要であり、現状では容易ではない 。

(8)入試方法改善の遅れ
 暗記的学習を助長し,真の知識にならない大変な無駄となっている可能性があり,遊び,自然との触れあいなど年齢に応じた経験機会を喪失させ、創造性の発展を阻害している。
また、受験科目数の削減により、大学での教育負担が増えている。


4.3.2 大学院

(1)学部教育と組み合わせた高級職業人養成の一貫した取り組み不十分
 20単位程度の学部の延長的講義と修士論文(博士前期課程)、10単位程度の講義・演習等と博士論文(博士後期課程)というのが一般的なカリキュラムであり、高級職業人を養成する教育プログラムとはなっていない場合が多い。

(2)国際的に活躍できる技術者教育の立ち遅れ
 欧米では、外国でプロジェクト等を実施させ、国際的に活動できる人材の教育が進んでいるが、日本ではせいぜい国際会議で論文発表をさせる程度であり、組織的に訓練している大学はほとんどない。

(3)研究重視と学術のための学術研究過剰
 研究第一主義の風潮が強く、また、博士後期の学生やポスドクが少ないため、修士課程の学生が研究の人的資源として組み込まれているため、幅広い教育が困難になっている。
さらに、教員も研究その他で非常に忙しく、教育のための時間が十分には確保しにくくなっている。

(4)大学の特徴不足
 研究型大学、職業人養成型大学など、大学の特徴を出している大学が少ない。
以上のような事から、現在の大学での工学教育では、社会が要求する人材の養成は極めて困難であり、企業等では、その改善を強く求めている。


4.4 企業

 上記のような大学における問題の幾つかは、大学だけでは解決できない。
学生の最大の受け入れ先である企業にも以下のような問題がある。

(1)学習成果の軽視
 採用に当たり大学での学習成果の評価が少なく、採用内定が早過ぎる。
 このため、大学入試での偏差値で就職まで決まってしまうことになる。
 これでは大学教育の質ではなく入試で良い学生を集める競争が生じるだけである。

(2)一律採用,一律待遇
 教育への市場原理が働いていない。文系学生より学習した理工系学生に不利な構造となっている。

(3)大学への要求が不明確
 基礎的知識を教えてくれればよい,後は企業で訓練する、あるいは即戦力となる学生が必要などと、あいまいな要求が多い。
 また、基礎知識だけを教えて本当に応用力のある基礎知識を身につけさせるのは困難である。

(4)専門性あるいは学習・実務経験の軽視
 独自の製品で国際競争に打ち勝つためには,発想力が豊かでしかも深い専門知識を持った専門家が必要である。
 このような人材を養成するには,専門分野での学習経験、実務経験をより大切にする必要がある。

(5)中小企業への認識の低さ
 中小企業では待遇が良くない,倒産する確率が高い,経営者が世襲的に決まっている,などという悪い印象がある。
 また、系列中小企業での待遇を大企業より良くすると親企業がクレームをつけること が少なくない。大企業は不当な干渉はせず,公平な競争で国際競争力のある中小企業を育てる必要がある。
 中小企業でも誤解を解き、さらに改善する努力が必要である。

(6)ベンチャービジネスへの認識の低さ
 ベンチャービジネスの必要性が叫ばれているが、その教育、社会環境は十分ではない。
 また、中小企 業と同様の問題を抱えている。


4.5 国および社会

 国あるいは社会にも以下のような問題がある:

(1)高等教育の基盤的整備の遅れ
 教育環境としての施設は狭くて老朽化しており,国際的にかなり見劣りする。研究環境も悪かったため、その改善が教育環境にしわ寄せされ、さらに劣悪な環境になっている。
 特に、手と頭を使う教育には簡単な作業ができ、長時間占有したり作品を放置できる小部屋が必要である。また、少人数で討議したり演習に使用できる小部屋が必要だが、50人程度以上の収容力の講議室しかない大学が多い。
 さらに、宿題をやらせるにしても、学生の居場所が大学にはない。図書館もすぐ満員になる。午後の講議をほとんどなくせばある程度教室が使用できるが、それでも十分ではない。

(2)学生定員制度などの規制
 大学に市場原理が作用しない一つの原因は定員変更が容易でないことである。このため、定員が固定しがちで、学生や社会の希望、要求に対して柔軟に対応できず、市場原理が作用しにくい。

(3)一流大学入学,一流企業就社意識
 一流企業を目指す学生が多く,中小企業に人材が集まりにくい。

(4)厳正な評価による卒業認定の欠如
 大学に入学したら卒業できるという暗黙の了解があり、厳正な実力評価を妨げている。

(5)父兄、企業の大学教育への無関心あるいは無要求
 企業はまだしも、父兄からの大学への教育改善の要求は極めて少なく、大学側が手を抜く要因の一つ ともなっている。

(6)学生の自主性不足
 これは初等中等教育や家庭教育にも関係しているが,日本の学生は精神的に幼稚であり,甘やかされている。
自立した大人にすることが必要である。


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5.世界の動き

 このような問題は日本だけの問題ではない。
 十分な調査はないようだが、下記が指摘されている。

(1)教育の大衆化の進行
 米、英、独、仏、その他欧米の国々で高等教育の大衆化が進行しており、進学率は50%に近づいている。
 このため、学生の質の低下も心配されており、英、独、仏などでは、落第率がかなり高い。
 また、米国では工学部進学率が一時かなり低下した。

(2)教育改革の進行
 これらに対応するには、従来の教育では限界があるという検討結果から、米国では、科学および技術者教育を戦略的に改革している。
 すなわち、デザイン教育を重視すると共に、基礎科学を教育してから応用として技術を教育するのではなく、ある程度平行して教育することが行われている。
 さらに、従来の講義・演習を減らし、社会に役立つプロジェクトをチームで実施する Project-Based Learning(PBL,プロジェクト学習)が盛んになりつつある。

(3)教育の認定、相互承認
 教育の国際的相互承認が進行しつつある。米国には技術者教育の認定制度があり、同様の基準で英国、オーストラリアなど英語圏の国々が相互承認制度(Washington協定)を作っている。
 ECにおいても相互認定制度がある。より国際的な認定制度を作る準備もWFEO(World Federation of Engineering Organizations)等により進められつつある。
 日本でもこのような海外の動きに遅れないように「日本技術者教育認定制度」が第三者機関として平成11年11月19日発足した。
 これから試行を1 年程度実施して本格的に活動を開始する予定となっている。

(4)技術者資格
 WTOのサービスの自由化推進に呼応して技術者資格の国際的相互承認が進められつつあり、その前提としての教育の相互承認が求められている。
 国際的な技術者資格としては、NAFTA ENG,EurIng、APEC Engなどがある。
 APEC Engの場合には、認定制度は必ずしも必要ではないが、他の国際的相互承認には必要になる場合が多い。
 また、ISO9000を技術者教育認定に適用しようとする動きもある。

 日本では、新技術士制度が技術士審議会で議論されており、認定された教育を修了した学生は優遇される予定である。


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6.工学教育を改善するための方策

 社会から期待されている工学系の人材育成と基礎研究の推進という理工系の大学院や学部に課せられた使命を果たすには、上記4で述べた現在の工学教育を見直し、改善していかねばならない。

 課題としては、大学のみの努力で改善できるもの、大学のみでは改善が難しく、社会や産業界、あるいは国を巻き込むことなしには進ませることができないものなど色々なレベルのものがある。

 ここでは、まず、大学が自ら単独で取り組むべき事項について、続いて社会や産業界の支援を必要とする事項について、最後に国として取り組むべきことについて示すことにする。


6.1 大学として取り組むべき事項

(1)社会や産業への関心を持たせ、倫理的、論理的、批判的思考ができる教育、および実際の技術問題と関連性を持たせた基礎教育を推進する。
 単に知識を教授する教育ではなく、人間、特に技術者という職業人を育てる教育をより推進すべきである。
 また、キャリアプラン、卒業、就職、家庭、定年など人生を考えさせるような機会も与えるべきである。

(2)具体的教育目標を明確にして、その教育成果を保証して卒業させるべきである。
 教育の成果として、学生が身に付けることのできる具体的知識・能力を明示し、適切な評価によりこれらの知識・能力を持ったことを保証した学生を卒業させるべきである。

(3)教員中心の知識教育から、学生中心の能動的学習教育に変えるべきである。
 今後の社会・地球の変化に対応するには暗記的知識では無理である。また、知識は爆発的に増加している。
 一方では、知識はインターネット等で容易に得られるようになりつつある。多くの技術者にとって重要なのは、自分で必要な知識を探し出し、創造的に活用すること、あるいは自らが知識を作り出すことである。
 このためには、教員が知識を教授する教育から、学生が自ら学ぶ能動的学習にシフトするべきである。

特に、下記が重要である:

a)学生が学習するのを手助けする教育を重視する
 講義主体の教育ではなく、学生が自ら学習するような教育環境を与え、その学習を助ける教育に変換すべきである。これには、学生個人での演習や宿題の他、学生をチームにして、問題を解かせる方法も有効である。ただし、個人でも学習できるよう適切な指導と評価が必要である。

b)経験的学習理論に合った教育を推進する
 学生が具体的経験,深い観察・思考,抽象的概念化,積極的体験(追体験)というサイクルを繰り返すことができるような教育を工夫すべきである。
 この観点からも宿題、予習・復習等の自己学習は重要である。

c)Project-based Learning(PBL)を採用する
 学生チームに課題を与え、あるいは自分達で課題を設定させ(なるべく社会的ニーズのある課題が望ましい)、チームで解決させる PBL を採用することで、学習への動機付け、能動的自己学習、応用力、幅広い統合化能力、創造性、コミュニケーション能力、チームワーク能力、専門家意識など種々の教育が可能になる。また、成功体験による自信を与える方法としても適している。なお、このような教育の導入には、現在の過密なカリキュラムの再検討と施設・設備の整備が必要である。

(4)教育スタッフの充実によるきめ細かい教育を実施すること
 教育は結局は少人数教育でなければならない。
また、教員が研究に時間を割き過ぎ、教育がおろそかにならないよう契約概念を明確にして、けじめをつけるべきである。

(5)国際的に活躍できる人材教育を推進する
 インターネット等を利用し、国際的学生チームによるPBL を実施することで、英語を利用し、国際的に仕事をする模擬学習ができる。このような方法や種々の方法を工夫して、国際的に活躍できる技術者を養成すべきである。また、企業での実務経験のある教員数を増やなどの工夫も必要である。

(6)文系と理系などの複数学位を同時に取得できる機会を増やす。
 理系のみ、あるいは文系のみの知識では解決できない複雑な問題が増えており、幅広い知識・視野を持った人材の養成が求められている。

(7)工学教育方法、教育成果の評価方法などに関する研究を活性化させる。
 従来、これらに関する研究はあまりに少な過ぎた。これらは永遠の課題であり、時代と共に絶えず進歩させる必要がある。


6.2 社会・産業界が取り組むべき事項

(1)技術者資格制度と専門教育・実務経験を重視する風潮を定着させる。
 医師や法律家などに比較して日本の技術者には専門職性が希薄であり、自立した専門家とは言い難い技術者が少なくない。優れた専門家としての技術者を育成するには、大学等の教育だけでは困難であり、技術者資格制度を確立し、専門教育および実務経験を重視する社会の風潮が必要である。
また、このような社会では、個人の将来がある程度予想でき,計画的に人生計画を立てることができる。また、若い人達に人生の目標を与えることができ,学習への動機付けともなる。

(2)優れた人材が世界から集まる社会体制を構築する。
 一国だけの人材で繁栄し続けた国はない。優れた人材が世界中から集まり、活躍できる環境が必要である。技術者の採用に際しても将来は国籍を問わず外国人も採用すると予想する企業が少なくない。また,優れた留学生を引きつけ,日本人学生と共に学ばせ友人を作らせるのは、国際理解や国際社会における日本の地位向上などのためのみならず、国際競争力向上にとっても極めて重要である。このための国際競争はすでに始まっている。日本に定住するにはあまりに規制が多く、優秀な人材は米国等へ行ってしまうことが多い。

(3)研究のみならず、教育でも大学と社会・産業界が連携する。
 技術は社会・産業と深く結びついている。大学だけでの教育は非常に困難である。

(4)工学および技術に関連する学協会は工学・技術者教育への一層の貢献に努力する。
 専門家集団としての学協会には、工学・技術者教育について、より一層の貢献と積極的な発信が求められる。
例えば、大学入試試験における試験科目や大学等でのカリキュラムへの見解発信、日本技術者教育認定制度への協力、継続教育などが挙げられる。


6.3 国が取り組むべき事項

(1)教育改革を国家の重要課題として最上位に位置づけ、改革を戦略的に進めるべきである。
 国としては第二次世界大戦後の我が国の復興を支えるために、理工系分野の学部学生の増員を行い、また石油ショックを挟んで産業構造が基礎素材型から高付加価値製品に移行したことを受けて、より高度な実践的教育を志向する大学院の増員を戦略的に図ってきた。

 これに加えて、経済発展に伴う国民の意識の変化や産業・経済のグローバル化などに対応すべく、工学教育における質の向上に戦略的に取り組む必要がある。

(2)単に精神的に教育改善を大学に要求するだけでなく、教育へ投資を増やすべきである。

a)教育のための基盤および環境整備を行うこと
 現在の多くの大学には講義室と学生実験室程度しかない。
しかも、これらは一学年に一部屋程度であり、小部屋が圧倒的に不足している。このような状況は講義主体の教育であれば問題ないが、少人数での演習、討議、PBL などの今後の新しい教育(前述の大学への提言(3)参照)には対応できない。また、図書館にも学習スペースは極めて少なく、自己学習や宿題をやらせるにしても、学生の居場所が大学にはない。
 特に、今後は手と頭を使う教育として、簡単な作業ができ、長時間占有したり作品を放置できる多くの小部屋が必要である。例えば、デンマークのオールブルグ大学では1500以上の小部屋を所有し、優れた教育を実施している。また、今後は教育・学習におけるインターネットの利用が極めて多くなる。このための設備を整備する必要がある。
科学技術基本法が成立し多額の費用が主に研究設備に投資されているが,建屋などの基盤的整備や教育改革にも手遅れにならない内に投資すべきである。

b)教育支援スタッフを充実すること
 教育はマスプロ教育ではなく、少人数教育でなければならない。しかし、定員削減でますます教育を支援するスタッフが減っている。TA制度もあまりに予算が少なく、また規制が多いため、米国のような効果を上げていない。TA制度の改善やボランテヤの活用、企業との教育における連携などのための費用が必要である。
また、ポスドクを3−5年契約でスタッフとして、PBLなどの教育支援スタッフにするなどの援助も望まれる。

c)先導的教育改革への財政的援助(スペースを含む)を増やすこと
 PBLではそのスペースや設備・機器、社会との連携が必要であり、設計・製作教育ではスペース、ラピッド プロトタイピング装置、CADなどの設備機器が必要である。
また、インターンシップでもコーチの訓練、その他の費用がかかる。
企業の厚意にのみは頼れない。
また、工学教育方法や評価方法に関する研究に対しても資金援助すべきである。
科学研究補助金等でもこれらに対応できるようにすべきである。

(3) 日本技術者教育認定制度等への積極的援助をする。
 大学の教育改革には適切な競争原理の導入と産業界からの強い要求が必要であり、その仕組みの一つ として、認定制度等は役立つはずである。

(4)研究費に人件費を含ませ、世界中から良い学生を集められる制度を確立する。
 優秀な博士後期課程学生が少ないことが、研究の高度化を妨げるだけでなく、教育をもいびつにしている。博士後期課程の学生が工学系で少ない大きな理由の一つは経済的援助が少ないためである。
日本ほど博士課程学生への経済的援助が少ない国は極めて少ない。


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7.提言

 以上、従来の数合わせの工学教育から、国際的に通用し、我が国を再生させるような科学者・技術者を養成する工学教育への移行が望ましいことを示してきた。

 我が国が技術立国として、国際的責任を果たすと共に、国内産業を活性化させるにはそれを担う人材の育成が不可欠である。
そのため以下の提言が実現されることを強く望むものである。

提言1 :国として、教育改革を国家の重要課題として最上位に位置づけ、改革を戦略的に進めること。
また、教育の基盤・環境整備を行うと共に、新しい工学教育を推進するため、教育方法や評価方法に関する研究や先導的教育改革への財政的援助(スペ ースを含む)を行うこと。

提言2 :産業界として、就職に際して大学での教育成果を重視し、研究のみならず、教育で も大学と連携すること。

提言3 :大学として、単なる知識教育ではなく、社会や産業への関心を持たせ、倫理的、論理的、批判的、創造的思考ができる教育、および実際の技術問題と関連性を持た せた基礎教育を推進し、国際的に活躍できる人材を養成すること。
このため、経験的学習理論に合ったProject-based Learning(PBL)などを積極的に取り入れること。


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文 献

1)平成11年度我が国の文教施策、文部省編

2)寺脇研、苅谷剛彦、”子供の学力は低下しているか”、論座、(1999)10、12-33

3)特集「学生の「学力低下」を感じたことがありますか」、論座、(1999)10、34-45

4)安岡高志、滝本喬、三田誠広、香取草之助、生駒俊明、“授業を変えれば大学は変わる”、プレジデント社(1999)

5)D.A.Kolb:Experiential learning,PTR Prentice Hall,(1984),p.30

注1:学術会議第5部関連の下記の学協会、日本工学教育協会関連の企業研修所所長、関西工学教育協会関連企業研修所所長などの方々にアンケートにより意見を求めた。

アンケート回答学協会
・エレクトロ二クス実装学会 ・地盤工学会 ・日本応用地質学会 ・日本舶用機関学会
・日本造船学会 ・日本金属学会 ・日本機械学会 ・応用物理学会
・日本建築学会 ・システム制御情報学会 ・日本物理学会 ・資源・素材学会
・化学工学会 ・土木学会 ・自動車技術会 ・日本非破壊検査協会
・日本航空宇宙学会 ・石油学会 ・電気学会 ・日本デザイン学会

アンケート回答企業
・三洋電機株式会社 ・新日本製鐵株式会社 ・住友金属工業株式会社 ・住友電気工業株式会社
・三菱電機株式会社 ・シャープ株式会社 ・(株)東芝


注2:下記の方々に関係学会における意見についてヒヤリングを行った。
背戸一登    日本大学理工学部教授 日 本機械学会
幸田清一郎  東京大学大学院工学研究科教授 化学工学会
高梨晃一    千葉大学工学部教授 日本建築学会


注3:アンケート用紙

各学協会会長殿
研修所所長殿

日本学術会議
第5部 工学教育研究連絡委員会
委員長 阿部博之(東北大学総長)


「工学教育におけるエンジニア教育の位置づけ」に関するご検討のお願い

現在,日本学術会議,第5 部工学教育研究連絡委員会(注1 ,委員長 阿部博之)においては,「工学教育におけるエンジニア教育の位置づけ」について議論を開始しました。これは以下の理由によるものです:

1.平成8年度における工学系学部学生数は約46万人,大学院博士前期学生数は約5万人,博士後期学生数は約1万人となっています。
これらの数は昭和35年のそれぞれ約5,40,26倍であり,工学教育が著しく大衆化されたことを意味しています。
この結果,工学部を卒業してもエンジニアという意識を持った人材が減少すると共にエンジニア教育のレベルが低下している可能性が少なくありません。

2.現在の工学教育には知的専門家としてのエンジニアを養成するという意識が少なく,企業で再教育しないと戦力にならない場合が増えています。

3.従来の多くの大学では,入学試験は厳しいものの,卒業資格についてはあまり明確な基準がなく(単位数としてはありますが,実力評価に透明性がない),大学はでたものの,どの程度の力がついたのかは分からない場合が少なくありません。

4.一方,国際競争の激化により,企業でも,企業内教育でエンジニアを養成する余裕がなくなりつつあります。

5.従来,日本にはキャリアという概念が明確ではありませんでしたが,終身雇用制度の崩壊,人材の国際的移動,中途採用の増加などから,個人のキャリアといういう概念も重要になりつつあります。

6.専門家としてのプロフェッショナル・エンジニアの国際的相互承認などが結ばれる傾向があります。

以上のような現状と動きから,以下について議論しまとめて頂けば幸いです。書式は問いませんが,平成11年8月末)までに学術会議宛にご送付頂ければ幸いです。

1)工学基礎,特にエンジニアリング・サイエンスを教育するのが主体になっている工学教育の現状の方向で良いか。

2)数学,自然科学,工学等を武器として,社会の要求に適切に答える新しいシステムや機械・装置等をデザインし創造する責任ある知的職業家としてのエンジニア教育をどの程度推進すべきか。

3)エンジニア教育として従来のカリキュラムには何が不足しているのか。

 例えば,プロトタイプの製作を含む新しい設計教育,工学倫理,工学マネジメント,チームワーク,工学英語教育などの必要性など

以上


注1:委員 阿部博之(東北大学,委員長),曽我直弘(滋賀県立大学),丹保憲仁(北海道大学),
冨浦 梓(新日本製鐵),田中俊六(東海大学),大中逸雄(大阪大学,幹事)

ご質問は下記にお願いします。

大中逸雄 大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻
〒565-0871 吹田市山田丘2-1 Tel.06-6879-7473,Fax.06-6879-7474
e-mail ohnaka@ams.eng.osaka-u.ac.jp
アンケート送付先 〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 日本学術会議 第5部 工学教育研究連絡委員会

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