地球惑星物質科学の現状と展望
委員会名  鉱物学研究連絡委員会
報告年月日  平成9年7月15日
議決された会議  第884回運営審議会
番号 研連16−67

作成の背景 

 地球惑星物質科学とは、鉱物学・岩石学・鉱床学などから発展し、地球とそれを取り巻く太陽系を構成する物質の生成と進化過程の解明を目指す分野である。地球惑星物質科学においては、対象とする物質のミクロとマクロの性質を明らかにすることによって、時間とともに不可逆に進化する地球と太陽系の物質進化の過程を解明することを目的とする点において「逆問題」を解くことにほかならない。この分野の研究は物理学や化学、材料科学と共通の研究方法を用い、これらの分野の発展に影響されつつ、また逆に貢献しつつある。

現状及び問題点

 地球惑星物質科学の研究手法は大きく二つのカテゴリーに分類することができるであろう。
 第一に(1)地球惑星物質のキャラクタリゼーション、そして(2)地球惑星現象の実験的再現(シミュレーション)である。(1)と(2)の研究のいずれにおいても、進化しつつある太陽系と地球惑星の現象を明らかにするという逆問題を解く点に特徴がある。地球惑星物質科学で取り扱う試料はすべて過去に地球や惑星が行ってきた振舞いの結果である。我々はこれらの試料について、一体過去に何が起ってこのような試料が残されたのかを過去にさかのぼってそのプロセスを解かなければならない。

改善策・提言等

地球惑星物質科学を推進する立場にある者として、今後以下のような方策を展望していく必要がある。
1) 各研究機関における地球惑星物質科学関係の研究者が相互に情報の交換と協力関係の強化に努めて、科研費の申請やCOE(センターオブエクセレンス)申請等を通じて研究基盤の充実を計る。
2) 若手研究者の育成のために、大学院生やオーバードクターの研究条件の改善を更に関係機関にはたらきかけると共に、彼らを海外を含めた他研究機関との共同研究に積極的に参加させ、異なった思考法に接する機会をできるだけ持たせる。
3) 大学における研究・教育体制の改組に伴い、新たな地球惑星物質科学像に見合った物質科学の基礎教育を十分カリキュラムに反映させると共に、物質科学分野からの学生の流入も容易にするような大学院入試制度を考える。
4) 地球惑星物質科学関係の学会相互の交流と連携を計ると共に、地球惑星科学の他分野との交流を深め、同時に地球惑星物質科学の立場をアピールする場を積極的に求める。
5) 我が国の地球惑星物質科学が世界をリードして行くために研究装置を国内の複数の拠点に配置し、自由な競争による研究と教育活動の活性化に努める必要がある。

 

 
報告書原文   全文PDFファイル(1,327k)

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キャラクタリゼーション技術、 プレートテクトニクス理論とプルームテクトニクス理論、 地球惑星物質の計算機科学、 惑星形成論、 原子太陽系星雲での物質進化と隕石科学、 地球惑星表面の環境と生物圏の物質科学
関連研究機関・学協会
資源地質学会




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