航空宇宙工学研究と教育の活性化について ~"
委員会名  航空宇宙工学研究連絡委員会
報告年月日  平成9年6月20日
議決された会議  第883回運営審議会
番号 連絡16−58

作成の背景 

 我が国は、もともと平和目的に徹し宇宙開発を進めていたので、着々実績を積み重ねてきており、今や世界の宇宙開発の一翼を担うまでの発展を遂げた。このような背景の下で、国は平成8年には今後15年を視野にいれた宇宙開発政策大綱を宇宙開発委員会において策定し、また科学技術庁は平成6年に「航空技術の長期的研究開発の推進方策について」の航空・電子等技術審議会による答申(18号答申と略称)を発表した。
 このいずれの施策を実現するにも航空宇宙工学分野における人材育成と研究の活性化が大前提であることは論を待たない。それを現情勢の下でいかに効果的に達成しうるかの見解をここにとりまとめ報告するものである。

現状及び問題点

 我が国の航空宇宙工学の研究者も次第に数を増してきた。また、現在工学部の学科としては12学科、学科内講座3、また大学院として7の専攻を数えるに至った。
 しかし、現状を見ると、多くの改善すべき点を指摘せざるをえない。宇宙工学研究について例を挙げれば、大学の研究者の研究意欲は旺盛ではあるものの、国の進めている計画に効果を及ぼすためにはテーマの選定、結果の反映において、実施機関の実状と殆ど無関係ともいえるのが現状である。
 また、開発の現状に触れる機会が与えられるべきであるが、行政の枠を越えた実施機関での実習や演習の実施は学修上困難な状況にある。
 一方、実施機関の側では常に人手不足に悩み、人員増を要求しているが、現今の公務員などの定員削減計画からそれが充足される見通しはないし、よしんばそれが可能であったとしても、組織の肥大化は限界にきているといってよい。現状は実施機関、大学研究者のいずれにとっても不十分であるといわざるをえない。

改善策・提言等

 上述の現状に鑑み、研究者の国や産業界との密接な協力関係の確立が急務である。しかも研究者の多くが航空宇宙産業振興構想を持つ地域に在籍していることから、これら研究者と国、産業界を結ぶ上で、地方自治体が一定の役割を果たす必要性と有効性が指摘できる。
 大学研究者は科学研究費など一般的な国の研究助成を受けることができ、しかも科学技術基本法の下、年を追って研究費枠は大きくなり、大学研究者の研究環境の改善は著しい。
 にもかかわらず、航空宇宙工学の研究に限りここに取りあげる理由は、まさに戦略的研究を必要とする分野であるからである。もちろん科学研究費にも総合工学の一分科として航空宇宙工学があるので、基礎的な特色ある研究推進には固有の役割を果たしてきており、今後とも意義が薄れるものではないと考えられる。
 しかしながら、その成果の活用や評価基準は大学研究にとどまり、現実のプロジェクト推進における切実な要求を反映できる背景を備えていない。いいかえれば、現実のプロジェクトを支援するための研究に対する成果の評価は実施機関、あるいは利用機関においてなされてこそ、有効性が保証できるといえる。

 

 報告書原文   全文PDFファイル(283k)

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