高度研究体制の早期確立について(要望)


平成7年10月25日

第122回総会

 

 学術研究が我が国はもちろん、世界全体にとってもその将来を左右する重要な役割を担うという認識が政・官・産を通じて最近とみに高まってきたことは喜ばしいことである。しかしその一方、我が国の学術研究体制にはなお制度的、構造的な多くの問題が顕在化している。
 日本学術会議では、平成元年4月20日付け「大学等における学術研究の推進について−研究設備等の高度化に関する緊急提言−」の勧告を提出し、政府関係機関においても、このような現状を踏まえ、学術研究体制の改善のための様々な施策が講じられている。しかしなお、21世紀を目前に控え、我が国の学術研究の飛躍的発展を図る観点から、研究費、研究者及び研究機構について抜本的な改善充実を図り、我が国の学術研究体制を一挙に高度の水準に引き上げ、高度研究体制を早期に確立することが不可欠である。科学者の代表機関として、日本学術会議は以下の点を早急に実現することを要望する。

 

  1. 研究費について
     我が国の研究費の政府による負担割合、政府負担研究費の対GNP比を欧米先進諸国並みに引き上げ、政府の研究開発投資額を早期に倍増させることが必要である。
     その際、基礎研究、応用開発研究に加えて、将来における応用の潜在力に注目した「戦略研究」のそれぞれについて助成を強化するとともに、国費による投資的経費としての研究費の支出、民間の研究助成財団の活動の促進などにより、多元的な研究資金源を確保することが必要である。
  2. 研究者について
     優秀な研究者を確保する観点から、研究費、研究施設等について劣悪な状況にある研究環境を早急に改善することが必要である。
     また、ポストドクトラルフェローシップの飛躍的拡充など研究者の雇用形態の多様化を図るとともに、若手研究者の支援施策の改善充実、公正で多角的な評価システムの確立、外国人研究者の任用も含めた研究者の国際的な交流の促進などにより、研究者がその研究能力を最大限に発揮する条件を整えることが必要である。
  3. 研究機構について
     大学、研究所(国公立試験研究機関、民営研究機関、大学共同利用機関及び大学の附置研究所をいう。)、企業の3セクターの調和のとれた発展、規模的に不十分な研究所セクターの拡充を図るとともに、これらの間の人的交流や研究協力を促進することが必要である。
     また、急速に進展する学問の最前線に立って常に高い研究活動を維持するため、研究組織に安定性と流動性の二重性を導入するとともに、我が国の学術研究体制の重大な問題となっている研究支援者の不足について、所要の対策を講じる必要がある。
  4. 国際的連携について
     世界に開かれた共同研究の拠点の整備、研究助成を目的とする基金の設定など、研究者の国際交流、共同研究等の促進のため、所要の措置を講じる必要がある。その際、アジアの一員として、アジア地域に対しては特段の配慮が必要である。

 

(本信送付先)

内閣総理大臣

 

(本信写送付先)

内閣官房長官          日本学術振興会会長
法務大臣             日本私学振興財団理事長
外務大臣             国立大学協会会長
大蔵大臣             公立大学協会会長
文部大臣             日本私立大学連盟会長
厚生大臣             日本私立大学協会会長
農林水産大臣          全国知事会会長
通商産業大臣          大学基準協会会長
運輸大臣             全国公立大学設置団体協議会会長
郵政大臣             国際協力事業団総裁
労働大臣             海外経済協力基金総裁
建設大臣             国際交流基金理事長
自治大臣             経済団体連合会会長
国家公安委員会委員長    日本経営者団体連盟会長
総務庁長官
北海道開発庁長官
防衛庁長官
経済企画庁長官
科学技術庁長官
環境庁長官
沖縄開発庁長官
国土庁長官
人事院総裁