ゆうき&りか 1945    フレミング先生
フレミング先生
はい次の方,うでを出して!



りかちゃん

わたしたちは注射を打ちにきたんじゃないんです。

フレミング先生はじめまして!

1945年のノーベル生理学・医学賞受賞おめでとうございます。
わたしたち,フレミング先生にお会いするために,タイムマシンで未来からやって来たんです!

フレミング先生
フレミング先生

やあ,いらっしゃい。未来から来たなんて信じられないな! 科学の進歩はすごいね。
どおりで変な格好をしていると思ったんだ。


ペニシリンの発見と伝染病に対する治療薬の発見で,ノーベル生理学・医学賞をいただいたんだよ。嬉しかったね。


ゆうきくん

ペニシリンって,病気を治す薬ですよね? 名前は聞いたことがあるんだけど・・・ゆうきくん??

先生の研究は,医学の歴史上,もっとも重要な発見の一つと言われていますが,なぜですか?


フレミング先生

さて,ペニシリン発見についてなんだが,私の研究は,“失敗は成功の母”というものの見本のようなものなんだよ。
それから,観察ということがいかに重要か,ということだね。

医学上の重要な発見の一つと言われているのは,バクテリアとか細菌などの“生物”が原因となる病気を治す薬を発見したからだよ。
100種類以上の病気を治療する効果があることもわかって,多くの感染症治療薬に使われたんだ。



りかちゃん
100種類ですか。すごいですね!
ひとつの薬で100種類の病原菌にも効果があるなんて,どのようにしたら発見できたのかしら? ぜひ,教えてください。

フレミング先生
実験が失敗したから,できたんだよ。

ゆうきくん
えーーー!? りかちゃん !?

フレミング先生

私は,第一次世界大戦のときに軍医として働いていたのだが,戦後,聖メアリ病院医科大学に戻り,
ブドウ球菌という細菌の研究をしていたんだ。
こうした細菌の研究をするためには,まず,実験のために使う細菌を
培養し,増やして実験をするのだけれど,
1928年のある日,細菌が繁殖している培養器の中にアオカビが発生してしまい,実験に使えないものがあったんだよ。

実験では純粋なものしか使えないから,これを捨てようと思ったんだが,よくよく見るとアオカビの周囲だけに細菌が繁殖していないことに気がついたんだ。
不思議なので顕微鏡で調べてみたところ,このアオカビが分泌する液体が細菌を溶かしているということがわかったんだよ。

それで,いろんな細菌に試したんだが,有害な細菌によく効くし,副作用もなかったんだ。
この物質にペニシリンという名前をつけたのだよ。


〔図:アオカビ〕

よく,モチやパンに生える緑色のカビ
  〔図:ペニシリン処理をした大腸菌細胞〕
出典:東京工業大学大学院生命理工学研究科和地研究室
http://www.celltech.bio.titech.ac.jp/

大腸菌に抗生物質ペニシリンを作用させると
必ず中央部分が膨れてきて
そこから破裂して溶菌する。

りかちゃん

わーっ。アオカビって古くなった「ほうき」みたいですね。

“失敗は成功のもと”ですね! 失敗したからといって,なにかを捨てるのはこれからやめようっと。

こういうの,日本のことわざでありましたよね。“ひょうたんから駒(こま)”
そういう意味では,後から聞くと,田中先生もそうだし,プルジナー先生も,それにガイジュセク先生も,みんな“ひょうたんから駒”のような話ばかりですね。


フレミング先生
でも,一度は,みんなから忘れ去られてしまったんだ。

ゆうきくん
えっ,なぜですか???

フレミング先生

このときばかりは,大発見といえども,製造力が伴わないといけないと思ったね。
このペニシリンをアオカビから抽出することは難しいし,また医療の現場での利用もうまくいかなかったんだよ。
そして、そのまま忘れ去られていたんだ。

ところが,10年以上もたったころに,オックスフォード大学の
ハワード・フローリー
エルンスト・チェインが抗生物質を研究しているときに,私の論文を見つけて,これを実用化できないかということで,
アオカビの分泌液からペニシリンを抽出する方法と大量生産する方法を研究したんだ。

その結果,純粋なペニシリンを抽出することに成功したのだよ。
これは,ものすごく強力な効き目があり,動物実験では,つぎつぎと成功をおさめたんだ。
そして,1943年には,一ヶ月に50万人を治療するペニシリンが作られ,多くの人の命を救うことができるようになったというわけだよ。



りかちゃん

分離抽出する技術とか,大量生産する技術も伴わないと,本当の薬にはならないのですね。

原理や法則を見つけることだけがノーベル賞に値すると思っていたけど,実用化の技術も大切なんですね。


フレミング先生
その結果,1945年に私とチェイン,そしてフローリーの三名は,ノーベル生理学・医学賞を受賞したんだよ。

ゆうきくん

医学の世界は,おもしろいですね。
生命相手だから,試行錯誤も多いし,人間的な苦労があるように思います。
患者さんを助けたい!という気持ちがあるから,こうした研究も続けられるんだと思いました。

ノーベル賞っていうのは,壮大だなー。
でも,実験室での失敗の観察から始まっているから,すごく身近に感じます。
失敗したと思ってもよく観察すると、実はその中に真実が隠されているんだということがよくわかりました。

田中先生は,偶然からグリセリンとコバルトを混ぜてしまった。
間違いに気がついたけど,もったいないから実験したら,タンパク質を壊さないでイオン化することができた。

フレミング先生は,実験材料にアオカビをはやしてしまった。
普通なら失敗!というところなんだけど,よく観察して,大発見につながっている。

ちょっと,これから考え方を変えないといけないな。失敗や間違いということを,ちゃんと見直さないとね!

今度の期末試験で間違ったら,あとでよく,見直ししよぉーっと。


りかちゃん

え!? 信じられない! ゆうきくんが変わったわ。
でも,今だけかもしれないけれどね…。ほめてあげるわ。
りかちゃん

ゆうきくん

そういう言い方はないと思うけどなー!!
ぼくも大発見をしたいし,地道な努力がかっこいい!と思えるようになってきました。
将来は,地道に,汚い研究室で大発見をするぞー!!
ゆうきくん

りかちゃん

いい心構えです。ゆうきくん,かっこいいよ!

でも,別に汚くなくてもいいと思うんだけど…? ちゃんと掃除すれば,きれいになるわよ。

ゆうきくん

また掃除の話かー。はい,はい。

ところで,今度はどこへ行こうか?


フレミング先生

ゆうきくん,りかちゃん,ペニシリンという治療薬の発見について,勉強できましたね。


では,気をつけてお帰りなさいね。

りかちゃん

はい,フレミング先生,いろいろ教えていただいて,どうもありがとうございました。イラスト27:ゆうきくん

ゆうきくん,次は,日本人で,百年に一度の大発見をしたと言われている利根川進先生の話を聞きましょうよ!
利根川先生は,人間が本来持っている自然治癒力,つまり,免疫力の研究をしてノーベル賞を受賞されたと,博士が言っていたわ。
自然治癒力って,どんなことなのかしら?


イラスト28:ゆうきくん

じゃあ,利根川先生のところへおじゃましよう!
人間の自然治癒力の話かー。楽しみだなー。でも,難しそうだな…。

前回も最後のアインシュタイン先生は難しかったもんな。まあ,でも,今わからなくても,将来わかればいいか。

イラスト29:ゆうきくん よーし! りか,
タイムマシンで利根川先生の話を聞きに行くよ。

じゃ,出発するよー。
3!2!1!0,しっゅぱーつ!
みなさんも,利根川先生をクリックして,
話を聞きに行こう!
利根川先生をクリックして,
話を聞きに行こう!

利根川先生



Copyright 2003 SCIENCE COUNCIL OF JAPAN