■研究への挑戦
第5部会員 長尾 真
  率直にいって、大学受験の時、理学部へ行こうか文学部の哲学や倫理学に行こうか迷いました。その頃、京都大学に電子工学科という新しい時代へ向けての学科が創設されるという新聞記事が出て、理学に最も近い夢のある学問分野だと思って挑戦したのです。学部学生の終わりのころコンピュータが現れ、修士課程でコンピュータソフトウェアの研究に入ってゆきました。この分野は人間の思考過程に関係して哲学に非常に近く、自分の性分に合っていたのでしょう。そこでまず取りあげたのが、文字をコンピュータに自動的に認識させるプログラムの作成で、郵便番号読取装置の最初の装置に使われました。その後写真のコンピュータによる自動解析と認識の研究をしました。こういった研究と並行して、人間の高度な頭脳活動である言語翻訳をコンピュータに学習的にやらせる研究を行いました。今日の機械翻訳システムの基礎になるものです。若い頃は、このような2つの分野の研究のために睡眠時間を削って、普通の人の2倍の勉強をしたものです。今もそうですが、社会の役に立ちたいという使命感に燃えてもおりました。


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