■恩師のひと言
第2部会員 栗林忠男
  私の場合、研究者への志向の発端について特記するものはあまりない。何となくこの道を選んだというと不正確な言い方になってしまうが、かと言って、当初から明確な心構えをもって学者の世界に入ったというわけでもない。だから、『何故科学者になったのか』といった類の質問は苦手である。ただ、大学時代から国際関係、特に国際法には強い関心があった。国際法の授業をはじめて聞いた法学部三年の時に、授業後に廊下で、後に私の恩師となる先生に追いすがるようにして、国際法学習への熱望を勝手に吐露させて頂いたとき、『国際法はこれから次々と新しい問題を抱える分野だから、やり甲斐がありますよ』という、先生の激励するようなひと言が終生その契機になったことは間違いない。やがて大学院に進み、外国で博士号をとる苦労等をして大学に戻り、今日まで飽きもせず国際法学を研究している私のその後は、恩師のこの時の言葉を日々実感する過程でもある。


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