ゲノムについて
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おもしろ博士
「そこがかんじんなところじゃ。メガネの倍率を上げるぞ。よいか。」
ゆうき 「妖精みたいなものがたくさん寝ているね。」
おもしろ博士 「妖精をよく見てごらん。何種類いるかわかるかな。」
ゆうき 「アデニン、チミン、グアニン、シトシン。
なんか人のなまえみたいだけど種類はこれだけ? 四種類になるね。」
おもしろ博士 「科学的にはDNA、デオキシリボ核酸と呼ばれておる。 頭文字をとってA,T,G,C。この4種類の組み合わせでヒトゲノムは出来ている。 端から端まで30億、二組合わせると60億。 まあ、世界の人口が60億といわれておるから、それと同じ数だけ、ゆうき君の細胞の核の中にはDNAが並んでいるということになる。」
ゆうき 「えーっ。すごい数だね。細胞は頭の中にも筋肉にも、骨にも体中にあるんだよね。 みんなおんなじゲノムをもっているの?」
おもしろ博士 「そうなんじゃ。ゆうき君の場合を考えてみようか。お母さんとお父さんからゲノムを一組ずつもらってゆうき君のもとになった受精卵のゲノムができたのさ。これが細胞分裂のたびにコピーされてゆうき君の体中の細胞の中に受精卵と同じゲノムが入っておるのじゃ。 体の細胞は60兆個あるといわれておるから、ゆうき君ゲノムの数は60兆個ということになるの。」
ゆうき 「うわっ、気が遠くなりそうだな。 でもさ、みんなゲノムは同じなのに、心臓とか脳とか筋肉とかいろいろな細胞があるの?」
おもしろ博士 「なるほど。それじゃあDNAの妖精たちをもうすこし観察してごらん。なにかわかるかな。」
ゆうき 「あれ、みんな寝ているよ。でも時々起きているDNAがいるみたいだね。」
おもしろ博士 「寝ているDNAと起きているDNAは細胞の種類によって違うのじゃ。心臓の中の細胞では心臓を動かしたり作ったりするDNAだけが働いて、他のDNAは寝ておるのじゃ。 筋肉では筋肉が、脳では脳の細胞で必用なDNAが働いている。それぞれの細胞で働いているDNAのグループを遺伝子と呼ぶんじゃ。 遺伝子が働くことで、細胞が必要とするタンパク質が作られ、生きるための仕組みが働くことになる。」
ゆうき 「それじゃあさ、細胞によって遺伝子が寝たり起きたりするのはどうしてなの。」
おもしろ博士 「そう、そこが大きな謎なんじゃ。 ゲノムの中にどんな遺伝子が いつく隠れているのかも良くわかっていない。 そこで、ゲノムの中の30億のDNAを端 から端まで どんな順番に並んでいるのかを確かめることが<ヒトゲノム解読計画> の最初の大きな目標なんじゃ。 その上で、細胞ごとに起きているDNA、つまり遺伝子を見つけ出す。
そして、さらにDNAを起こしたり寝かしたりする仕組みを見つけ出す。ここまできて、ようやく生命を動かす魔法の秘密を探し出す旅を始めることが出来るのじゃ。
アポロ計画なら月をめざす宇宙船が完成した段階になるかの。でも、いまは30億のDNAの並んでいる順番がようやくわかってきたところじゃ。宇宙船の部品がそろいはじめたところで、月に向かうまでには、まだまだ時間がかかるということになるの。」
ゆうき 「 そうか。ぼくが大人になってからでも間に合うのかな。 月から見た地球の写真みたいにみんなを感動させられるような発見をしてみたいな。」
おもしろ博士 「ゆうき君は偉いの。そのためにはいろいろな知識が必要になるぞ。 生物の勉強はもちろん、コンピュータの知識や化学や物理の勉強もしなくてはならん。 たいへんじゃが、きっと面白いものが見つかるぞ。」
ゆうき 「そうだね。うんと勉強しなくちゃね。」
ワンワン 「こんどは、ワンワン用に作ってほしいのだ。」
おもしろ博士 「よしよし。」
ゆうき 「それじゃ。博士!」
おもしろ博士 「そうそう、ゆうき君今度のお休みの日はわしのとっておきの研究所につれていくからの。」
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