ゲノムについて
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おもしろ博士
「それじゃあ、はじめるかな。まず、ゆうき君はヒトゲノムの「ヒト」っていうのが、なんのことだかわかっているかな。」
ゆうき 「えーっと、人間のことだよね。」
おもしろ博士 「その通り。生物学の世界では人間のことを「ヒト」と言う。このヒトゲノムっていうのは、簡単に言うと「人間が生きるための仕組み」のことじゃ。人間の体の細胞全部にゲノムは入っているんじゃ。それに、人間だけじゃなく、生物すべてが、それぞれのゲノムを持っている。」
ゆうき 「へー。ぼくも持ってるの?」
おもしろ博士 「そうじゃよ。
おっ、いいところにやってきた。ほら、ゆうき君、そこの窓に遊びにきた蝶のマックも話しかけてみようかね。こんにちは。」
ゆうき 「え、蝶に?ああ、ええっと、こんにちは。」
蝶のマック 「やあ博士、今度は何の研究してるの?」
おもしろ博士 「わしの大事な友達がゲノムについて知りたいと言ってるんだが、マックは、蝶の世界で博士じゃったよな?」
蝶のマック 「ゲノムについては、今、蝶の世界でも研究中なんですよ。お力になれることがあれば。」
おもしろ博士 「うむ、一つだけお願いがあるんじゃ。君らの仲間の成長課程を見せてくれるかね。」
蝶のマック 「お安いごようですよ、外に出てきて下さい。」
蝶のマック 「ここが、卵の村、そっちに行くと順番に幼虫の村、さなぎの村、そして成虫の村と分かれていますよ」
おもしろ博士 「どれどれ。ほれ、ゆうき君よーく見てごらん。例えばな、蝶は、決まった順番で、こんなにも形を変えながら成長していくだろう。これは、ゲノムのしわざなんじゃよ。」
ゆうき 「じゃあ、この蝶の幼虫とさなぎのゲノムっていうのはちがうの?」
蝶のマック 「いや、蝶の世界では、どんな成長段階でもゲノムが変化していくことはないよ!同じゲノムが働いて、まったく違う形を作っているんだ。例えば、幼虫とさなぎの時の違いっていうのは、同じゲノムのうち、どの情報が働いているのかが違うだけなんだ。」
おもしろ博士 「そう。人間でも同じじゃ。赤ちゃんのときのゆうき君も、大人になったゆうき君も、いまのゆうき君と同じゲノムを持っている。ただ、ゲノムがいろいろな命令を出しているからゆうき君は赤ちゃんのときと違うんじゃ。」
ゆうき 「へー不思議。魔法みたいだね。」
おもしろ博士 「そう。つまり、ゲノムは、生命をコントロールする魔法のような不思議な仕組みなんじゃ。」
ゆうき 「でもさ、僕のまわりの友達も、博士も同じ人間だけど、顔の形とか少しずつ違うよね、それは?」
蝶のマック 「僕たち蝶だって少しずつ違うんだよ。ほら僕の仲間の羽の色をみてごらん。」
ゆうき 「うわー、きれいな色の羽がたくさん!」
蝶のマック 「みんな同じ種類の蝶で同じゲノムを持っているけど、働いている情報がほんの少し違うだけで、こんなに色や模様が違ってくるんだ。」
おもしろ博士 「ヒトも少しずつ違うのじゃよ、ゲノムのうちの約0.1%だといわれているがの。 私とゆうき君のゲノムもちょっとだけ違っている。お父さんやお母さんともちょっと違う。鼻の形や眼の大きさ。顔が一人一人違うのもゲノムの違いがあるからじゃ。でもみんな同じ人間じゃ。これもゲノムの魔法のひとつじゃね。このゲノムの魔法の秘密を何とか知りたいと始まったのが、ヒトゲノムの解読なんじゃよ。」
蝶のマック 「おっとそろそろ行かなくちゃ、じゃあ! またね、ゆうき君、博士。」
ゆうき 「うん、ありがとう。またね。」
おもしろ博士 「それじゃあのマック!」
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