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第12回アジア栄養学会議国際会議 開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第12回アジア栄養学会議
         (英文)12th Asian Congress of Nutrition (ACN2015)
(2)報 告 者 :第12回アジア栄養学会議組織委員会委員長 宮澤 陽夫
(3)主   催 :公益社団法人日本栄養・食糧学会、日本学術会議
(4)開催期間 :2015年5月14日(木)~ 5月18日(月)
(5)開催場所 :パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
(6)参加状況 :49ヵ国/2地域・3,769人(国外1,149人、国内2,620人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
人類が生存し、健康で幸福な生活を送るうえで必要な要素のひとつが「栄養」である。地球規模での栄養問題を考え、その解決のための研究・教育・施策などを推進することが必須である。近年、アジア各国では食品・栄養と健康のかかわりに強い関心が寄せられており、長寿国家として知られている日本における栄養科学の進展や、栄養の実践、栄養教育のあり方は、諸国から手本になるものと期待されている。
一方、我が国は先進国・長寿国であるがゆえに直面しなければならない多くの課題も抱えている。高齢者の食事と栄養、生活習慣病の増加、機能性食品やサプリメントの利用、過剰栄養、若者の食生活の乱れ、若い女性の低栄養とやせ、低体重出生児など、栄養学が抱えているさまざまな問題の解析と解決に向けた努力が求められている。
このような中、アジア栄養学会議は、アジア栄養学会連合(FANS)により4年に一度開催される国際学会で、これまで11回アジア各国で開催されている。我が国では、1987年に大阪市で開催された第5回アジア栄養学会議についで、28年ぶりの開催となる。この間、アジアの新興国において、急速な都市化、経済発展・グローバル化に伴って、食事やライフスタイルに大きな変化が起こり、同じ国内、同じコミュニティ内に栄養不良と栄養過多が共存する状況が顕在化してきた。日本は第二次世界大戦後の栄養不良を克服して長寿国となった一方で、栄養過多により引き起こされる生活習慣病に対し栄養科学・食糧科学の研究成果を生み出してきた。2015年に再びアジア栄養学会議を開催することで、日本の当該分野での先取性・リーダーシップをアジア地域に発信することが期待された

(2) 会議開催の意義・成果:
日本で開催された第12回アジア栄養学会議では、栄養科学と食糧科学の専門家がアジア各国から集い、学術的知見・情報交換を行うことによって、それらの成果を本国へ持ち帰り、実践へ移し、各々の国での栄養と食糧に関する諸課題の解決へと発展させることにつながった。

(3) 当会議における主な議題(テーマ):
具体的に実施内容を紹介すると、栄養科学および食糧科学の最新の研究成果について、シンポジウム等の講演と口頭やポスターでの一般演題発表、および、ランチョンセミナー&イブニングセミナーでの軽食をとりながらの講演会があった。アジアを中心とする世界各国の先端の研究者が5日間の会期中に情報交換を行うことで、食や健康に関連する学問の進展に大きく寄与した。会議テーマは、「みんなの健康長寿のための栄養と食糧」 (Nutrition and Food for Longevity: For the Well-being of All)であり、“基礎栄養学・食品科学”および“実践栄養学”の分野で発表が行われた。

(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
一般講演の発表者のうち、海外からの若手の優れた発表者41名にトラベルアウォードを授与し、渡航費や参加費を援助した。また口頭発表に選ばれた若手の発表者から20名をヤングインベスティゲーターアウォードとして表彰した。さらにポスター発表者から9名にポスター賞を授与した。これにより、アジアにおける栄養学分野若手研究者を奨励することに貢献できた。
アジア栄養学会議でのシンポジウムで討論された内容は、学術会議の論文集として、英文誌”Journal of Nutritional Science and Vitaminology”(栄養科学・ビタミン学雑誌)の増補版として出版され、同内容がウェブ上で無料公開されている。このように栄養科学並びに食糧科学に関する研究成果および関連情報を、学術雑誌の編集・発行や様々な媒体を用いた広報活動を通じて、各国の研究者及び世界の人々に提供し、栄養・食糧学に関する正しい知識の普及を図ることによって、国際社会における生活の質の向上に貢献する。

(5) 次回会議への動き:
当会議の成果を踏まえて、次回第13回アジア栄養学会議は2019年8月4日から9日までインドネシアのバリ島で開催される。テーマは、“Nutrition and Food Innovation for Sustained Well-Being“であり、今回の長寿と健康をメインに据えた会議の成果を踏まえて、さらに長期的な視野での議論が期待される。組織委員長はDr. Hardinsyah(Bogor Agricultural University)である。なお、第22回国際栄養学会議(International Congress of Nutrition)は2021年に日本で開催されることが決まっており、今回のアジア栄養学会議での経験を十分に活かすことができると考えられる。

(6) 当会議開催中の模様:
・基調講演、教育講演、シンポジウム、一般発表(口頭・ポスター)などが活発に行われた。
・開会式:国立大ホールにて、開会にあたり750名が参加し、式が滞りなくなされた。日本学術会議を代表して井野瀬 久美惠副会長から挨拶がなされ、わが国におけるACN開催の意義などが紹介された。同日コンフェレンスセンターのホールで立食にて行われたウェルカムパーティーは超満員となった。
・コングレスディナー:約615名が着席し、和太鼓演奏、主催者、来賓の挨拶など和やかに催された。
・展示会:59社/団体が展示ホールAにて、情報提供・研究開発紹介・飲料提供などを実施した。
・市民公開講座:364名の満席となる参加者を集めて、”健康寿命の延伸“について3題の講演が行われた。
・閉会式:第22回国際栄養学会議へ向けてのポスター賞の表彰。次回のインドネシア・バリ島での開催に向けて閉幕した。
・教育ツアー:介護保健施設、学校給食、食品工場の3つのコースを設定し、海外の参加者に日本の取り組みを紹介した。


(7) その他特筆すべき事項:
当該会議は、日本の他にアジア栄養学会連合(FANS)に所属する3ヶ国が開催の意思を表明していた。国内の関連団体のサポート体制のもと、加盟国への支援要請などを地道に行って誘致の準備を行ってきた。2009年のFANS総会において4ヶ国からのプレゼンテーション後に投票が行われたが、1回の投票で日本開催を勝ち取ることができた。
日本での開催にあたって、日本学術会議との共同主催が実現したことに加え、厚生労働省、内閣府食品安全委員会、農林水産省、文部科学省、神奈川県、横浜市、21の関連学協会にも後援をいただくことができた。


3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:2015年5月16日(土)
(2)開催場所:パシフィコ横浜会議センター502会場(神奈川県横浜市)
(3)主なテーマ:「健康寿命の延伸」
(4)参加者数、参加者の構成:364名(男性:158名、女性:206名)。教育関係(16%)、学生(10%)、食品関連企業(9%)、それ以外の企業(8%)、研究機関(4%)、公務員(4%)、その他(49%)
(5)開催の意義:氷河や社会的な注目度の高い海氷研究、北極の民俗や社会、人々の暮らしぶり、そして北極研究の意義や様子を広く伝える。
(6)社会に対する還元効果とその成果: 当初は200~300名程度の参加者を予想していたが、当日はそれを上回る364名の参加者があり、ほぼ半数を占めたのは一般の方々で、特に高齢者の健康や栄養に対する関心度の高さが伺えた。質疑応答も活発で、終了後も演者に質問をする複数の参加者がおり、受付において知人に講演内容を紹介するためのパンフレット送付を希望する参加者もいたことから、本講座による社会に対する還元性については一定の成果を挙げたものと思われる。開催にあたり工夫した事項として、多方面へのカラー刷りチラシ(健康的なイメージの高齢者の写真を掲載した)配布、新聞、雑誌等への広告掲載を行い、周知した。また、講演者として、栄養学、食生活、運動の面から健康寿命の延伸を示唆出来る専門家を3名選定し、あらかじめ内容の要旨を掲載したパンフレットを作成し、参加者に配布した。
(7) その他:

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
日本学術会議との共同主催となったことにより、日本栄養・食糧学会の会員以外の国内の研究者の参加が多くなった。これには日本学術会議の広報媒体を通じての効果も大きいと考えられる。市民公開講座は満員の盛況となったことも、共同主催の大きな成果といえる。また、開会式での井野瀬副会長からのご挨拶により、わが国が栄養と健康の研究に全力を注いでいることを海外からの研究者に強くアピールすることができ、今後の当該領域において日本がリーダーシップを取っていくための礎となった。
さらに、日本学術会議はFANSの上部組織である国際栄養学連合(IUNS)の加盟団体となっているが、IUNSが4年に一度開催する国際栄養学会議(ICN)の2021年の会は日本が誘致に成功している。今回のACNが共同主催となったことは、2021年ICNの成功に向けて日本が早くから本気で取り組んでいることを示す効果もあった。


(開会式) (表彰式) (コングレスディナーでの鏡開き)
(教育ツアー風景) (ポスター展示) (市民公開講座)
(舞妓さんとの写真撮影) (閉会式)




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