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第16回国際嗜癖医学会年次学術総会 開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第16回国際嗜癖医学会年次学術総会
         (英文)16th International Society of Addiction Medicine Annual Meeting (ISAM2014)
(2)報 告 者 :第16回国際嗜癖医学会年次学術総会 会長 樋口 進
(3)主   催 :独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター、日本アルコール関連問題学会、日本学術会議
(4)開催期間 :2014年10月2日(木)~ 10月6日(月)
(5)開催場所 :パシフィコ横浜 会議センター(神奈川県横浜市)
(6)参加状況 :43ヵ国 447人(国外278人、国内169人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
国際嗜癖医学会年次学術総会は、国際嗜癖医学会(International Society of Addiction Medicine:ISAM)が毎年開催する会議であり、1999年の第1回から当学会で16回を迎える依存・嗜癖問題を国際的かつ包括的に扱う世界で唯一の学会である。日本での開催は、2010年10月にミラノで開催された国際嗜癖医学会年次学術総会において、第16回学術総会を2014年10月に日本で開催することが決定された。これを受け、日本アルコール関連問題学会は、日本開催準備のために、第16回国際嗜癖医学会年次学術総会組織委員会を2011年に設置し、開催の準備を進めることとなった。

(2) 会議開催の意義・成果:
世界で深刻な社会・医学問題になっているアルコール・タバコ・薬物などの依存症、ギャンブルやインターネット嗜癖など多様な依存・嗜癖に共通する、あるいは特異的な問題に光をあて、嗜癖(依存)の予防、病態解明、治療の発展に貢献することを目的としている。

(3) 当会議における主な議題(テーマ):「神経行動学の統合」
「ADDICTION: Issues for the Next Decade, 嗜癖: これから10年の課題」

(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
「ADDICTION: Issues for the Next Decade, 嗜癖: これから10年の課題」をメインテーマとし、深刻になりつつある嗜癖分野の各国のこれまでの取り組みや今後の課題など幅広い議論が交わされた。また、日本で開催することにより、アジア諸国からの参加を促し、さらにはこの分野の若手医師に世界の多くの臨床医と直接交流する機会を与え、日本並びにアジア諸国の嗜癖分野に関する知識と臨床経験を一層発展させる契機となった。また、発表された抄録の中から、ISAM Award for Best Abstract 2014とThe President’s Young Investigator Awardを選出するなど、若手医師など積極的に学会に参加し発表や議論をするよう促した。予期せぬ台風の到来があったにもかかわらず、参加者からは、各種の講演、シンポジウムの全てが非常に良く企画されているとの評価を頂き、非常に好評のうちに終了する事が出来た。

(5) 次回会議への動き:
2015年10月5日~10月8日 スコットランド ダンディーにて開催
   メインテーマ:‘Addiction: From Biology to Recovery- Translating research evidence to improve clinical practice and community resilience’

(6) 当会議開催中の模様:
会期中、9つの基調講演、45のシンポジウム、15の一般演題セッションとポスターセッションが行われた。中でも、各国の依存関連の専門機関や大学から講師を招き行われた基調講演は、多くの注目が集まった。まず、米国立アルコール症研究所のKoob所長から、依存のメカニズムに関する講演があった。さらに、WHOのPoznyak調整官より新しい診断ガイドライン作成の経過が報告された。また、わが国 のアルコール医療の歴史(斎藤札幌医大名誉教授)、薬物依存の遺伝的研究(曽良神戸 大学教授)、HIVと依存の関係(Khalsa米国薬物依存研究所課長)などの発表があった。シンポジウムでは、特に行動嗜癖や薬物依存に関するシンポジウムの人気が高かった。

(7) その他特筆すべき事項:
国際嗜癖医学会は、毎年世界の各都市で開催されているが、これまでの16回の開催の中でアジアにて開催されたのは、前回2014年のクアラルンプールと今回の日本開催のみとなる。日本及びアジア各地での薬物依存問題などを鑑みると、日本での開催の必要性や重要性が高く評価されたものと考える。また、日本での開催により、アジア各地からの参加者の増加や、これまで嗜癖分野にあまり光を当ててこなかった国々においても、深刻になりつつある本分野の研究や今後の取り組みに対して、警鐘を鳴らす役割を担うことができた。


3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:2014年10月5日(日)
(2)開催場所:パシフィコ横浜 会議センター(神奈川県横浜市)
(3)主なテーマ:人はなぜ依存になるのか
(4)参加者数、参加者の構成:約90名 主に横浜市在住の一般市民
(5)開催の意義:ニュースでも連日取り上げられる機会が増えた「依存」や「依存症」という言葉。人間は、なぜ何かに依存してしまうのか?依存はいけないことなのか? 自覚症状のないまま、気づいた時にはやめられなくなっている「依存」という症状や状態について、より身近に感じられるようになってきた昨今、不安に感じている方々も増えているのも事実。もしかしたら自分も何かに依存しているのではないか、いつから「依存」が「依存症」という病に変わるかや、身近にそういう方がいるなど、日常感じる漠然とした不安などを、講座を通して、正しい知識をもち、理解を深めるきっかけ作りとなることが今回の市民公開講座の目的であり意義である。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
国際嗜癖医学会は2年前の第14回大会までは、欧米の様々な都市で開催されており、上記、2-(7)でも記したように、日本開催は初めてである。そのため、これまでは、欧米での薬物やアルコール依存について主に議論されてきたという背景があるため、日本での認知度は高いとは言えない状況だった。また同時に、国内の取り組みを世界へ発信し、嗜癖医学分野の若手医師と世界中の専門医との意見交換の場を広げていくことも必要とされていた。日本での開催が決まった当初より、国内の参加者より知名度の高い海外からの参加者の方が多いと想定していたが、日本学術会議との共同主催となったことで、国際嗜癖医学会(ISAM)の認知度向上の一翼を担っていただけたことは、成果といえるのではないかと思う。また、今回の日本開催をきっかけに、来年のスコットランドでの2015年大会へ発表の場が広がっていくことを期待する。


(主催者挨拶を行う大西隆日本学術会議会長) (セッション風景1) (セッション風景2)
(主催者挨拶を行う大西隆日本学術会議会長) (セッション風景1) (セッション風景2)

(ポスターセッション風景1) (ポスターセッション風景2) 
(ポスターセッション風景1) (ポスターセッション風景2) 



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