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第15回国際伝熱会議 開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第15回国際伝熱会議
         (英文)15th International Heat Transfer Conference (IHTC-15)
(2)報 告 者 :第15回国際伝熱会議組織委員会委員長 笠木 伸英
(3)主   催 :公益社団法人日本伝熱学会、日本学術会議
(4)開催期間 :2014年8月10日(日)~ 8月15日(金)
(5)開催場所 :国立京都国際会館(京都府京都市)
(6)参加状況 :43ヵ国/地域・1,177人(国外849人、国内328人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
国際伝熱会議は、国際伝熱会議協議会(The Assembly for International Heat Transfer Conferences:AIHTC)が4年ごとに開催する会議であり、1951年の第1回から当会議で15回を迎える伝熱学分野で最も歴史と権威のある国際会議である。2006年8月に開催された国際伝熱会議協議会において、第15回国際伝熱会議を2014年8月に日本で開催することが決定された。これを受け、日本伝熱学会は、日本開催準備のために、第15回国際伝熱会議組織委員会を2010年に設置し、開催の準備を進めた。日本での開催は第5回以来40年ぶり2回目である。

(2) 会議開催の意義・成果:
この会議を日本で開催することは、とりわけ最先端の省エネルギー技術を通じて地球環境問題対策でも世界を先導してきた我が国の科学技術水準の高さを全世界の研究者に大きくアピールすることができ、多くの研究者の参画を促す絶好の機会となるとともに、我が国のこの分野の科学者に世界の多くの科学者と直接交流する機会を与えることとなり、我が国の熱および伝熱の科学技術に関する研究を一層発展させる契機となった。また、市民を対象とした公開のプレコンファレンス講演会を行うことにより、科学に関する一般社会の興味を大いに高めることができた。

(3) 当会議における主な議題(テーマ):「The Role of Thermal Science in Meeting Societal Challenges」
申請時メインテーマは「熱の科学と工学─その可能性と国際的責任─」であったが、その後さらなる検討を加え、最終的には「The Role of Thermal Science in Meeting Societal Challenges」とした。

(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
会議では世界のトップレベルの研究者が一堂に会し、熱および伝熱に関する学理に関する全世界の最新研究成果について情報交換することにより、その科学を深化させるとともに新たなフロンティアを開拓した。また、熱および伝熱が関与する最新の技術を応用することにより、人類が直面しているエネルギー問題・地球環境問題・各種工業製品製造技術開発・医療・ライフサイエンス・宇宙開発などのあらゆる重要事項に光をあて、それらの解決策を提供するとともに一層の発展を促すための情報交換の場となった。さらに、とりわけ我が国を中心とするアジア地域の熱および伝熱に関する学術関係者のネットワーク強化や次世代に向けた人材育成のための絶好の機会ともなった。
しかしながら何といっても今回最大の成果は、吉川弘之元東京大学総長によるPlenary Lectureと、それを受けて企画されたPlenary Panel(モデレーター:笠木伸英)において、狭い専門に留まらず工学として社会にどのようにかかわるかという本質的な議論を深めたことであろう。これは、従来の国際伝熱会議では取り上げられなかった最重要問題に、日本のメンバーが新たな方向性を示した画期的な成果と言っても過言ではない。

(5) 次回会議への動き:
次回の第16回国際伝熱会議は、4年後の2018年8月に中国・北京市で開催されることが決定している。また、第17回国際伝熱会議は、8年後の2022年8月に南アフリカ共和国・ケープタウン市で開催されることが、会期中に開催された国際伝熱会議協議会で決定した。

(6) 当会議開催中の模様:
開催プログラムは、以下の通りである。

会議日程 午 前午 後
8月 9日(土)市民公開セミナー
8月10日(日)参加受付開始 ウェルカムレセプション
8月11日(月) 開会式、プレナリー・キーノートセッションパラレルセッション
8月12日(火) キーノートセッション、パラレルセッションキーノートセッション、パラレルセッション
8月13日(水) パラレルセッション国際伝熱会議協議会開催
8月14日(木) パラレルセッション、パネルセッションキーノートセッション、プレナリーパネルセッションバンケット
8月15日(金) キーノートセッション、パラレルセッションパラレルセッション、閉会式

本会議に先立つ8月9日には一般市民向け講演会および高校生・高専生を対象としたジュール・エネルギーコンテストの二つの市民行事が開催された。9、10日は台風11号通過の影響を強く受けることとなったが、11日以降は順調に推移し、最後まで多くの参加者が続いた。開会式直後の吉川弘之先生による特別講演“Science of Scientific Advice”を受けて、4日目にはプレナリーパネルセッション“The Role of Thermal Science in Meeting Societal Challenges”が企画された。同日には世界の共有する具体的課題として原子力を取り上げ、“The Role of Thermal Science for Nuclear Disaster Resilience”と題するパネルセッションも実施された。29件のキーノート講演、699件の一般発表はすべて口頭発表で行われた。4日目の会議バンケットにおいては、Begell Medal、Kern Award、Luikov Medal に加え、日本伝熱学会の国際賞であるNukiyama Award の授賞式が執り行われた。自由時間であった3日目午後には、若手研究者のネットワーク構築を目的として企画されたYoung Researchers Meetingが実施された。16カ国から67名の参加があり、京都御所見学とそれに続く交流イベントは大いに盛り上がった。

当会議のHP http://www.ihtc-15.org/index.html には、会議中および会議後に取り纏めた書類や写真等きわめて多数の情報がアップロードされているので参照されたい。

(7) その他特筆すべき事項:
招致競争自体は、開催8年前の2006年8月シドニーで開催された第13回国際伝熱会議での国際伝熱会議協議会において中国と一騎打ちとなったが、日本の実力が正当に認められたこともあり大差で決定した。ただ、その後いちばん苦労したのは、1974年の第5回国際伝熱会議(東京)を最後に、論文数増加のため不可避的にポスター発表中心となっていた会議の形態を再び全口頭発表に回帰させるための説得および実現に伴う諸困難の克服であった。
さらに、国際会議での発表論文が論文誌に比べて速報性はあるものの完成度が低く質的に劣るものという一般通念が広まる中、Begell House社と協力して過去からのProceedingsを電子ファイルでアクセスできるようにアーカイブ化し、かつ今回の会議論文の査読強化を徹底するよう編集方針を決定し国際科学委員会を日本メンバーがコントロールしたことも特筆される。この結果、合計700編を上回る質の高い論文のみを受け入れることができ、質・量ともに中心会議としての位置づけを確保できた。

(主催者挨拶を行う春日文子 日本学術会議副会長) (開催の挨拶を述べるAIHTC President Abram Bar-Cohen教授) (吉川弘之先生によるPleanary Lecture)
(主催者挨拶を行う春日文子 日本学術会議副会長) (開催の挨拶を述べるAIHTC President Abram Bar-Cohen教授) (吉川弘之先生によるPleanary Lecture)

(開会式後の集合写真) (一般セッションの様子)
(開会式後の集合写真) (一般セッションの様子)

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:2014年8月9日(土)13:00 - 17:00
(2)開催場所:国立京都国際会館 D室
(3)主なテーマ、サブテーマ:
一般市民向け講演会:21世紀のエネルギー革命
  講演題目:「地球温暖化対策のための太陽光エネルギーのマネージメント」
  講師: Brian E. Launder教授
コンテスト:ジュール・エネルギーコンテスト(JENECON)
  「ろうそく炎によるウェイトリフティング
   ~ 熱エネルギー利用の永遠の課題に対する小さな炎の挑戦 ~」
   http://www.ihtc-15.org/jenecon/index.html
(4)参加者数、参加者の構成:60名、高校生から大学生の若い世代が約半数。
(5)開催の意義:全世界規模の国際会議ならではの超一流の外国人研究者による貴重な講演と若い世代の活力に満ちたコンテストとが2本立てで企画され、双方向的に行われたことの意義は大きい。おそらくこのような構成こそ、国際会議付帯行事として理想のものであったと自負する次第である。
(6)社会に対する還元効果とその成果:これからの日本を支える若い世代に焦点を当て、高校生や高専生に熱エネルギーに関する科学技術と対峙させたことの教育効果は計り知れない。しかも開催地の京都周辺だけでなく遠くは九州や四国の学校も参加したことは、まさに日本社会に広くその影響を及ぼしたとも言える。

(7)その他:JENECONでは、ろうそくで世界的に有名なカメヤマキャンドルハウスからの副賞協力もいただいた。
4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
 言うまでもなく、日本という国家としての世界的貢献を常に意識することにより、自分達の狭い専門領域に留まらず今回の国際会議をいかに世界に向けて位置づけるかということを最優先に考えて企画準備することができた。


(ジュール・エネルギーコンテスト参加者・関係者集合写真)
(ジュール・エネルギーコンテスト参加者・関係者集合写真)



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