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第26回有機金属化学国際会議 開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第26回有機金属化学国際会議
         (英文)26th International Conference on Organometallic Chemistry(ICOMC)
(2)報 告 者 :第26回有機金属化学国際会議組織委員会委員長 高橋 保
(3)主   催 :日本化学会、日本学術会議、国際純正応用化学連合(IUPAC)
(4)開催期間 :平成26年7月13日(日)~7月18日(金)[6日間]
(5)開催場所 :ホテルロイトン札幌(北海道札幌市)
(6)参加状況 :31ヵ国・1,170人(国外358人、国内812人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
有機金属化学国際会議(International Conference on Organometallic Chemistry) は、有機金属化学分野で最も歴史のある国際会議であり、1963年の第1回からほぼ2年ごとに開催され、本会議で26回を迎える。2008年に7月にフランス、レンヌ市で開催された有機金属化学国際会議理事会 (advisory board member meeting) において、第26回有機金属化学国際会議を2014年7月に日本で開催することが決定された。本会議の日本での開催は1977年以来、37年振り2回目である。有機金属化学及び関連学術分野、さらには有機金属化学に基づいた各種ものづくりに体表される産業において、日本の存在感がきわめて高いこと、開催計画が十分に準備されていえうころなどの理由によって、本会議が決定された。これをうけ、2010年に開催準備委員会が発足し、2011年に第26回有機金属化学国際会議組織委員会を正式に設置し、本格的な準備を開始した。日本化学会、国際純正応用化学連合(IUPAC)の主催のもと、多数の関連学会の共催、協賛を得、日本学術会議の共同主催を申請した。会議の骨格を定めるとともに、会議における具体的な活動の準備についても、国内外の有識者との情報交換や連携をとりつつすすめた。
以下にも述べるように、本会議は表記の日時、場所で開催され、多くの海外参加者から学術プログラム面、国際交流、若手研究者育成、等の面で学術への貢献が大きいとして高い評価を受けた。国内外の企業からも参加を得、有機金属化学分野を中心にする広い学術、技術の発展に伴う、新しい国内、国際間での産学連携の契機となった。このように、本会議によって、有機金属化学、関連学術、産業との世界規模での情報交換や人的交流を達成することができた。

(2) 会議開催の意義・成果:
有機金属化学は最近の半世紀のノーベル化学賞の多くに直接または間接的に関連している重要な分野であり、化学の中心に位置する学術といえる。金属と炭素との結合をもつ有機金属化合物が、多様な結合、構造をもつ一方で、特異な反応性を示すため、旧来の有機化学、無機化学がいずれもなしえなかった新しい成果をうみだしてきた。一方では、有機金属化学が関連分野、有機合成化学、高分子科学、触媒開発、材料開発、デバイス形成等、へ著しく進展しているため、その研究者が極めて多数となり、分野の核となる情報を発信できる研究集会が強く求められていた。とりわけ、有機金属化学を中心とする化学の研究が多数の国で活発に行われている現状では、国際会議の場で、人的な、あるいは情報の交流を行うことが重要であるとされてきた。有機金属化学が20世紀後半に爆発的に発展した経緯から、20世紀にはこの分野の研究者が活躍している国の数は限られていた。しかし、2000年以降、東アジアをはじめとする、従来研究者が少なかった地域で研究が活発化し、西アジア、南米、アフリカの各国で多くの研究者によって、高い水準の有機金属化学の研究は展開されている。本会議は、このような最近の状況をふまえ、日本の研究者がリーダーシップをもって有機金属化学分野の研究者の情報交換、研究の方向性策定、国際連携、産学連携、をすすめることを目的として開催した。
本会議の学術プログラム内容は参加者より高く評価された。全体講演、基調講演、招待講演、分科会講演における招待講演者の選出にあたっては、組織委員会で十分に議論し、研究実績にすぐれた研究者と将来性の高い研究者の両方を講演者とした。ノーベル賞受賞者をはじめとし、有機金属化学及び関連する分野での世界の第一人者、及び今後大きな成果をあげることを期待される若手研究者、女性研究者を配した。その結果、会議に参加した日本をはじめとする多くの国の若手研究者、大学院博士学生が世界の学術の最先端を知ることができ、一方では著名な研究者の講演を通して、その研究手法や人柄にまで直接ぐれる機会を得た。このことは、今後成長が期待される若手の研究者へ、自身の研究の指針や研究活動に新たに取り組む勇気をあたえることとなった。
従来、一連の本国際会議では、招待講演者が金属錯体の基礎分野の研究者に集中することが多かったのに対し、今回はヨーロッパ、米国、東アジアで活躍する有機合成、触媒の研究を多く招待講演に選んだ。有機合成、触媒は今後の世界の材料、エネルギー、環境問題への対応に必要な物質をつくるために重要であり、有機金属化学の今後のすすむべき方向として重要であり、上記の選択は多くの参加者から賛同を得た。
招待以外の一般講演者の講演やポスター発表の研究水準も大変高く、最近の本国際会議及び関連する会議に比べて特筆すべきであった。この大きな理由は多数参加した日本の研究者、特に若手研究者や大学院生の多くの研究が有機金属化学や関連学術に広範にわたるものであり、世界のトップレベルにあることである。このような日本の研究者、特に若手研究者の活動のプレゼンスを海外の参加者に示すことができたのは大変重要であると理解している。

(3) 当会議における主な議題(テーマ):
「有機金属化学の発展と使命」をテーマとして講演プログラムを作成した。有機金属化学の研究が広い分野で発展を遂げている現状で、最新の研究成果を集積することによって本国際会議の学術上の水準を高めることをめざした。一方では、材料、エネルギー、環境の人類が直面している問題の対策として重要な基礎学術、技術としての有機金属化学の役割が参加者に意識できるようにした。

(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
日本は従来、現在、そして今後も、有機金属学術の世界最高水準を競う国としての地位を保ち、有機金属化学を基礎においた産業の発展の面でもプレゼンスが大きい。このような国の研究者が先導して本国際会議を組織、運営したことは世界の有機金属化学の研究者に十分に認識されたことと考える。 関連分野、特に材料、エネルギー、医療の分野への展開を図る研究者、技術者に改めて本分野の研究活動の重要性を示すことができた。
国際会議の運営で、日本での会議が優れていることは分野を問わずよく知られることであるが、今回は特に講演会の技術面で努力、配慮を行った。口頭講演の設備、映写、準備を遅滞なく行うシステムを会場に依頼し、一部は国内学会所有のシステムを導入して、講演をすすめ、これによってプログラムを精確に進行させることができた。また、講演時間、、講演内容が会場、講師両方から見えるシステムを導入し、すべての参加者に講演内容が明確にわかるように工夫を行った。これらの設備や開催のノウハウは今後の海外での国際会議にも生かされていくことと期待される。
今回の会期中(7月15日)に開催されたAdvirsory board member 会議において、これらの開催が確認され、同時に今回の札幌での会議の開催が大変成功裡に行われたこと、学術プログラムが大変すぐれた内容であたこと、運営上も本国際会議の品位を大きく保つことができたことが指摘され、今後の会議についてもこれが踏襲されるように、との発言が海外のメンバーからでてきた。

(5) 次回会議への動き:
有機金属化学国際会議は次回第27回国際会議をオーストラリアメルボルン市で、28回国際会議をイタリアフィレンツェ市で開催することが内定している。次回の開催要領について確認がおこなわれ、2016年オーストラリアメルボルン市で開催されることが正式に決定した。さらに、2020年の第29回国際会議については、本会議会期中のAdvirsory board member 会議で議論された。複数の開催地候補国代表が開催についてプレゼンテーションをしたのち、慎重な審議と投票の結果シンガポールが第一位となり、開催が内定した。
有機金属が学は欧米、特にヨーロッパにその源流があり、本会議開催もヨーロッパを中心に考えられてきたが、2010年の台北、2014年の札幌、さらには上記の開催予定をみれば、特定の国や地域に偏ることなく、世界各所でこの分野の研究が発展していることが明らかである。

(6) 当会議開催中の模様:
平成26年7月13日に本国際会議が開催された。これに先立って、仙台、東京、福岡でプレシンポジウムが開催され(世話人飛田教授、穐田教授、永島教授)、本国際会議の全体講演者、基調講演者、招待講演者が分散してこれらの会議に参加して講演を行った。日本の有機金属化学分野の講演者との講演交流などを含めて、著名な海外の研究者との交流の場を提供した。
13日(日)午後には、本国際会議主催の市民公開講座「未来を拓く科学と技術」を開催した。詳細は次項にまとめるが、著名な三名の日本人研究者を講師として招き、化学及び関連の専門分野の話題とこれらの学術が社会に責任をどのようにはたしていくか、化学の研究の魅力、などの様々な視点からの講演が行われ、聴衆からの質問、講演者からの回答や議論を交えて成功裡に終了した。夕刻より国際会議のレセプションがホテルロイトン札幌で開催された。出席する海外研究者の多くが夕刻までに会場に到着し、くつろいだ雰囲気の中、議論や情報交換を行った。この中で
14日(月)は午前9時より開会式でプログラムが始まった。通例の順序によって、組織委員長、国際会議事務局長Hahn教授(ドイツ)、IUPAC副会長巽和行教授の挨拶があり、日本学術会議副会長春日文子博士より共同主催者としての挨拶が述べられた。学術会議の歴史や日本での学術を先導していること、最近の世界規模での活動についての内容は、国内外の研究者に認識を新たにさせるものであった。主催団体である日本化学会副会長西原寛教授より挨拶と日本化学会の国際事業と近年装いを新たにして注目を集めている論文誌発刊活動が案内された。来賓として札幌市副市長秋元克広氏の挨拶の後、内閣総理大臣の本国際会議によせるメッセージが読み上げられた。
開会式終了後、米国根岸英一教授による全体講演があり、パラジウム、銅錯体を用いて極めて高い選択性での有機合成反応の開発、特に立体選択的な合成反応開発が報告された。ノーベル化学賞受賞以降の最新の成果も多く触れられており、最近の研究を知ることができた。引き続くBraunschweig教授による全体講演では、最近新発見が続いている有機ホウ素化合物の結合、構造、反応をまとめた発表が行われた。12時から昼食を含めて口頭講演を中断し、参加企業、団体による企業紹介をかねたランチョンセミナーが行われた。12時半から2時半までポスター展示が会場のロビー等で行われ、若手参加者の発表とこれに対する討論が活発に行われた。2時半より4つの分科会に分かれて、A会場では前周期遷移金属、典型元素の有機金属化合物を主題にして基調講演、分科会講演、一般講演が行われた。Erker教授による基調講演ではジルコニウム錯体を用いた気体小分子の活性化反応のすぐれた結果が紹介され、続くShima博士によるチタン錯体の窒素活性化の発表とともに、大きな反響を得た。B、C,D会場では招待講演、分科会講演、一般講演が並行して行われた。いずれも有機遷移金属化合物の反応や触媒作用に関するものであったが、近い領域の講演を会場ごとに集めたため、どの会場も多くの聴衆があった。
15日(火)は午前より、4会場に分かれて基調講演、招待講演、分科会講演、一般講演を行った。A会場の基調講演ではChirik教授(米国)がユビキタス元素である鉄錯体が反応性に富み、安定な炭素―水素結合を開裂して官能基化する、という研究内容を多くの実験結果に基づいて発表した。同時にD会場で行われた田中の招待講演では新しい手法でらせん構造化合物を選択的に合成する、という価値の高い成果を発表した。同じ会場では西原教授と次回開催地の責任者であるHumphrey 博士が、それぞれジチオレン金属平面を拡張したナノシートの構造と物性について、有機金属錯体を用いる非線形光学材料についての招待講演を行った。これらの講演とあわせて行われた材料分野における一般講演は有機金属化学の可能性を示すものであった。前日と同様に、昼食、ランチョンセミナー、ポスター発表が昼の時間を利用して行われ、参加者は休むことなく議論を重ねた。会場内には国内、国外のスポンサー企業や学会がブースを用意して、講演の合間の参加者との情報交換やビジネスを行っていた。また、外国人参加者の家族のためのプログラムを用意し、女性の和服着付けや茶道教室を行い、日本文化にふれてもらように努めた。
午後には四会場にわかれての口頭講演が6時過ぎまで続いた。海外の参加者のために、札幌地区のローカルフードレストランにバスで招待した。
16日(水)は香港のYam教授の全体講演が午前に行われた。同氏は白金をはじめとする各種遷移金属錯体の光特性の研究を一貫して行ってきた世界を代表するこの分野の助成研究者である。最近はさらに研究領域を拡大し、ソフト材料への展開もすすめている。今回の講演内容は新しい光機能材料としての有機金属錯体の性質を示すものであった。その後四会場にわかれて、招待講演、分科会講演、一般講演がパラレルに行われた。岩本(東北大)による一般講演ではケイ素アセチレンを配位子とする遷移金属錯体の合成と構造が発表され、従来にない例の有機金属化合物の生成が大きな反響をよんだ。午後は、本会議の通例にしたがってエクスカーションを企画した。札幌市内-小樽、昭和新山の二つのコースを用意して希望のコースに参加をしてもらった。海外の参加者が多かった。
17日(木)の午前のプログラムは、Fryzuk教授(カナダ)の全体講演で始まった。基礎的な錯体化学の研究の中から、人類の夢である空気中の窒素を活性化する研究のこれまでの成果をまとめた内容であった。将来、空気を原料にして含窒素有用化合物を合成する可能性も興味深かったが、新規性の高い研究成果が参加者に強く訴えた。
以後の午前と午後は四会場にわかれ、基調講演、招待講演、分科会講演、一般講演を行った。Madalluno教授(米国)の基調講演は、初日の根岸教授が以前に見出したカルボメタル化反応に関する内容であったが、近年の進展は目覚ましく、これまで不可能とされていた選択的な反応を見出し、合成反応に応用するという点で見事な内容であった。招待講演のOestreich教授(ドイツ)は、有機ケイ素化合物やホウ素化合物と遷移金属錯体との組合せによって新しい結合の形成や新構造分子の生成を報告しており、今後の発展が期待された。一般講演では、中沢(阪市大)による鉄錯体を使った新反応の発表が注目を集めた。安定な二重結合を開裂して脱硫黄反応を行うこと自体、容易ではないが、資源、環境の面から最も好ましい鉄錯体を用いてこれを達成したことは評価に値する。さらに、最後のポスタープログラムが夕方に行われ、多数の参加者がポスターの発表や議論に参加していた。
夕刻は、会場であるロイトン札幌の会議室を使ってバンケットを開催した。学術上のデイスカッションも含めて活発な交流が行われた。バンケットの途中で次回開催地であるオーストラリアメルボルンでの会議準備状況の紹介が行われ、引き続いて多くの参加者によって活発な会議にしたい、との抱負が述べられた。
18日(金)の午前プログラムは四会場にわかれて基調講演、招待講演、分科会講演、一般講演を行い、その後全体講演としてCarreira教授による全体講演が行われた。通常の国際会議では1週間の会期のうち、後半は講演聴講者が大きく減ることが多いが、今回の会議では閉会式の時点まで多数の参加者が講演を聴講し、質問や議論を行っていた。これは一般講演者を含めて講演者を厳選し、質の高い学術プログラムを提供したことが一つの原因である。閉会式では、ポスター優秀者が発表され、賞状をそれぞれに渡すとともに、次回の会議での再会が約束された。
会期終了後、招待講演者の一部は岡山、大阪のポストシンポジウム(世話人高井教授、真島教授、生越教授)の招待講演者としてそれぞれの場所で日本の若手研究者との交流につとめ、帰国した。

(7) その他特筆すべき事項:
本国際会議が主眼とする有機金属化学分野の研究は1960-80年代にまずヨーロッパで、次いで米国、日本で大きく発展した経緯があり、歴史的な理由でヨーロッパ各国での開催が強く要請されてきた。一方、21世紀にはいってから日本以外のアジア諸国における本分野の研究の進展が著しく、一部の国では政策として国際会議を誘致することもあるため、これらでの開催要請も高い。しばしば、このような競争では、会議地周辺の観光地などまで含めて開催をアピールする場合も見受けられる。
本来、会議を開く主旨は学術の発展であり、今回幸いにも開催が実現し、多くの支援を得られたように、学術プログラムの充実が招致にあたっても重要であることは間違いない。最近重視されていることとしては、安い宿泊施設の提供など学生が参加しやすい環境が整っているか、招待講演者をはじめ、会議の重要メンバーの男女比や国別の比率の調和がとれているか、という点である。本会議の開催にあたっては、この点を配慮したものの、他の点に比べるとやや不十分であったきらいがみられる。関係者の今後の学術活動、国際交流活動に活かしたいと考えている。


3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成26年7月13日(日)
(2)開催場所:ホテルロイトン札幌
(3)主なテーマ:未来を拓く科学と技術
(4)参加者数、参加者の構成:参加者数は220名であった。うち、約50名が国際会議参加者であり、170名が札幌市民であった。
(5)開催の意義:本国際会議は専門家を対象として英語で行われる。一方、有機金属化学についての会議があることを理解してもらえた。本国際会議は有機金属化学分野を対象とするものであったが、本市民講座は学術分野にあまりとらわれず、ものづくり、環境保全のための現在の重要な科学と技術について講演会を行った。講師のおひとりである北海道大学名誉教授鈴木章先生は、有機金属化合物を用いたカップリング反応の開発の業績でノーベル化学賞を受賞されており、本国際会議で全体講演をしていただくべきところではあったが、本国際会議と札幌市との関連や先生御自身の意向も考慮して国際会議特別講演講師として市民講座で御講演いただくこととした。結果として、札幌市民だり、北海道出身の鈴木教授の講演は参加者に訴えるものが非常に大きかったと感じた。
社会に対する還元効果とその成果: 科学、技術に大きな関心をもつ市民と、それほどもっていない市民の両方を対象として、講師、講演題目の選定を行った。講師をお引き受けいただいた、原亨和先生、北澤宏一先生、鈴木章先生はいずれも学識や研究業績が世界トップクラスの方であることはもとより、教育にも強い関心をもたれ、非専門家にもわかりやすく解説いただける方であり、本市民講座の講師として適任であることを了解していた。この選択によって聴衆には世界がかかえる地球規模の問題のいろいろな側面と、これに科学技術が立ち向かっている現在の状況を無理なく理解してもらえたことであろう。
市民講座の開催を市民の方に周知することが必要であった。開催前に、北海道新聞に2回にわたり広告をだし、市民への周知を図った。また、札幌市内の高等学校をはじめとする学校にも案内を送り、国際会議の通知を目にしない通常の札幌市民にも周知を図った。参加申し込み形式も複数用意し、電子メール、電話、FAX、往復はがきによる申し込みをいずれも認め、それぞれに対応を行った。このような企画にはじめての人も含めて参加した方には、講演会の内容をお届けでき、参加できなかった人にも、研究者集団がこのような活動を行っていることを理解してもらえたことと考えている。
(7) その他:参加者は年齢、所属等さまざまであった高齢者の参加が相当数あった。90歳代の参加者もあり、講師の鈴木章教授には90歳代の参加者からの、発見の所有権に対しての的確な質問があり、鈴木教授がこれに真剣に答えられる姿勢が印象に残った。リカレント教育の重要性は現在大学人が最も関心をもつべきことであるが、今回の市民講座開催などにおいても、市民と科学技術、市民と大学や研究機関の距離を縮めることは可能である。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
本国際会議は日本学術会議、日本化学会、世界純正応用化学連合(IUPAC)の主催の下で開催された。日本学術会議は日本の科学アカデミーとして、またIUPACと深い連携をもって活動する団体として、欧米の化学者にはその存在が十分に認知されている。日本学術会議共同主催を承認いただいたことによって、現在乱立しているきらいのある国際学会の中での本会議の地位を明確にすることができた。御多忙の中、副会長先生に遠方までおいでいただき、御来席、御挨拶をいただいたことで、国内外の参加者すべてに学術会議の「顔を見てもらう」ことができ、上記のことを強く伝えることができた。
末尾となったが、日本学術会議より多額の経費負担をいただいたことに深甚な謝意を表したい。会議開催の基本経費である会場費を負担いただいたことは、準備段階の 担当者を強く励ますものであった。さらに、顕著な講演者への滞在費支給を決定いただき、すぐれた講演内容の全体講演者、基調講演者への滞在費支給が可能となった。受領者はいずれも世界を代表する、あるいは今後の学界を支える海外の研究者であるが、日本学術会議と日本の研究者を長らく記憶にとどめるであろう。






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