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第3回アジア太平洋発達障害会議2013開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第3回アジア太平洋発達障害会議2013
         (英文)The 3rd IASSIDD Asia-Pacific Regional Conference
(2)報告者 : 第3回アジア太平洋発達障害会議2013準備委員会委員長 原 仁
(3)主   催 : 日本発達障害学会、日本学術会議
(4)共   催 : 早稲田大学文化推進部・同大学教育・総合科学学術院 独立行政法人国際協力機構(JICA)東京国際センター
(5)開催期間 : 平成25年8月21日(水)~ 8月24日(土)
(6)開催場所 : 早稲田大学国際会議場(東京都新宿区)
(7)参加状況 : 29ヵ国/1地域,415人(国外214人、国内201人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:第3回アジア太平洋発達障害会議2013は、国際知的・発達障害学会(IASSIDD:International Association for the Scientific Study of Intellectual and Developmental Disabilities)が4年ごとに開催する地区会議のひとつであり、2005年の第1回台湾大会、2009年の第2回シンガポール大会から当会議が第3回目となる。なお、IASSIDDの他の地区会議は、欧州と南北米地区に設置されている。日本でのアジア太平洋地区会議の開催は、2008年8月にケープタウンでのIASSIDD理事会で候補国として推薦され、第2回シンガポール大会において正式に決定された。日本発達障害学会は、日本での開催を準備するために、2009年1月、第3回アジア太平洋発達障害会議2013準備委員会を設置した。本国際会議の準備委員会は早稲田大学の全面的な協力を得て本会議の企画と運営を行った。
(2) 会議開催の意義・成果:世界のトップレベルの研究者と専門職から最先端の支援法とその 実践が発表され、活発に意見交換が行われた。欧米先進国とアジア地域の発展途上国の研究者と専門職が一同に会して情報交換することができた。本会議をきっかけにして、この領域の研究と実践のさらなる進歩が期待できる。特筆すべきは、アジア太平洋地区の発達障害児・者への支援を包括的に議論した結果、発達障害研究への当事者参加の意義が強調された点である。
(3) 当会議における主な議題(テーマ):メインテーマ:「多様性-個別の支援と地域支援との融合を目指して」、主要題目:様々な発達障害への支援のあり方、障害者の差別と人権、障害者の老化、QOLの向上、ダウン症候群、重症心身障害児・者の支援、障害者の家族支援等が取り上げられた。
(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:これまでの地区会議は、欧米諸国とアジア 地区でも比較的に経済的に豊かな国々の参加が主であった。本会議では、アジアの発展途上国の研究者と専門職を招きたいと考え、資金的に可能な限り、参加登録費を極力低く抑えた。早稲田大学の全面的な協力を得て、従来の登録費の3分の2程度の金額とすることができた。新たな参加国として、ブラジル、クロアチア、マルタ、ネパール、スリランカが挙げられる。さらに、途上国からの優秀な発表論文に対して、奨学金を提供した。選考委員会で10名の該当者を選出したが、最終的には8名が本会議に参加できた。
(5) 次回会議への動き:昨年の世界大会(ハリファックス)理事会で2か国が推薦されたが、本大会中の理事会では、諸般の事情から第4回アジア太平洋地区会議の開催国は最終決定に至らなかった。なお、2014年7月、ウィーンにて第4回欧州地区会議が開催予定である。また、2016年にメルボルンにて世界大会が開催される。
(6) 当会議開催中の模様:開会式には秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜ることができた。教育講演が8演題準備されたが、1題は演者の健康上の理由から来日できなくなり、DVDによるプレゼンテーションとなった。予定された52のシンポジウムはすべて実施された。ポスター発表84題中75題(9論文取り下げ)が発表された。日本人研究者が企画した重症心身障害児のケアに関するイブニングセミナーが実施された。他に、アカデミックツアー(施設見学)3企画、IASSIDD研修委員会主催のワークショップが2つ実施された。
(7) その他特筆すべき事項:本国際会議はアジア太平洋地区の会議であったが、欧州地区からの 発表者が8%を占めた。本会議のテーマが論文発表に相応しかったためと思われる。また、JICA東京国際センターの全面的な協力のもと、JICA知的障害支援者研修修了生の3名が論文発表者となった。論文応募が予想を上回り、370題以上となったため、発表会場の確保が問題となった。論文採択委員会では、厳正な審査を行い、採択論文を300余題とせざるを得なかった。結果として発表論文は高品質なものとなった。公用語を英語とし、同時通訳は一部の教育講演のみとしたため、日本人参加者が予想より少なくなった。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成25年8月25日(日)午後4時から5時まで
(2)開催場所:早稲田大学国際会議場井深大記念ホール
(3)主なテーマ、サブテーマ:発達障害研究と新たな支援課題
(4)参加者数、参加者の構成:約300名、教員、福祉施設職員、研究者など
(5)開催の意義: 教育(幼稚園、小中学校、高校、大学など)、医療(診断と治療など)、福祉・労働(子育て支援、就労支援、高齢化など)の学際的な立場から、発達障害に関して研究や支援をする関連学会・機関から、我が国における発達障害研究と新たな支援課題に関して話題提供し、今後の支援と研究に向けた連携の在り方について討論した。
(6)社会に対する還元効果とその成果:本国際会議の成果を発表に反映しながら、話題提供者がそれぞれの立場から考えを述べた。障害福祉政策と発達障害研究の整合性が話題となった。発達障害の概念を再度国際基準で見直すきっかけとなったと思う。
(7)その他:欧米の研究者の発達障害概念の理解と我が国の法的定義の乖離が話題となった。すなわち、知的障害と発達障害の関係をどのように理解するかである。発達障害に知的障害を包含するのか(前者)、あるいは区別するのか(後者)である。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
日本学術会議との共同主催を得たため、本会議は我が国政府が公式に認める国際会議となった。参加国は予定の14か国・1地域から大幅に増え、29か国・1地域となった。参加登録者は463名(実参加者415名)と、過去2回のアジア太平洋地区会議を上回ることができた。結果として、より多くの研究成果の共有と情報交換が可能となった。我が国の発達障害研究者への刺激となった点で極めて意義深く、次回の開催につながる国際会議と総括できる。

(秋篠宮同妃両殿下御臨席の下、開会の辞を述べる原仁準備委員長) (主催者挨拶を述べる大西隆日本学術会議会長) (シンポジウムの様子)
(秋篠宮同妃両殿下御臨席の下、開会の辞を述べる原仁準備委員長) (主催者挨拶を述べる大西隆日本学術会議会長) (シンポジウムの様子)

(展示会場の風景) (ガラディナーでの乾杯の場面) (ガラディナーでのアトラクションの模様)
(展示会場の風景) (ガラディナーでの乾杯の場面) (ガラディナーでのアトラクションの模様)

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