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第32回国際泌尿器科学会総会
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第32回国際泌尿器科学会総会
         (英文)32nd Congress of the Societe Internationale d'Urologie (略称:SIU)
(2)報告者 : 第32回国際泌尿器科学会総会組織委員会委員長 内藤誠二
(2)主   催 : 社団法人日本泌尿器学会、日本学術会議
(3)開催期間 : 2012年9月30日(日)~10月4日(木)
(4)開催場所 : 福岡国際会議場、福岡サンパレス、福岡国際センター(福岡県福岡市)
(5)参加状況 : 94ヶ国/地域・3,217人(国外1,886人、国内1,331人)


2 会議結果概要
(1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯: 国際泌尿器科学会総会は、国際泌尿器科学会(SIU: Societe Internationale d'Urologie )が母体となって開催されている国際学術会議で、泌尿器科学の分野では最も歴史のある国際会議です。第32回総会が開催される2012年は、明治45年(1912年)に日本泌尿器科学会の前身である日本泌尿器病学会が設立され、第1回総会(学術集会)が開催されてから、100年目にあたります。この記念すべき年に国際泌尿器科学会総会を日本で開催し、世界各国の泌尿器科医とともに祝賀することは、大変意義深いことです。 また、わが国の泌尿器科医は数的にも質的にも世界のトップレベルを誇り、臨床、基礎の両分野で国際的にも多大の貢献を果たしてきました。わが国における泌尿器科学100年の歴史とともに、日本での研究成果を全世界の研究者に大きくアピールし、わが国のこの分野の新進の研究者に世界の著名な研究者と直接交流する機会を提供することは、わが国の泌尿器科学の将来発展のための大きな礎となります。 このような背景から、国内で国際泌尿器科学会の日本開催への機運が高まり、2008年より開催誘致活動を行い、2009年10月31日に中国・上海で開催された第30回国際泌尿器科学会総会における国際泌尿器科学会理事会において、第32回国際泌尿器科学会総会を2012年9月30日から10月4日までの会期で日本で開催することが決定されました。日本での開催は、1970年の第15回総会以来、実に42年ぶり、2回目の開催となりました。
(2) 会議開催の意義・成果: 泌尿器科学は、新生児から超高齢者まで男女を問わずすべての年齢層を対象としており、取り扱う臓器は腎、副腎、尿路(腎盂・尿管・膀胱・尿道)、前立腺、精巣(睾丸)、外性器と広範です。疾患としてはこれらの臓器のがん、前立腺肥大症や神経因性膀胱などに伴う排尿障害、腎移植、尿路性器感染症、尿路結石症、小児泌尿器疾患、副腎の内分泌外科疾患、男子不妊症、性機能障害、後腹膜疾患、尿路性器先天奇形、男性更年期障害、尿失禁などの女性泌尿器疾患など多岐にわたっています。 臨床部門では、尿路内視鏡手術や腹腔鏡下手術、ロボット支援腹腔鏡手術、体外衝撃波結石破砕術などに代表される低侵襲外科治療、尿路変向・再建、がんや排尿障害の薬物療法、高齢者排尿管理など、多方面で生活の質 (QOL: Quality of life)に配慮した質の高い医療の提供と先端医療技術の開発・研究を進めています。 基礎部門では、泌尿器科領域の疾患の疫学、分子生物学的手法を用いたがんの発生、進展機序、排尿機構、尿路結石の形成機序、性機能障害の機序等の解析とそれに基づく新規治療法の開発、人工臓器・再生医療の研究、開発など、多くのテーマに取り組んでいます。 世界が高齢化社会に向かい、泌尿器科医の果たす役割が益々大きくなる中で、世界のトップレベルの研究者が一堂に会して、最新の研究成果についての発表や討論を行い、泌尿器科学の発展を図るとともに、世界各国からの参加者に泌尿器科領域の標準的診断と治療に関する教育を行って、世界の診療レベルの向上と標準化に貢献できたことは、本会議の大きな成果と言えます。
(3) 当会議における主な議題(テーマ): メインテーマ:「泌尿器科学の新たな未来を拓く」 主要題目:前立腺癌や腎癌を含む各種泌尿器科領域の癌、前立腺肥大症を含む閉塞性下部尿路疾患、過活動膀胱、尿路結石症、小児泌尿器科、女性泌尿器科、性機能障害、腎移植、不妊症、男性更年期障害、尿路性器感染症などの最新の診断・治療についての基調講演(プレナリーセッション)、シンポジウム、パネルデイスカッション、ワークショップ。尿路内視鏡手術、腹腔鏡手術、ロボット支援腹腔鏡手術などによる低侵襲外科治療の講演や実技教育等。
(4) 当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割: 学術会議はPlenary session、Parallel Plenary Session、Podium Session、 Moderated Poster Session、ePoster、Un-moderated Video Sesson、 Surgical Tips、Instructional Course、Sponsored Symposiumからなり、合計 1,164 の発表が行われました。 Plenary Session では、主に前立腺癌におけるPSA 検診や過剰診断と過剰治療の問題、男性ホルモンの意義、間歇的ホルモン療法の位置付け、手術療法としての開放手術、腹腔鏡手術、ロボット支援腹腔鏡手術の手技と位置付け、高齢者における尿失禁と性機能障害等について、世界の最新の状況が報告されました。このことは本学会の mission を反映し、高い教育的価値があったと言えます。 世界の各国・地域代表によるレクチャーでは、アジア代表(日本)による PSA 検診の現況と展望、ヨーロッパ代表による前立腺癌の過剰診断・過剰治療の現状と展望、南・北米代表による腹圧性尿失禁についての講演が行われ、各地域による状況、違いが明らかになりました。そういう中で、前立腺がんに対する PSA 検診は、利益と不利益について十分な説明と同意を得たうえで、推奨していくという一定の方向性が確認されるとともに、最新かつ正確な情報提供のための SIU による世界共通のファクトシート作成の提案がなされたことは、大きい意義がありました。 Parallel Plenary Session、Moderated Poster Sessionでは泌尿器科で取り扱う各種疾患の診断と治療についての最新の知見が世界各国の泌尿器科医から報告されました。それぞれが適切なサイズの会場で行われたため、演者と聴衆との距離が近く、自由な雰囲気で活発な討議が展開されました。特に日本の若手泌尿器科医には英語による発表および討議のトレーニングとしてよい機会となったと思われます。 ビデオを汎用した Surgical Tips やハンズオントレーニングを含む教育コースでは、世界の高名なエキスパートの手術手技や手術のコツについて直接指導を受けることができたため、国内外の若手泌尿器科医の技術向上には特に有用であったと言えます。 海外の学会では日本の泌尿器科医が世界の高名な泌尿器科医と親しく討議、会話できる機会は、言語のハンデイもあって限られていますが、本学会はそのような垣根を取り去って、交流を育成・推進するよい機会になったものと考えます。
(5) 次回会議への動き: 上記(4)で述べた本総会の成果を踏まえ、次回総会では研究の更なる進化、教育活動の更なる発展、学術的交流の多様化・活発化を図り、「教育と研究の国際協力を通じてすべての国で泌尿器科医が自分の患者に泌尿器科医療の最高の基準を適用できるようにする」という本学会の使命の実現に向けて、努めていきます。 次回総会は、2013年9月8日(日)~12日(木)にカナダのバンクーバーで開催されます。
(6) 当会議開催中の模様: 9月30日早朝から11の関連学会との合同シンポジウムを開催した。また午後には福岡市天神のエルガーラホールにおいて、市民公開講座「前立腺がんのよくわかるお話し」を開催した。夕方からは福岡サンパレスにおいて開会式を行った。10月1日から3日まで、福岡サンパレスにおいて Plenary Session、福岡国際会議場において Instructional Course、Parallel Plenary Session、Podium Session、Modearted Poster Session、Surgical Tips 、また福岡国際センターにおいて、ePosterと医療機器展示を行った。10月4日午前中のTake-Home Messages, Plenary Sessionで全会議を終了し、閉会式を福岡サンパレスにおいて行った。
(7) その他特筆すべき事項: 本総会の開催地候補としては、国内では横浜、大阪、福岡の3都市、海外ではオーストラリアのメルボルン、ブリスベンの2都市、計5都市が挙がっていました。その中で福岡市は、市をあげて開催誘致に取り組み、開催都市としてのホスピタリティの高さやユニークな懇親会場案などが認められ、国内外の有数なコンベンション都市をしりぞけ、開催地として決定されました。 古くから大陸との交流拠点として発展し、現在も積極的に国際交流を推進している福岡市でこのような大きな国際会議が開催されたことは大変意義深く、医療技術の発展だけでなく、福岡の国際化や地域活性化にも大きく寄与したものと考えます。 福岡の国際化や地域活性化に資する行事の一環として、下記の社交行事が開催され、これらを通じて、参加者同士の情報交換と交流、また地元との交流を図り、地域活性化にも繋がりました。

開催日行事名開始場所参加人数
9月29日(土) 会長招宴 九州国立博物館200名
9月30日(日) ウェルカムパーティー 福岡国際センター1,500名
10月1日(月) SIU Night 川端商店街2,500名
10月3日(水) GALA Banquet グランドハイアット福岡400名

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:開催日時:2012年9月30日(日)13:00開演~15:00終了
(2)開催場所:開催場所:エルガーラホール 8F「大ホール」
(3)主なテーマ、サブテーマ:よくわかる前立腺がんのお話し
(4)参加者数、参加者の構成:465名、一般市民
(5)開催の意義: 第32回国際泌尿器科学会総会が福岡で開催されるのを契機に、前立腺がんに対する診断と治療の現状を、この分野で活躍しているわが国の泌尿器科医の講演によって、広く市民の皆さんに理解していただきました。 また、開催年の2012年は、日本泌尿器科学会設立100周年の記念の年であり、市民に向けて日本における泌尿器科学の歴史を紹介するとともに、泌尿器科が扱う代表的疾患である、前立腺がんの最新の診断と治療などについてわかりやすく情報を発信することができました。
(6)社会に対する還元効果とその成果:稲川淳二氏が自己の経験をもとに前立腺がんの検診を受けるよう語ったビデオを放映しました。稲川氏の親しみやすいお話で、市民の方の共感も得ることができたと考えます。 休憩時には質問表に記入して提出していただき、Q&Aコーナーで講師からわかりやすく回答してもらうことによって、市民の前立腺がんに対する理解を深めていただくことができました。 また、今回の市民公開講座に関するアンケート集計結果を今後の啓発活動に活かしていくことが本学会の使命と考えます。
集計結果

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
日本学術会議との共催によって、開会式に皇太子殿下のご臨席を頂くという栄誉に恵まれました。これによって、市民の方に泌尿器科疾患に対する関心を持っていただくとともに、理解を深めていただくことができました。また、本学会はもちろん、社団法人日本泌尿器科学会(現一般社団法人日本泌尿器科学会)の国内外におけるステータスの向上につながりました。


(開会の辞を述べる内藤誠二組織委員長)

(主催者挨拶を行う大西隆日本学術会議会長)

(開会式でお言葉を述べられる皇太子殿下)

(バンケット)

(session)

(市民公開講座)

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