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2011年国際電気通信会議開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)2011年国際電気通信会議
         (英文)International Conference on Communications 2011 (ICC2011)
(2)報 告 者 : 2011年国際電気通信会議 実行委員会委員長 淺谷 耕一
(3)主   催 : (社)電子情報通信学会 通信ソサイエティ、日本学術会議
(4)開催期間 : 平成23年6月5日(日)~ 6月9日(木)[5日間]
(5)開催場所 : 国立京都国際会館(京都府京都市)
(6)参加状況 : 47ヵ国/1地域・1805人(国外1252人、国内553人)


2 会議結果概要
 (1)会議の背景(歴史):国際電気通信会議は、IEEE(アイ・トリプル・イー)通信ソサイエティ(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Communications Society:IEEE Communications Society)が毎年開催する会議であり、1965年の第1回から当会議で47回を迎える電気電子工学、及び、情報学分野で最も歴史のある国際会議である。IEEE Communications Society が主催するもう一つのフラグシップ会議であるGLOBECOM(世界電気通信会議)は1987年に東京で開催されており、それを契機として日本からの貢献は例年大きくなってきていた。2006年、IEEE Communications Society 側からの打診もあり、電子情報通信学会通信ソサイエティでは、2007年1月ICC2011準備委員会を組織し日本開催提案の準備を進めた。そして2007年6月27日、IEEE Communications Society のGIMS 委員会 (GLOBECOM/ICC Management and Strategy Committee) は2011年6月に京都にて開催することを決定した。
 (2)会議開催の意義・成果:本会議が対象とする電気電子工学、および、情報学は、我が国の国内生産額のおよそ10 %を占める情報通信産業を支える学問分野である。本学問分野で歴史のある当会議を日本で開催することにより、世界をリードする日本の先進的ネットワーク技術を体感してもらう機会を得ることができ、黎明期より積み重ねた我が国の情報通信産業の貢献と役割を世界の最先端研究者・技術者と共有することができた。また、東日本大震災からの復興を願う式典に秋篠宮殿下の御臨席を賜り、今回の震災を乗り越え高度情報化社会を実現するために当会議が重要な役割を担うことを期待するとのお言葉をいただき、復興に取り組む日本の姿を世界に発信できたことは大変光栄であった。
 (3)当会議における主な議題(テーマ):当会議では、"Source of Innovation: Back to the Origin"(「新たなイノベーションに向けて:原点への回帰」)をテーマとし、次世代ネットワークとシステム設計論、光通信システム、無線通信、センサーネットワーク、信号処理、通信理論、通信ソフトウェア、セキュリティ、通信品質と信頼性理論等の研究発表と討論が行われた。
 (4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:我が国が世界に先駆けて整備を進めているブロードバンド基盤と、次世代ネットワークサービス、そして、それらを支える産官学の取り組みを世界の研究者にアピールすることができ、今後の先端的研究の推進に資する研究者間の人脈作りの機会を作ることができた。また、我が国のこの分野の若手研究者に世界の最先端研究者と交流する機会を作ることができた。これらの成果は、我が国の本分野に関する研究の一層な発展につながる。
 (5)次回会議への動き:次回は、"CONNECT ・ COMMUNICATE ・ COLLABORATE"をテーマとして、カナダのオタワにて2012年6月10日から15日に開催される予定である。
 (6)当会議開催中の模様:ICC2011の本会議は、6月6日のオープニングプレナリーとともに開会した。NTT副社長である宇治運営委員長による開会の挨拶では、東日本大震災により被災された方々への思いとともに、その後の復興への取り組みを支援して下さった方々、そして海外より参加して下さった方々への感謝が述べられた。挨拶ではこの24年間の情報社会の高度化に、この会議に参加する研究者の貢献が大きく寄与していることを確認しつつ、今回の震災にて解決すべき課題があることが明らかとなり、持続可能な社会の実現のためにさらなる取り組みが必要であることが述べられた。
 主催者挨拶では,IEEE Communications Society会長であるByeong Gi Lee教授と、電子情報通信学会通信ソサイエティ会長であり、この会議のテクニカルプログラム委員長を務めるNTT先端技術総合研究所所長である萩本和男よりそれぞれ、震災のもと開催できたことへの感謝とともに、主催学会としてのR & Dビジョンが紹介された。また、Lee教授の発声により、会場全員で黙祷を行った。
 オープニングプレナリーに引き続いて、産業界および学術界を代表して選ばれた3人の講演者による基調講演が行われた。山田隆持NTTドコモ代表取締役社長は、最初に東日本大震災の被災状況と対応について述べ、2011年4月末にはほぼ震災前の状況まで回復させたことを報告した。また、新たな成長に向けた取り組みについて翻訳電話のデモなどを交えて述べた。続いて、Maurizio Decinaミラノ工科大学教授による将来のネットワークとサービスに関するビジョンの講演では、現在ヨーロッパを中心に研究が進んでいる「モノのインターネット」に関する取り組みが紹介され、将来のネットワークに必要な技術について議論された。最後に、津田俊隆富士通研究所フェローによる, ICTのパラダイムシフトと通信技術のトレンドについての講演では、ヒューマンセントリックな(人が中心の)ネットワーク社会の実現を目指し、ヘルスケアやエネルギー管理などのサービス支えるICT技術の今後の指針が提唱された。

 6月7日の午前には、震災からの復興と情報通信をテーマにした式典が開催された。この式典には、来賓として京都府より山内修一副知事、京都市より由木文彦副市長、金澤一郎日本学術会議会長の御出席のもと、秋篠宮殿下の御臨席を賜った。東日本大震災からの復興に向けた取り組みを受けて、殿下より被災した方々への思いと参加者への会議参加へのお礼のお言葉とともに、高度情報化社会の実現に今後もこの会議が重要な役割を担うことを期待するとのお言葉を頂戴した。

秋篠宮殿下 式典の様子
秋篠宮殿下 式典の様子

 世界の研究者による研究発表として、64カ国の地域より2 8 3 8 件の論文が投稿され、そのうち1092件が採択された。採択された論文は180の口頭発表セッションと18のポスターセッションにて発表された。セッションの分野としては、各国が最先端技術の開発に凌ぎを削っている無線技術に関するものがもっとも多く、次に、セキュリティ、通信理論など、通信の基礎を支える理論に関するセッションが続き、熱心な発表と討論が繰り広げられた。
 6月5日と9日には、4G無線技術への展開、協調型無線通信、次世代インターネット、可視光通信などに関する15のチュートリアルが開催され、最新技術の紹介とそれに対する活発な意見交換が展開された。また、最新の話題を議論する9つのワークショップにおいて、合計81編の論文が発表された。ワークショップでは、スマートグリッド通信や将来ネットワーク、省電力通信など、話題となっているトピックについて活発な議論が夜遅くまで続いた。ビジネスフォーラムは、産業界と学術界の個ラボレーションを目的に開催された。エグゼクティブセッションでは、最新の研究分野を主導するリーダによるビジョン講演を、また、一般セッションでは、スマートグリッドや次世代アクセス網、ワイヤレスセンサネットワーク、省電力I C T、光デバイスなどを議論するパネルが企画され、それぞれ熱心な議論が行われた。

 6月6日~8日の3日間、京都国際会館のイベントホールにて、篠原弘道N T T 取締役研究企画部門長が委員長となり開催した技術展示会(ICC KYOTO Exhibition)が併催され、通信関連企業9社及び公的研究機関1団体による企業展示が行われた。日本が世界をリードする、次世代光ネットワーク技術、次世代無線技術、グリーンI C T技術、ホームI C T技術などを内外にアピールするものとなった。また、出版社2社による学術書籍の展示、折紙体験コーナー、抽選会の開催なども企画された。3日間の合計来場者数は約2 600人と盛況を博した。

 (7)その他特筆すべき事項:東日本大震災とその後の原子力発電所の問題から、内外の関係者より開催にあたっての懸念と同時に支援の声を多く頂いた。結果として、1800名を超える参加を得て成功裏に開催できたことは大変貴重なことであると同時に多大な御支援に感謝の意を表したい。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:2011年6月5日(日)13時~16時30分
(2)開催場所:国立京都国際会館 Room E
(3)主なテーマ、サブテーマ:科学実験教室「不思議がいっぱい科学の世界」
                    ― 電波の秘密をさぐってみよう!―
(4)参加者数、参加者の構成:89名、小学5年生~中学生3年生と保護者
(5)開催の意義:
 小学生・中学生の科学実験教室を行うことにより、我が国が世界をリードする科学技術がもたらした成果をわかりやすく紹介し、一般の方々に科学技術に関する興味を高めていただく機会を設けることができた。
(6)社会に対する還元効果とその成果:ラジオに音の情報を送れるだけでなく、電気(エネルギー)まで送れる“電波”の不思議について紹介したあと、参加者は二つのコースに分かれ、Aコース:「ペットボトル鉱石ラジオ -電池のいらない情報受信装置―」ではペットボトルを利用した鉱石ラジオを、Bコース:「コードレス・コンセントの実験 - 電波で電気を送る -」では、形や角度で電気が送られることが体感できる簡易なコードレス・コンセントを製作していただいた。なぜ線がなくても”音“や“電気”が送れるのか、また、どんな技術がそれを実現しているのかを実験を通じて体験する機会が提供できた。実際に手を動かして体験することで見えない電波の力を感じることができ、参加した小学生・中学生のみならず、付き添っていた保護者の方々からも楽しく有意義であったという意見を多くいただくことができた。
科学教室の様子
科学教室の様子
(7) その他:本科学教室に後援いただいた京都市教育委員会に感謝の意を表したい。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
 本会議が日本学術会議との共同主催で開催することとなり、閣議了解を得た国際会議としで位置づけられたことは、海外の関係者からの信頼につながり、結果として東日本大震災による影響が懸念される厳しい状況の中、内外の関係者から多大な支援のもと成功裏に開催できたものと考える。
 また、震災からの復興と情報通信をテーマにした式典に秋篠宮殿下の御臨席を賜ることができ、被災した方々への思いと、参加者への会議参加に対するお礼のお言葉とともに、高度情報化社会の実現に今後もこの会議が重要な役割を担うことへの期待のお言葉をいただいた。このことは、我が国の本分野の研究開発に携わる多くの研究者、技術者を励ますことにつながるとともに、参加した海外の研究者との新たなコラボレーションを生み、さらなる発展と先端技術の向上が期待される。
 ここに深く謝意を表したい。



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