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第29回国際臨床神経生理学会開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 :(和文)第29回国際臨床神経生理学会
         (英文)The 29th International Congress of Clinical Neurophysiology (ICCN2010)
(2)報 告 者 : 第29回国際臨床神経生理学会組織委員会委員長 柴崎 浩
(3)主   催 : 一般社団法人日本臨床神経生理学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 平成22年10月28日(木)~11月1日(月)
(5)開催場所 : 神戸国際会議場、神戸ポートピアホテル、神戸新聞松方ホール(兵庫県神戸市)
(6)参加状況 : 61ヵ国/1地域・1,703名(国外 915人、国内788人)、うち同伴者100名(国外85名、国内15名)

2 会議結果概要
(1) (1) 会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:
 本国際学会は国際臨床神経生理学会連合(IFCN)が定期的に開催するもので、従来は国際脳波臨床神経生理学会(International Congress of EEG and Clinical Neurophysiology)と国際筋電図臨床神経生理学会(International Congress of EMG and Clinical Neurophysiology)がそれぞれ2年に1回交互に開かれていたものが、平成15年のサンフランシスコ大会で両学会が統合され、平成18年のエジンバラ大会から4年に1回開かれることになったものである。
 平成18年9月14日にエジンバラで開催された第28回 ICCN の総会における投票の結果、次の国際学会を神戸で開催することが決定した。日本臨床神経生理学会は同国際連合に所属する58学会の中で3番目に大きな学会であり、これまでの貢献が認められ、国際臨床神経生理学会連合とともに本国際学会を共同主催することとなったものである。わが国では、昭和56年の第10回国際脳波臨床神経生理学会(島薗安雄会長)と平成7年の第10回国際筋電図臨床神経生理学会(木村淳会長)が、いずれも京都で開かれており、今回は3回目であった。今回開催地として神戸を選んだ理由は、過去2回の大会がいずれも京都で開かれたこと、神戸市の協力により経済的に有利であること、および観光地京都・奈良に近いことであった。
(2)会議開催の意義:
 臨床神経生理学は、神経系の機能を解析することにより神経科学の発展に大きく寄与してきた学問分野である。医学的には、本分野の成果は、アルツハイマー病やてんかん、パーキンソン病、統合失調症、うつ病、脳卒中およびその後遺症、筋萎縮性側索硬化症などの神経難病の診断や病態の解析に役立つばかりではなく、その治療にも応用されてきている。また本分野は脳研究を推進するための新しい検査法の開発のため、工学的な分野も包含しており、医工連携をすすめ新しい産業の育成が期待される分野でもある。本会議では、ゲノム研究で疾患遺伝子の膨大な知見が集積されてきた神経疾患において、ゲノムを踏まえた機能解析をはかる最新のトピックスを網羅し、また脳研究の最前線を機能解析を通じて発展させることを目的とした。また、参加者の教育の上では、脳波や筋電図などの臨床検査法をさらに発展させ、学会参加者の技術レベルを向上させることにより、上記の疾患に悩む患者をより的確に診断・治療をする上で、社会的にも貢献をすることが期待される。
(3)当会議における主な議題(テーマ):
 今回の学術プログラムの企画はすでに平成20年の夏に始められ、境界領域を含めて多岐にわたるテーマを網羅し、それぞれについて最新の知識と展望を明らかにすることに努めた。なかでも近年とくに進歩が著しい領域として、末梢神経閾値電気緊張(threshold electrotonus)と軸索興奮性の検査法、神経筋チャネル異常症の検査法、ボツリヌス治療の原理と応用、経頭蓋磁気刺激(TMS)と皮質内抑制機構、反復TMS (rTMS)と脳可塑性、深部脳記録と深部脳刺激(deep brain stimulation、 DBS)、神経機能回復とリハビリテーション、脳磁図の臨床応用、皮質高周波律動(HFO)の意義、皮質直流電位の意義、事象関連脱同期化・同期化(ERD/ERS)の意義と応用、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)の臨床応用、神経機能イメージングと電気生理の対応、brain-computer interfaceの展望、mismatch negativityの意義と臨床応用、基底核の神経回路と律動の意義、術中および集中治療室における神経機能モニター、および前庭機能検査の進歩、に焦点を当てた。また神経科学に関連したテーマとしては、作業記憶と社会脳、言語、顔の認知、疼痛とかゆみの神経生理、脳の発達と神経生理、感覚運動連関、皮質領域間機能連関、および選択的注意を取り上げた。そして一方では、精神疾患、認知症、てんかん、睡眠障害と睡眠モニター、パーキンソン病、不随意運動、運動ニューロン疾患、末梢神経炎、筋疾患、体性感覚、視覚、聴覚、脳神経の電気生理学的検査法、脊髄反射、歩行障害、排尿機能の検査、神経筋の超音波検査、神経筋接合部の機能検査など、日常臨床に卑近なテーマも網羅した。そして実技コースとしては、脳波、筋電図・神経伝導検査、およびTMS に関するハンズオンワークショップを設けた。
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 同伴者100名を含む1,703名(海外61か国から915名、国内788名、うち学生313名)の参加者があり、941題の一般演題の投稿を受け、5日間にわたる学術会議を開催した。この参加者は、4年1回の学術大会の中で過去最大と考えられる。本学会の直前直後にそれぞれ2日間にわたって、国際Single Fiber EMG/Quantitative EMG研究会(SFEMG/QEMG、有村公良会長)と第40回日本臨床神経生理学会学術大会(JSCN40、梶龍兒大会長)が開催され、それぞれと Joint symposium, 共催企画を行なった。
 国内組織委員会が中心となり立案した収支見積もり、プログラム素案を国際組織委員会で審議、承認を受け、その後の具体的な企画、運営を国内組織委員会が行なった。学術プログラムにおいては、世界各地域より幅広く招聘講演者を選出し、その他に企画より漏れた重要テーマをとりあげるための企画として Proposed workshop を案出した。その他、ポスター発表者にも短時間の口演時間を設定するなど、一般参加者の直接参加の機会を増やす新機軸を導入した。
 ソーシャルプログラムとして、ツアー、懇親会などの企画の他に、大会期間中にフレンドシップサロンを催し、参加者同士、主催者のふれあう機会を設け、日本文化の一端の紹介を行なった。
(5)次回会議への動き:
 次回(平成26年)のICCN開催地としてベルリンとリヨンが立候補し、総会でおこなれた投票の結果僅差でベルリンが選ばれた。本会議中にIFCN の新執行部の初会合が開かれ、本会議の成功をひきついで、教育、健康・病態診断補助、研究の3点について重点的に検討が加えられ、地域毎の会議、国毎の会議との連携をとっていくことが強調された。研究領域の中で、少数の領域を指定し、多施設研究、研究費助成などを積極的に行なうことも検討されている。
(6)当会議開催中の模様:
 口演セッション
 IFCNが定めている3つのNamed Lectureの選定を行った。学術プログラム委員会の委員長と3名の副委員長で協議して候補者を推薦し、最終的には組織委員長と当委員長が調整を行い、各候補者の専門領域も考慮して以下の3名の講演者を決定し発表いただいた。
 Adrian Lecture: F. Mauguiere教授(リヨン、フランス)
 Berger Lecture: H.O. Luders教授(クリーブランド、米国)
 Kugelberg Lecture: P.M. Rossini教授(ローマ、イタリア)

 これまでICCNでは、上記の3つの公式なNamed Lectureに加えて、主催国の意向によって様々なNamed Lectureが発表されてきた歴史がある。今回は、組織委員長と当委員長が中心になって検討し、以下の3つのICCN2010 Named Lectureを開催した。各分野において顕著な業績をあげられ、しかもICCNへの貢献の大きかった研究者の氏名をLecture名として冠した。
 Buchthal Lecture: F. Lehmann-Horn教授(ウルム、ドイツ)
 Halliday Lecture: R. Naatanen教授(ヘルシンキ、フィンランド)
 Narabayashi Lecture: A. Graybiel教授(ケンブリッジ、米国)

 さらに、第40回日本臨床神経生理学会学術大会との合同開催の一環として、日本の臨床神経生理学の発展に多大な貢献をされた時実俊彦先生と島薗安雄先生の名を冠したMemorial Lectureを、ICCN2010のClosing Ceremonyの前に行った。本学会のHonorary Presidentの一人である柳澤信夫先生に座長をお願いして、両先生の業績等の紹介をいただいた後、日本を代表する国際的研究者のなかから、橋本勲先生にShimazono Lectureを、柴崎浩組織委員長がTokizane Lectureを発表した。
 Special Lectureは24演題で、プログラム委員会と組織委員長の間で検討を重ね、各分野を代表するベテラン研究者に加え、比較的若手であっても現在高い注目を集めている研究者にお願いした。午前8時開始という時間帯にもかかわらず、多くの参加者を得て、熱心な討論が行われた。
 口演セッションは、(1) 幅広い分野をカバーすること、(2) 現在高い注目を集めている分野も取り上げること、(3) 脳機能イメージングも積極的に取り上げること、(4) 学際的な分野の研究も取り上げること、の4つを基本方針とした。先ず組織委員長とプログラム委員長が中心になって検討を行い、約30のセッションのタイトルと発表者の計画を決めた。その後、プログラム委員に計画を提示し、各委員の専門領域について追加すべきセッションの提案をお願いすると同時に、是非招聘した方が良いと思われる発表者の追加を依頼した。プログラム委員の熱心な協力により、最終的には63セッション(52のSymposiumと11のWorkshop)が決定した。タイムスケジュールを考慮し、午前中のSymposiumは120分、午後は150分とし、発表者の少ないセッションはWorkshopと命名して75分で行った。このように多くの口演セッションが開催されたのはICCNでは初めてのことと思われる。そのため、8セッションが平行開催となった。参加者にとって、自分の研究分野に近いセッションが会期中を通して常にいずれかの会場で開催されているという大きな利点があった。プログラム委員会が事前に心配していたのは各セッションの参加者数が非常に少なくなる可能性であったが、幸い予想以上の学会参加者を得たため、杞憂に終わった。

 Proposed Workshop
 一般参加者にもプログラミングに対して興味を持っていただきたかったことと、国内のプログラム委員会が見落としてしまった重要なテーマがあるかもしれないため、ICCNとしては初めての試みとしてProposed Workshopの公募を行った。幸い多くの方々の関心を呼び、24題という多数の申請があったことは喜ばしい限りであった。若手研究者だけではなく、大ベテランからの応募もあった。プログラム委員会の主要メンバーに審査をしていただき、最終的に組織委員長とプログラム委員長が7申請を採択した。Opening Ceremonyの前という、サテライトセッション的な時間帯での開催となったが、予想以上に多くの参加者を得て、盛況であった。

 ポスター演題
 初めに設定した締切時には200演題ほどしか集まらず、深刻に心配したが、2度の締切延長の結果、最終的には941題という多くの演題が集まった。おそらく、参加者の多くが締切延長を予想されていたものと思われる。ICCNの歴史の中ではもっとも多い一般演題数だろうと自負している。ただし、経済的な問題等で参加できなくなった方が100名以上あり、学会開催時には815題の発表となった。分野を考慮して37セッションに分類し、1日平均約200演題が発表された。
 最近の国際学会では、一般演題のほとんどはFree Discussionタイプのポスターセッションとして発表される。しかし、参加者が非常に少なく、発表者自身さえ会場にいないといった悲惨な状況となることが多い。言うまでもなく、国際学会は招聘者ではなく一般参加者によって成立するものであり、一般参加者の軽視はかねてより遺憾に思っていた。そのため、ポスター発表者にも発表の機会を与えることを考えた。それには2つの方法がある。1つは、日本で伝統的に行われている「座長がいて、ポスター発表者が自分のポスターの前で3分程度発表し2分程度討論する」という方法である(Guided tour)。しかし、これまでの国際学会では、この形式では声が小さくて聞き取りにくい、発表後の英語でのDiscussionで立ち往生してしまうことがある(特に日本人参加者)、他のポスターを見る時間が無い、といった問題がある。そこで、今回は第2の方法であるTalking Posterを採用することとした。この形式は近年少しずつ増えてきたが、ICCNの歴史の中では初めての斬新なものとなった。3分間で5枚のスライドを使用することとし、トラブルを避けるため、すべて事前に提出することを徹底した。結局ポスター発表が行われた815題のうち、762題がTalking Poster Sessionで口演発表された。Talking PosterとFree Discussionの両方で発表するということが、果たして発表者に理解していただいているかどうかが不安であり、実際に問い合わせも多く寄せられたが、ホームページの記載とメールによる連絡を徹底することにより、ほぼ発表者全員から事前にスライドが送付された。
 学会中も、Talking Posterの方法が果たして理解されているだろうか?3分間の発表時間がはたして守られるか?時間が延長して次のセッションに迷惑をかけないだろうか?といった多くの不安があったが、各座長の努力もあり、非常に円滑に進み問題は一切生じなかった。この方法が良かったかどうかは、参加者各自の判断によると思うが、新しい試みとして評価されてよいと考えている。

Young Investigator Award
 今回の学会では、若い研究者の意欲を向上させる目的で、Young Investigator Award (YIA)をポスター発表者のなかから20名に授与した。IFCN Fellowshipなど、他のサポートを既に受けている参加者を除き、優秀なポスターを選考することにした。研究分野を考慮して、各プログラム委員に選考を依頼した。学会の前に抄録に目を通し、まず約50名を候補者として選出した。そしてTalking Posterでの実際の発表の評価も考慮して、最終的に26名の候補者を選出した。表彰はClosing Ceremonyで行ったが、その場に本人も共同研究者も居合わせない時は失格とした。6名の方がClosing Ceremonyに出席されなかったので、結局以下の20名が受賞した。Yumi Fujimaki (Japan)、 Hiroshi Fujioka (Japan)、 Federica Giambattistelli (Italy)、 Shizuka Horie (Japan)、 Giacomo Koch (Italy)、 Wenqi Mao (China)、 Daisuke Matsuyoshi (Japan)、 Sonoko Misawa (Japan)、 Takenobu Murakami (Germany)、 Tiina M. Nasi (Finland)、 Yasuki Noguchi (Japan)、 Rieko Okada (Japan)、 Naofumi Otsuru (Japan)、 Susanna B. Park (Australia)、 Miia Pitkonen (Finland)、 Julia C. Restle (Germany)、 Ashleigh E. Smith (Australia)、 Giulia Varotto (Italy)、 Takao Yamasaki (Japan)、 and Takufumi Yanagisawa (Japan)。国別では、日本10人、イタリア3人、ドイツ、フィンランド、オーストラリア各2人、および中国1人であった。Closing Ceremonyで和やかな雰囲気の中に表彰式が行われた。

 Hands-on-Workshop
 伝統的に、ICCNにおいてはHands-on-Workshop (HOW)は重要な位置を占める。今回も、脳波(担当:池田昭夫委員)、経頭蓋磁気刺激 (TMS)(担当:宇川義一委員)、末梢神経伝導検査・筋電図(担当:馬場正之委員、桑原聡委員)の3つのHOWを開催した。そのうち、特に末梢神経伝導検査・筋電図では、HOWの意義を高めるために、4つの比較的小さな部屋に分けて開催した。いずれの会場も熱心な参加者であふれる盛会であった。担当者の熱心な努力と、関係企業による多大の御協力に深謝したい。

 また、この学会の会期中にIFCNの恒例行事がいくつか行われた。まずこれまでの4年間の執行委員の最後の委員会、次の4年間の執行委員による最初の委員会、および4年に1回開かれるIFCN総会、アジア・オセアニア、ラテンアメリカ、ヨーロッパの各チャプター会議、IFCNの機関誌Clinical NeurophysiologyのAssociate Editor会議と編集委員会がそれぞれ開かれた。またM.A.B. BrazierおよびW.A. Cobb若手研究者賞の受賞講演が行われた。これは、学会前の1年間にClinical Neurophysiologyに掲載された論文のなかから編集委員会によって選ばれるもので、Brazier賞にはDr. S. Vucic (Sydney)が、Cobb賞にはDr. J. Jacobs (Freiburg)が選ばれ、Elsevierから賞金が授与された。また、発展途上国から総会に出席した4名の参加者に、IFCNからSpecial Travel Grantが与えられた。

 学術セッション以外の催しとしては、開会式では主催団体の一つである日本学術会議の金澤一郎会長に出席していただき、ご挨拶をいただいた。また、それに関連して菅直人総理大臣からメッセージをいただき、Master of Ceremonyの梶事務総長によって紹介された。開会講演として、上記Luecking、Nuwer両教授によるIFCNの歴史に関する特別講演と、平成21年に逝去されたベルギーのJohn Desmedt博士の追弔講演がFrancois Mauguiere教授によってなされた。なお、開会式の冒頭では、委員関係者による琴を演奏して参加者を迎えた。さらに、淡路人形浄瑠璃による「えびす舞」が公演され、そのなかの祝言にIFCNおよび本学会関係の文言を盛り込んだ台詞を太夫に謡っていただき、会場の雰囲気を和らげるのに一役買った。続くWelcome Receptionでは灘の酒樽を用いた鏡開きが行われて、枡酒が振舞われた。それにちなんで当組織委員長の友人Mark Hallett博士が次の英文俳句を詠まれた。’Drink it hot or cold In either square or round cup You will still get drunk’。開催3日目にホテルオークラ神戸で開かれたGala Dinnerでは、冒頭にkotist宮西希氏にモダン琴の演奏をしていただき、聴衆から高い評価を受けた。また、神戸は日本におけるジャズ発祥の地であることにちなんで、ジャズグループGreen Dolphinにボーカル付きで演奏をしていただき、これも好評であった。上記の人形浄瑠璃、モダン琴、およびジャズについては、いずれも主催者が現地を訪問してライブを聴き、演奏家と入念に打合せをした上で推薦したものであり、期待を裏切らないものであった。また、開催2日目に海外招聘者の約半数と国内組織委員を招待してポートピアホテルで開いたコングレスデイナーでは、本学会でポスターを発表された神経内科医でかつプロピアニストの上杉春雄氏に演奏していただき、聴衆を魅了した。また、当組織委員長がIFCNの立場からその歴史的写真をコミカルに編集したCD をナレーション付きで映写して、会場の雰囲気を盛り上げた。なお、上記の行事のほとんどすべてについて、予め主催者が会場を入念に視察し、できるだけ食事の内容も試食して、必要に応じて提言した。
 今回のソーシャルプログラムの目玉として、ツアーのほかにFriendship Salonがあげられる。なかでも、いけばなのレッスンと実演をしていただいたイングリッドさんは、当組織委員長の長年の友人ハンス リューダース博士の夫人であり、現在北米および南米で小原流いけばなのGrand Masterとして活躍している方である。ちょうどリューダース博士は本学会でBerger Lectureを担当されたことと相俟って、記念すべき大会となった。Friendship Salonでは書道や茶の湯も披露され、その他種々の日本文化の紹介とともに、同伴者だけでなく参加者からも高く評価された。
(7)その他特筆すべき事項:
 開催地を決定する平成18年の第28回 ICCN の総会では、シンガポールとの決戦投票となった。シンガポールは、従前の学問的業績等の実績はないものの、国際学会の誘致が国策となっているため、事前運動が積極的に展開され、国際観光のシンガポールでの初回開催であること、物価安などが強調され、有力な対抗馬となっていた。ICCN期間中に宣伝方針を再検討し、昨今の宿泊料がシングルなどでは安く設定されていること、学術研究のレベル、過去の実績などを強調し、総会でのプレゼンを経て、賛同を勝ち得ることができた。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成22年10月2日(土)
(2)開催場所:神戸新聞松方ホール(兵庫県神戸市)
(3)テーマ:すこやかに育てる たいせつに守る 脳とこころ
(4)参加者数、参加者の構成:400名、神戸市民を中心に兵庫県下から参加
(5)開催の意義:「臨床神経生理学」の研究発表を広く一般市民に正しく理解していただくとともに、臨床神経生理学で得られつつある学術的知見や基礎的概念を社会に還元することで、豊かな社会の実現に寄与することに少なからず貢献できた。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 講演会の内容は、本学会組織委員である古賀良彦教授(杏林大学医学部精神神経科)による講演「食事とブレインヘルス」、そして国際科学振興財団の大橋力主席研究員による講演「脳とこころをとりまく環境」が行われ、休憩時間をはさんで、芸能山城組によるガムラン音楽の演奏と舞踊のライブ実演が行われた。古賀先生は、食物やコーヒーの種類によって脳のはたらきに及ぼす影響が異なることを、生理学的なデータを示しながら興味深く話された。続いて大橋先生が、高周波音が脳に与える良い影響(hypersonic effect)について話された。大橋先生と当組織委員長の共同研究は20年近く前に始まり、当時京都大学医学部脳病態生理学講座(現脳機能総合研究センター)の大学院生本田学氏(現在国立精神・神経センター神経研究所部長)が大橋先生(アーチスト名:山城祥二)率いる芸能山城組のメンバーであったことに端を発する。当時大橋先生は、インドネシアのガムラン音楽にはそれだけでは人の耳には聞こえない40 kHzにも達する高周波音が含まれており、それを可聴域の音楽と混ぜて聞かせると人の脳によい影響を及ぼすことを見つけておられた。そこで、脳波とポジトロン断層法による脳血流画像を用いた共同研究を京大で実施して、その事実を支持するデータを発表した。講演会後半のガムラン音楽の実演では、聴衆にこの現象を実際に体験していただき聴衆を魅了した。実際にハイパーソニック効果があったかどうかは証明できないが、帰路に向かう聴衆の多くが笑顔を湛えておられたのは事実である。
(7) その他:
 この講演会は神戸市に共催していただき、神戸新聞、兵庫県医師会、神戸ゾンタクラブ、鳴門ゾンタクラブ、フェニックス神戸ゾンタクラブに後援していただいた。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
日本学術会議と共同主催することにより、本学会の社会的・学問的価値を示すことができ、国内外関連学会より数多くの協力を得て、準備、運営を円滑に進めることができた。開会式における金澤一郎会長のごあいさつ、菅直人総理大臣からのメッセージ紹介などや、主催者の推薦によって選ばれた9名の海外参加者への滞在費支給などにより、本学術大会に対しての国の支援が行なわれていることを、参加者に直接強調することができた。
 世界的経済不況に遭遇したため協賛金の募集が難しい状況において、会場の実質使用経費の支援を受けたのは、財政面において多大なる援助となり、その上、製薬団体連合会などの財政的支援を得る上で、重大なる後ろ盾となった。

             
(開会式で主催者挨拶を行う金澤日本学術会議会長)  (開会式における特別講演 (IFCN の歴史) の模様)           (セッション討論時の模様)                (ポスターセッション会場の模様)

         
     (若手研究者の授賞式の一場面)                   (参加受付の模様)               (フェアウェルレセプションのアトラクション風景)



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