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第36回国際生理学会世界大会
1 開催概要
(1)会 議 名 : (和文)第36回国際生理学会世界大会
          (英文)36th International Congress of Physiological Sciences (IUPS 2009)
(2)報 告 者 : 第36回国際生理学会世界大会組織委員会委員長 宮下 保司
(3)主   催 : 日本学術会議、日本生理学会
(4)開催期間 : 平成 21年7月27日(月)~ 8月1日(土)
(5)開催場所 : 国立京都国際会館(京都市左京区岩倉大鷺町)
(6)参加状況 : 72の 国と地域 4,089人(国外1,729人、国内2,360人)

2 会議結果概要
(1)会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:

 1889年第1回生理科学国際会議がスイスのバーゼルで開かれ、以後2度の大戦で中断されながらも開催が続けられ、1953年モントリオールの第19回会議に際して国際生理科学連合が設立された生理科学分野で最も歴史のある国際会議である。44年前の1965年には、東京にて第23回大会が開催され、47カ国から約3,000人が参加した。2001年8月、ニュージーランドのクライストチャーチで開催された第34回大会の席上で、2009年に開催される第36回大会を日本に招致することを提案し、圧倒的多数で支持され、ヨーロッパ2カ国を退けて、日本開催が内定された。これを受け、日本生理学会は、日本開催準備のために、国際生理学会第36回世界大会組織委員会を設置し、広義の生理科学(生理学及び関連科学を含む)の発展を推進するとともに、生理科学の知見の普及を促進し、更に生理科学に携わる科学者が交流する場を提供することを目的として、開催の準備を進めた。
(2)会議開催の意義・成果:
 日本における生理学研究の水準の高さや活発な活動を世界に向けて発信することが可能となり、国際的な生理科学の場における日本のプレゼンスを示すいい機会となった。更に日本の生理科学者が中心となって国際大会を組織することによって、生理学に携わる日本人研究者の意識改革が実現され、日本における生理学のより一層の発展を図り、国際的に活躍できる次世代の日本人研究者を養成することが期待される。
(3)当会議における主な議題(テーマ):
 「Function of Life: Elements and Integration(生体の機能:要素と統合)」
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 72の国と地域からの参加者総数 4,089名(同伴者を含む)で5日間に渡る学術プログラムを展開した。国外からの参加者1,729名、うち日本を除くアジア・アフリカ603名(アジア564名、アフリカ39名)となった。ことに、トラベルグラント受賞者136名のうちアジア・アフリカ66名となった。トラベルグラントは、若手研究者からの演題を各分野の査読担当者が査読し、優れた若手研究者の日本への渡航費を支援するもので、世界中から多数の若手研究者の本大会への参加を促すことを目的としていた。上記のような結果を得ることができて、我が国で開催する国際大会としての特徴が十分に発揮された意義の深い大会となった。アジア・アフリカ地域における生理科学の将来の発展に寄与するとともに、生理学分野における日本の国際的プレゼンスの向上につながるものと高く評価される。
(5)次回会議への動き:

 次回の国際生理学会は、2013年に英国のバーミンガムにて開催されることが決定した。また、次々回の国際生理学会は、2017年にブラジルのリオ・デジャネイロにて開催されることが内定した。
(6)当会議開催中の模様:
 この大会の開催にあたり、生理科学の先端的成果を世界中の研究者が持ち寄って21世紀に生命科学全体が直面する大きなチャレンジに立ち向かう出発点を作ること、そして日本における生理科学の活況を世界に向けてアピールし国内における生理科学全般の活性化・基盤整備をはかること、が目標として掲げられた。分子生物学的アプローチによって明らかになってきた分子的知識を統合し、細胞内・細胞外の信号伝達分子、受容体、細胞接着分子等の分子機械群がどのように共同して働いてシステム総体としての機能が生まれるのかを知ることが21世紀の生理学の使命である、との認識に基づくものであった。今大会における29の特別講演、573題のシンポジウム講演(うち、Regular symposium 324, Whole-day symposium 182, PSJ symposium 40, Workshop 21, Tutorial 6)、2,519の一般演題、およびこれらの発表を契機として巻き起こされた活発な討論と学問的交流は、こうした大会開催の目的を達成するに十分な広さと深さをもっていたと評価される。1889年に始まり120年におよぶ国際生理学会の歴史の中で、44年前(1965年)に日本で最初の国際生理学会大会が東京で開催されたが、この1965年大会は神経系におけるシナプス電位やCaによる細胞内信号伝達といった沢山の分子機構の発見の興奮のさなかにあった。1965年大会が分子細胞生理学の発展への扉を開いたと同様に、日本で2度目に開催されたこの2009年大会が、生理科学の新しい使命である統合への扉を開くことができたとすれば、2009年大会の目的は十分に達成されたと高く評価される。              
  さらに会場外では12のサテライトシンポジウムが開催され、京都国際会館講演会場では企業との共同企画として21のランチョンセミナーが開かれ、展示会場では46の企業展示(海外学会等のアカデミア展示4を含む)が出展されて、生理科学が広く社会全体との連携のもとに発展していく道筋が示された。7月29日~31日には、小中高校生を対象とした子供サイエンスプログラムが開催され、顔・認知、細胞、聴覚、心臓循環器、味覚等の各セッションに保護者を含めて計399人の参加があった。将来を担う世代への啓蒙教育活動としてその重要性がテレビ報道等にも取り上げられた。
  また、こうした学問的成果とともに、皇太子殿下にご臨席頂いた開会式Opening Ceremonyでは京舞が、Welcome Receptionでは和太鼓演奏が、Congress Dinner ではジャズバンド演奏が、閉会式Closing Ceremonyでは管弦楽演奏が披露され、中国式獅子舞や韓国舞踏なども含めて連日のアトラクションを世界各国からの参加者の皆様に充分堪能していただくことができたと自負している。こうしたアトラクションでも我が国で開催する国際大会としての特徴が十分発揮できたと思われる。この2009年大会が、世界の一流研究者のもたらす最先端の研究トピックスに接し、自分の研究成果を世界に向けて発信するとともに、参加者間の活発なface-to-faceの討論を通じて、参加72の国と地域の――ことに若い研究者間の――国際的共同作業への扉を開くことに成功したことが重要な成果であると高く評価されている。
(7)その他特筆すべき事項:
 次回2013年大会が英国、次々回2017年大会が中国との激しい招致合戦の末にブラジルにて開催されることが内定したように、国際生理学会大会の招致はまさにオリンピック招致と同様な国際競争のもとで行われている。2009年大会を日本に招致することに成功するに当たっては、関係諸方面からのお力添えが大変な力になったことを実感しております。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成 21年8月1日(土)13:30~16:00
(2)開催場所:国立京都国際会館(京都市左京区岩倉大鷺町)アネックスホール
(3)主なテーマ、サブテーマ:「科学と生命・知・こころ」
(4)参加者数、参加者の構成:200名 京都近郊在住の中高年者および学生が大半を占めた。
(5)開催の意義:
 第一線の生理科学研究者が一般社会生活にもたらす成果についてアピールし、生理学に関する興味を高めることができた。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 第一線の生理科学研究者および関連分野の研究者が一般市民向けに最先端の成果を広い視野から説き起こす機会は多くはない。21世紀に生命科学全体が直面する大きなチャレンジに立ち向かう新しい方向について社会に情報発信することは、生理科学にとっては勿論、広く生命科学全般の社会的アカウンタビリティを果たすことである。その意味で重要な社会還元に貢献できたと思う。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
(1) 皇太子殿下のご臨席
 本国際会議において、参加者を最も印象づけ、また、参加者に最も感動を与えたのは、皇太子殿下のご臨席と殿下の開会式におけるスピーチであった。
 殿下は、日本において初めて国際生理学会大会(東京大会)が開催された44年前から今回の京都大会に至る生理科学の進歩について述べられ、ことに、ヒトの全遺伝子が解読され、コンピュータ科学の進歩により、私たちの体を構成するタンパク質の微細な構造まで明らかになってきた現状に鑑みて、「本大会が,医学の基礎研究の向上と,これに関連する技術開発を促進し,人々の幸せに寄与することを願い,私のあいさつといたします。」というメッセージで挨拶を締めくくられた。このご挨拶に対し、内外の参加者の多くが深く感激し、会議終了まで会場のあちこちで感激や感想が語られた。
 さらに開会式では、日本学術会議会長(金澤一郎氏)、国際生理学会大会会長(宮下保司氏)、日本生理学会会長(岡田泰伸氏)、IUPS会長(金子章道氏)、次期IUPS会長(D. Noble氏)、等の主催者・来賓からのご挨拶もいただいた。
 開会式後お茶会が開催された。皇太子殿下を囲んで会議参加者が和やかに殿下と歓談し、さわやかな会議スタートとなった。
 皇太子殿下のご臨席は、最近発達しつつあるtwitter等のメディアを介して大会開催中から、更にその後、blog等をも介して海外でも大きな話題になり、内外の参加者より感激のメッセージが届いている。また、このご臨席に当たっては、日本学術会議の方々に大きな支えをいただいて実現の運びとなったところである。本報告を借りてお礼を申し上げたい。
(2) 広範な開催体制の構築
  上述のように、2009年大会を日本に招致する際に、国際生理学会IUPSの国内対応機関が日本学術会議であったことが招致成功への大きな要因であったと考えられます。更に、本大会は、日本生理学会のみならず、28もの関連学会が共同して開催することによって成立しました。またその他、9の臨床医学系学会の専門医・認定医の研修単位制度のポイント取得対象学会として認定されました。これらの共催・協催の広がりは、まさに日本学術会議との共同主催によって可能になったことであると深く感謝しております。また、勿論、IUPSそのものが日本においては日本学術会議が対応団体となっていることから、IUPSを通じて世界各国の生理学会との交流を深めることができたことも重要であったと考えております。
(開会式の模様、皇太子殿下のお言葉)

(開会式で挨拶をする金澤日本学術会議会長)


                              (メインホールでの講演の模様)

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