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第9回国際炎症学会
1 開催概要
(1)会 議 名 : (和文)第9回国際炎症学会
         (英文)The 9th World Congress on Inflammation
(2)報 告 者 : 第9回国際炎症学会組織委員会委員長 松島 綱治
(3)主   催 : 日本炎症・再生医学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 平成21年7月6日(月)~ 7月10日(金)
(5)開催場所 : 京王プラザホテル(東京都新宿区)
(6)参加状況 : 29ヵ国、753人(国外258人、国内495人)

2 会議結果概要
(1)会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:

 国際炎症学会(World Congress on Inflammation, WCI)は、国際炎症学会連合(International Association of Inflammation Societies : IAIS)が開催する会議であり、1993年に第1回学会がウイーンにて開催されて以来2年毎に開催されている。日本では1997年第3回大会を東京で開催した経緯があるが、その後、カナダのバンクーバー、オーストラリアのメルボルン、デンマークのコペンハーゲン等、主に欧米の都市を中心に開催されてきた。
 前々回のメルボルンでの学会以前から炎症研究の国際的水準、人口そして学会組織規模(日本炎症・再生医学会は1800名を有し、この分野では世界で有数の組織である。)などを考慮してIAISから再度日本での国際炎症学会開催を求める声が高まり、2005年8月20日開催のIAIS理事会で第9回国際炎症学会(The 9th World Congress on Inflammation, WCI)を2009年に日本で開催することが正式決定された。
(2)会議開催の意義・成果:
 本会議の意義は、疾患発症ならびに病態の基盤をなす炎症反応の機序解明に関する基礎研究から、それらに基づく新規予防・治療戦略の提供、創薬開発研究に関する国際的な発表の場を提供し、情報交換ならびに国際的人的交流・産学連携を促進すること等を目的とするものである。
 今回は、「炎症・修復・再生医学研究の新機軸(Innovative Research of Inflammation, Repair and Regenerative Medicine)」をメインテーマに、炎症基礎研究の到達点、炎症臓器修復・線維化機序への新視点、炎症臓器の再生医学・医療、新規炎症疾患治療標的と創薬・ドラッグデザイン等に関する多くの質の高い発表と討議が行われ、今後の炎症開発研究を推進する基盤を提供した。また、日本と欧米の研究者との交流のみならず、アジア諸国からの参加者との交流を行い、今後の炎症研究の連携を行うことを確認した。
(3)当会議における主な議題:
 「炎症・修復・再生医学研究の新機軸(Innovative Research of Inflammation, Repair and Regenerative Medicine)」を基に、自然免疫の認識機構、炎症性サイトカインによる炎症制御;炎症反応に伴う組織傷害、脂質因子やケモカインによる炎症臓器修復・線維化制御機序、抗炎症剤開発のための新戦略;新規炎症疾患治療標的と創薬・ドラッグデザイン等について発表、討論した。
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 この会議を日本で開催したことは、世界の最先端情報をもとに日本人が大きく貢献してきた炎症基礎研究のさらなる促進のみならず、世界のアカデミア・製薬企業・バイオベンチャー企業の炎症疾患治療戦略・創薬開発の方向性を知り、内外の産学の新たなパートナーシップを築き上げる非常にすばらしい機会となった。さらに、日本炎症・再生医学会が新しいコンセプトとして世界に先駆けて掲げた炎症学と再生医学の統合の合理性と重要性を世界に示す契機ともなり、この新しい炎症研究の方向性が認知される場としても有効であった。本会議の成果をもとに、我が国においてもさらなる炎症研究と再生医学の統合を、基礎研究レベルのみならず臨床応用においても促進し、新たな再生医療の発展へと繋げていくことが期待される。
(5)次回会議への動き:
 開催日時:2011年6月25日?29日
 会場:フランス・パリ国際会議場
 次回テーマ:「基礎研究を患者治療へと繋ぐ(Translating Basic Research to Patient Care)」として、今回のように炎症医学に関する基礎研究から臨床開発研究まで包括する国際会議を踏襲する。
(6)当会議開催中の模様:
 世界29ヵ国から753人(うち国外から258人)の参加者を得、6つの基調講演、2 つの特別講演、国際関連学会や企業の共催シンポジウムを含む18のシンポジウムを開催し、かつ、一般演題としての350演題が7つのワークショップとポスターにて発表・討論された。
 また、若手研究者奨励賞 (ヴァン・アーマン賞。リチャード・カールソン先生による賞の謂れの紹介の後、7人の候補者によるコンテスト)、女性炎症研究者賞講演(ロンドンインペリアルカレッジのマリア・G・ベルヴィシ先生によるプロスタノイドの気道収縮作用に関する研究)と炎症研究功労賞講演 (成宮周先生、京都大学によるPG受容体欠損マウス作成によるPGsの新しい生理機能、免疫制御作用に関する研究)などの受賞講演があった。
 一方、全員参加の懇親会として開催したウェルカムレセプションやバンケット、また、ワインを楽しみながら活発な討論が夜遅くまで行われたポスターディスカッションなどを通じ、研究者相互の交流と親睦を大いに深めることができた。
(7)その他特筆すべき事項:
 2005年8月20日開催のIAIS理事会で、第9回国際炎症学会を2009年に日本で開催することが正式に決定されて以来、4年間開催準備に邁進した。前回のコペンハーゲンでの国際会議では、パンフレットを配布するとともにブースを出して、新しさと古き日本の良さの両面を有する東京を宣伝するとともに、炎症研究と再生医学の統合を目指す日本炎症・再生医学会を紹介し、是非一人でも多くの参加をと呼びかけた。さらに、E-mailを通した様々な方々への参加呼びかけを繰り返し行った。また、今回の国際会議を契機にアジア諸国に対し、自国の炎症学会を創設した上で国際炎症学会連合(IAIS)に加盟してもらうよう、特に中国、上海へは直接赴き、呼びかけを行った。その結果、多くのアジア諸国からの参加を得る事ができた。  

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成21年7月10日(金)13:15?15:15
(2)開催場所:京王プラザホテル 5階コンコードA+B
(3)主なテーマ、サブテーマ:「骨の炎症・再生」歯周病とは? 関節リウマチとは?
(4)参加者数、参加者の構成:約200名、座長・講師・一般聴衆
(5)開催の意義:
 生体を保護するために起こる「炎症」という現象について、成人の多くが悩んでいる歯周病と関節リウマチという原因不明の炎症を例に取り、第一線の先生方にわかりやすく、ご講演いただいた。一般市民の視点に立った講演内容は、十分なご理解をいただいたものと思われる。公開シンポジウム開始1時間以上前から参加者による列ができ、また講演終了後も講師の先生への質問のために多くの聴衆が列をなしたのを見て今回の公開シンポジウムが市民の方々に大きな反響があったことに確信を得た。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 開催に際しては、より多くの市民の方に参加していただくため、都内の区役所や保健所、病院にチラシの設置をお願いするとともに、新宿区の広報誌や新聞(朝日新聞と日本経済新聞の二紙)の紙面上で周知するなど、広報に努めた。その結果、およそ200名という多くの市民の来場を得ることができたとともに、講師の先生方の市民の立場に立った非常にわかりやすい講演内容と進行の成果により、「炎症と再生」という、からだにとって実は身近なテーマについて、市民に考えていただくきっかけとなった。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
 日本学術会議との共同主催となったことにより、多くの学術団体の後援や製薬団体連合会などの財政的支援を得やすくした。また、国際的には、今回の国際会議に対して日本政府も大きな関心及び期待を持って支援していることを示す事ができ、大変心強く、また誇りに思った。

メイン会場 コンコードA+Bでのセッションの様子

Poster Discussion with Wine & cheese

市民公開講座

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