日本学術会議 トップページ > 国際会議・シンポジウムの開催 > 国際会議結果等
 
 
第5回世界水産学会議開催結果報告
1 開催概要
(1)会 議 名 : (和文)第5回世界水産学会議
         (英文)5th World Fisheries Congress (5th WFC2008)
(2)報 告 者 : 第5回世界水産学会議実行委員会委員長 渡部 終五
(3)主   催 : 日本水産学会、日本学術会議
(4)開催期間 : 平成 20年10月20日(月)?平成20年10月25日(土)
(5)開催場所 : パシフィコ横浜国際会議場(神奈川県横浜市)
(6)参加状況 : 56ヵ国/1地域・1,600人(国外530人、国内1,070人)

2 会議結果概要
(1)会議の背景(歴史)、日本開催の経緯:

 世界水産学会議は世界水産学協議会(World Council of Fisheries Science: WCFS)が主宰するものであり、1992年に第1回大会がギリシャ(アテネ)で開催されて以降、 4年ごとに開催されている。
 日本が、水産学、水産業の分野で世界の先導的役割を果たしてきた実績から、日本開催の機運が強まり、2004年5月の第4回世界水産学会議開催の際に、 世界水産学協議会で了承されるに至った。日本での開催は初めてである。本会議で世界各国の研究者が一堂に会し、最新の研究成果を報告・討論することにより、世界の水産学の現状を理解し、 将来の水産学・水産業のあるべき姿を模索して、水産学の発展に大きく資することが期待された。
(2)会議開催の意義・成果:
 世界水産学会議は、水産学分野において最も規模の大きな国際会議であり,2008年の日本での開催は、アジア地域では中国に続き2回目の開催となった。
 本会議の日本開催は、世界の水産海洋研究者、水産業従事者、特にアジア・アフリカ諸国の関係者に多大の影響を与え、他地域との連携強化も相乗し、 今後の水産業の地球レベルでの持続的発展に寄与したと思われる。
(3)当会議における主な議題(テーマ):
 世界の福祉と環境保全のための水産業
(4)当会議の主な成果(結果)、日本が果たした役割:
 この会議を日本で開催することにより、我が国のこの分野の科学者に世界の多くの科学者と直接交流する機会を与え、我が国の水産海洋学に関する研究を一層発展させる契機となったと思われる。 また、本国際会議を開催することにより、日本人科学者のもたらした成果について、社会に還元し、科学に関する一般社会の興味を大いに高めることができたと思われる。
(5)次回会議への動き: 記念式典の模様、天皇陛下のお言葉
 次回は2012年、イギリスのエジンバラで開催される。今回、議論されたテーマは未解決や発展的なものが多く、次回は、環境保全および資源保護を中心としたテーマになるものと思われる。
(6)当会議開催中の模様:
 10月22日の記念式典は、天皇皇后両陛下の御臨席、お言葉を賜ったほか、野田聖子内閣府特命担当大臣(科学技術政策、食品安全)から祝辞をいただくなど、盛大に執り行われた。また、両陛下には、 その後のレセプションにも御臨席いただき、世界各国から集まった研究者との間で国際的な親睦が図られた。
 会議参加者は約1,600名で,毎日,plenary lectureの後,11会場に分かれ,全部で約1200題の発表がされ,非常に活発な議論がなされた。

(記念式典の模様、天皇陛下のお言葉)
レセプションの模様記念式典で祝辞を述べる野田大臣記念式典で挨拶をする金澤日本学術会議会長記念式典で挨拶をする金澤日本学術会議会長






(写真左より、「レセプションの模様」「記念式典で祝辞を述べる野田大臣」「記念式典で挨拶をする金澤日本学術会議会長」「セッションの模様」)
(7)その他特筆すべき事項:
 本会議では,我が国におけるマグロの完全養殖の成功例や、絶滅危惧種を維持する為の新たな方法、代理親魚養殖の開発や遺伝子解析を用いた有用魚種の育種方法の研究等、 我が国の優れた研究成果を世界各国の多くの研究者にアピールできたものと思われる。また、基調講演者ならびに招待講演者の講演内容を記載したメモリアルブックを開催時に出版できたことは画期的であり、これも好評であった。

3 市民公開講座結果概要
(1)開催日時:平成20年10月25日(土)
(2)開催場所:横浜開港記念会館
(3)主なテーマ: 「青い目の魚たち?水産物貿易の現状と安全安心,日本の水産の未来」
(4)参加者数、参加者の構成:約60名。半数は本会議参加者。半数は学生や一般の参加者。
(5)開催の意義:
 本公開講座は水産物のグローバリゼイションとその安全性に焦点を当てて,水産庁の遠藤 久氏に「水産物貿易を巡る状況:グローバリゼーションの光と陰」、 水産総合研究センターの山下倫明氏に「水産物のトレーサビリティ:安全で安心な水産物の確保」、ノルウェー王国食品栄養研究所のアンネ-カタライン・ルンドバイ ハルダーセン氏に 「ノルウェーサーモンが増えた訳:ノルウェーにおける水産物の安全安心の確保政策」、東京大学の渡邊良朗氏に「これからの水産業:わが国および世界の水産資源の持続的利用の展望」 と題する講演をして頂いた。どの演題も今日の食の安全・安心に関わるものであり、一般市民の方にも大変興味深いものであり、大変意義のある講演会となった。
(6)社会に対する還元効果とその成果:
 いずれの講演の内容も、中学生、高校生ならびに一般の市民でも十分理解できるものであった。また、今日的な興味の大きいものであり、 社会に対する還元効果は大きかったのではないか思われる。開催するに当たってはできるだけ多くの人に出席してもらう為に、ポスター、パンフレットを作成し、横浜市の学校および公共施設に配布・掲示し、 参加を促した。

4 日本学術会議との共同主催の意義・成果
(1) 天皇皇后両陛下の御臨席
 本国際会議において、出席者を最も印象づけ、感激させたのは、天皇皇后両陛下の御臨席と天皇陛下の記念式典でのお言葉である。陛下は「水産学が研究対象とする海は世界をつなげています。その海の環境を守り、水産生物を持続的に利用していくためには、世界の水産学者の国境を越えた協力が重要と思います。」と述べられた。このお言葉は、英訳のテロップも表示され、内外の参加者の多くが深く感激し、会議終了まで会場のあちこちで感想が語られた。その後、両陛下の御臨席は、海外でも大きな話題となった。
 さらに記念式典では、日本学術会議会長(金澤一郎氏)、日本水産学会会長(會田勝己氏)、WCFS副会長(B.Knuth氏)等の主催者代表をはじめ、来賓の野田聖子内閣特命担当大臣からの御挨拶も頂いた。記念式典後に、レセプションが開催され、天皇皇后両陛下を囲んで会議参加者が和やかに歓談した。
 また、この御臨席は、日本学術会議の方々の大きな支えによって初めて可能となったことである。本報告を借りて厚くお礼を申し上げる。
(2) パシフィコ横浜での開催
 パシフィコ横浜国際会議場において学術的な国際会議を開催するのは、資金面を考えても、一般的には難しい。日本学術会議の援助があって初めて可能になった。一方、この場所で開催できたことで、外国の参加者からは絶賛を浴びた。
(3) 水産学と総合的な科学との関連
 今回、日本の水産学研究者が一丸となって参加したことにより、国際的で、より強い研究グループに成長するきっかけとなった。また、通年の学会では行われない国際協力や水産教育に関する議論があったことにも大きな意義がある。さらに、学生や若手研究者が多数参加したが、これら参加者は将来の水産学の発展に大きく寄与するものと思われる。
 日本学術会議が国際会議を共同主催する意義は、開催を機に専門の中だけに閉じこもっていない総合的な科学分野への広がりの道を開く点にもある。本会議ではこの点を認識し関連分野の講演者をお招きした。この企画への参加者の理解も得られ、大変意義深いものとなった。

このページのトップへ
日本学術会議 Science Council of Japan

〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 電話番号 03-3403-3793(代表) © Science Council of Japan