代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  

    (和文)   第25回科学史技術史国際会議
    (英文)   XXV International Congress of History of Science and Technology

  2. 会 期

    平成29年7月23日~7月29日(7日間)

  3. 会議出席者名

    木本忠昭、溝口元、市川浩、橋本毅彦

  4. 会議開催地

    ブラジル国リオデジャネイロ市

  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)

    56ヶ国1074名 日本人26名

  6. 会議内容  
    • 日程及び会議の主な議題

      7月23日開会式およびplenary Talk 、7月24~29日学術大会および各賞授賞式、7月26日総会1、7月29日総会2、7月29日閉会式若手研究者受賞講演等が行われた。
      総会議題は、前期活動報告・会計報告、commission やsection等の組織の新設や名称変更や構造的整備、役員改選、新規加盟国の承認、定款改定、次期開催地等が審議され、いずれも承認された(新役員、次期開催地は選挙)。

    • 会議における審議内容・成果

      総会での議事はいずれも承認されたが、内容的に突起しておくべきことは定款が改定され、そのなかでgender や地域・文化のバランスを図った組織運営を打ち出したことである。これは運営規則にも反映されることになる。タンザニア、南アフリカ、チリの3国が新規加盟承認されたが、南半球ではじめて開催されたという今回の大会の基本的な特徴がここにも反映されており、科学史技術史の学問が先進横行諸国あるいは西欧に限定された学問ではなく、全世界的な普遍性を持っていることを示した。組織構造の整理、science, technology and diplomacyというコミッションも新設された.科学・技術(史)事象(事件)が国際問題になっていることを受けたものである。

      学術大会の共通テーマは、「地域と国際間における科学・技術・医学」とうことで、科学・技術・医学のシンポジウムが、109セッション、個別発表セッションが50テーマ、そして7本のPlenary lecturesが組まれた。予稿レジメには、シンポ論文が約790篇、個別論文が約940本の掲載があった。セッション会場が、約350コマ(会場数x時間帯)ほど組まれた。内容的には、単に先進工業諸国の新科学理論が途上国に伝搬されるという視点から、その伝搬の社会的諸関係による科学・技術の機能の仕方の分析や、かってJ.Needhamが提起した「なぜ近代科学は西欧にのみ発生したのか」という問題が、中国文明だけでなく中南米・南半球をも視野に入れた新たな問題提起として捉えられるようになった。伝搬過程の問題は社会構造の問題も帝国主義や植民地の科学、医療の問題が、国と国の間の社会的政治的関係と科学・技術の問題として全世界的な視野で比較検討するという、新たな地平に入ったと言える。

    • 会議において日本が果たした役割

      学術的には個別論文やシンポジウムの組織で貢献した。

    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)

      *はじめて南半球で世界的規模の科学史・技術史の国際会議が開催され、学術研究視点の新たな地平が開かれたこと。
      *南半球の国々の新加盟があったこと
      *中国からの参加が増加したこと



会議の模様

今回大会の特徴の第一としては、はじめて南半球で大会が開催されたということであり、科学史技術史の学問が、単に「近代科学発祥」の先進工業国、欧米だけのものでなく、全世界規模の普遍的学問の一分野であることを外形的に示したということである。科学史技術史が欧米以外に広がったということで、ブラジルが例外ではないことは、次回大会のホスト国に、南半球に位置するオーストラリアとニュージランドの2国が立候補したことも示している.この地域的変化の特徴は、学術内容にも反映され、科学・技術・医学など諸学問が単に西洋起源のものが世界に伝搬したと言うことだけでなく、伝搬形態、伝搬しなかったもの、逆に西洋起源以外のものの意味等が、世界史の展開の中で解明されるべきであることが強く表れた。ここから、諸国の関係や帝国や植民地、物流と科学展開、医学薬学とその地域的および世界史的特殊性と普遍性等々が各国や諸地域の諸文化との関係でも比較的に検討が進められた。

また、IUHPSTのもう一つの部門DLMPSTの代表としてBenedikt Loewe教授が総会で挨拶したほか、ICSUからも代表が送られてきて、ICSUの意義について説明があった。

さらに、IUHPSTのDHSTとDLMPSTとの合同委員会が設置され、1日を使いシンポジウムが開催された。この合同委員会(Joint Commission)は、これまであまり協力関係がなかった科学史と科学哲学の研究者の交流の活性化を図り、2013年に設置され、両部会が協力して運営を進めるようになったものである。今回の会議ではそのような研究の趣旨に沿う優秀な論文に対して賞が与えられた。午前と午後を使ったシンポジウムでは、その受賞論文の講演を含み、7編の論文が発表された。いずれも科学史の事例に基づきつつ、科学哲学的な問題を追及するものであり、複数の理論の共存や概念の形成過程などについて発表と議論がなされた。このような両部会の協力によるシンポジウムは2年ごとに国際科学史学会と国際科学哲学学会で開催されていくことになっている。

次回開催予定 2022年7月末  チェコ・プラハ

このページのトップへ

日本学術会議 Science Council of Japan

〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 電話番号 03-3403-3793(代表) © Science Council of Japan