代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   第19回国際自動制御連盟世界大会、総会、執行役員会
               (英文)   The 19th IFAC World Congress, General Assembly, Executive Board
  2. 会 期  2014年8月22日~30日(9日間)
  3. 会議出席者名  片山 徹
  4. 会議開催地  南アフリカ、ケープタウン市
  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)
      73カ国、約2,000人、日本人82人 (事前登録データから)
  6. 会議内容  
    • 世界大会の日程と概要
      第19回IFAC世界大会は8月24日(日曜日)の夕刻から開会式とWelcome Reception で開幕し、8月29日(金曜日)の閉会式 とFarewell Party をもって6日間にわたる会議を閉幕した。
      8月24日の開会式では、4つの2014 IFAC Major Awards、すなわちQuazza Medal、Nichols Medal、Industrial Achievement Award、およびHigh Impact Paper Award の各授賞式が行われた。また 8月23~24日の2日間、合計11件のTutorialsが開催され、最新の学術的研究成果の発表は8月25~29日までの5日間にわたって行われた。全338セッション(一般269、招待57、ポスター12)、基調講演10、特別基調講演1、特別パネルセッション2が実施された。
    • 総会および役員会の日程
      世界大会と並行して総会、理事会および各種委員会が行われた。以下には、 主要な役員会の日程を掲載するが、39の技術委員会Technical Committee のほとんどが会期中にそれぞれ委員会を開催している。
      • 8月22日(金)執行委員会Executive Board ( EB)のサブ委員会である財務、出版、政策、顕彰などの委員会
      • 8月23日(土)今期最終技術委員会 Outgoing Technical Board(TB)
                今期最終執行委員会 Outgoing Executive Board (EB)
      • 8月24日(日)今期最終理事会 Outgoing Council Meeting
      • 8月25日(月)総会 General Assembly
      • 8月29日(金)新技術委員会 Incoming TB
      • 新執行委員会 Incoming EB
      • 8月30日(土)新理事会 Incoming Council Meeting
    • 会議における審議内容・決定事項
      議題は多岐にわたるが、基本的には会長Ian Craig(南アフリカ)の下で実施した過去3年間のIFAC活動の総括、総会における事業報告と新役員の選出、および新役員による3年間の活動計画の審議が中心である。主な決定事項は以下の通りである。
      • - IFAC Young Achievement Award新設のためのタスクフォースの設置
      • - 学会と産業界の協調を目的とした産業タスクフォースの設置
      • - 新IFAC Websiteの立ち上げ、IFACブランドと新しいロゴマークの選定
      • - IFAC Open Access Journal の検討;IFAC Newsletterの刷新
      • - Paper-On-Line(POL)編集委員会の新設、Science Directへ移行
      • - NMOの活動をしやすくするための新しいガイドラインの作成
    • 会議において日本が果たした役割
      • (a) 今期2011-2014の日本人IFAC役員は以下の通りである。
        • - 原 辰次(東京大学教授)理事、政策委員会委員
        • - 淺間 一(東京大学教授)TB委員、CC7委員長
        • - 片山 徹(京都大学名誉教授)EB委員、顕彰委員会委員長
        • - 野口 伸(北海道大学教授)TC8.1委員長
        • - 石井秀明(東京工業大学准教授)TC1.5委員長
      • (b) 淺間 ― 教授(東京大学)が8月25日の夕刻に基調講演を行った(タイトルは基調講演一覧を参照)。福島原発の後処理を事故当時から時系列的に「ロボット」がどのような役割を果たしてきたを詳細に紹介して、参加者に多くの感銘を与えた。とくに、事後処理がいかに多くの問題を抱えているか、初期の段階ではロボットがいかに無力であったかということを具体的に示し、失敗から多くのことを学びつつ、また世界中から様々な協力を得ながら現在に至っていることを多くの実例をもって示された。
      • (c) 8月26日の最初のパネル討論:「学会と産業界の協調」では浅野一哉主席研究員(JFEスチール)がパネラーとして参加し、鉄鋼業界から新しい要求を学会側に明確に示す必要があることを主張した。また、2番目のパネル討論:「制御分野の社会貢献と研究費」では原 辰次教授(東京大学)がパネラーとして参加し、福島原発事故を教訓として制御科学の向かう方向を再検討し、社会や環境問題を軸にした方向にシフトすることを提言した。
      • (d) 8月26日夕刻にはIFAC分科会は米国、中国、トルコ と4カ国共同のFriendship Evening Dinner Receptionを開催し、200名近い今期と次期のIFAC委員など招待した。日本からは17名が参加した。大型モニタによるビデオ映像により日本や横浜市を紹介するとともに、日本のIFAC活動の歴史と現状を紹介したUSBデータ“IFAC in Japan”と淺間一教授の基調講演の概要をまとめた資料などを配布し、招待者に2023年開催のIFAC World Congressの日本誘致に向けた広報活動を積極的に行った。
      • (e) 8月28日のバンケットでは山本 裕教授(京都大学)がサプル値制御、信号処理、無限次元システムの制御に対する貢献によってIFAC Fellowの称号を受賞した。
      • (f) 8月29日午後4時15分からの閉会表彰式には片山顕彰委員会委員長と石井 Young Author Prize (YAP) 選考委員会委員(委員長代行)が出席した。片山委員はTextbook Prize の賞状を Milaslov Krstic 教授に授与した。また石井委員はYAPの賞状をそれぞれFinalists と最優秀賞者に授与した。
      • (g) 次期2014-2017の日本人IFAC新役員は以下のように決定した。 - 原 辰次(東大教授):理事Councilおよび庶務会計Administration & Finance委員会 副委員長
        • - 淺間 一(東大教授):TB委員、CC7委員長
        • - 中須賀真一(東大教授):TC7.3委員長
        • - 石井秀明(東工大准教授):TC1.5委員長
        • - 井村順一(東工大教授):政策 Policy 委員会委員


会議の模様

  • 世界大会の概要

    (日本人) 採択された論文の総著者数は201であり、国別順位は11位であった。前回の5位からかなり後退している。これは、南アフリカが日本からかなり遠方であることによるものと考えられる。次回フランスの世界大会には以前のレベルに回復することが期待される。

    (日本人以外)論文の総著者数で見ると、中国(735)、フランス(680)、米国(532)、イタリア(519)、ドイツ(517)の順であった。(論文の国別の採択数は発表されていない。)
    最新の自動制御の理論、技術、応用に関する基調講演は以下の通りであった。

    (日本人)Hajime Asama (Japan), Robot and remote-controlled machine technology for accident response and decommissioning of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. (会議において日本人が果たした役割 (b)項を参照のこと。)

    (日本人以外)

    • - Naomi E. Leonhard (USA), Coordinated control of multi-agent systems: Lessons from collective animal behavior
    • - H. Frontzek (Germany), Bionic learning network - Inspired by nature
    • - David Vos (USA), Safety critical control systems: A manned and unmanned autonomous aircraft perspective
    • - Ernst Scholtz (USA), The evolving electrical grid: From slow and passive to fast and active
    • - Thomas Jones (South Africa), Large transportation aircraft: Control challenges of the future
    • - Lei Guo (China), How much uncertainty can a feedback mechanism deal with?
    • - Jack Little (USA), The impact of model based design on controls, today and in the future
    • - M. Khammash (Swizerland), Cybergenetics: Feedback control of living cells at the gene level
    • - Joseph Z. Lu (USA), Bridging the gap between planning and control: A cascade MPC approach
    • - R. Murray (USA), Specification, verification and synthesis of networked control systems

    基調講演、招待論文、一般投稿論文、ポスターを含めて1999編の論文が発表された。投稿論文は2648編であり、採択率は75%であった。前回ミラノで開催された第18回IFAC世界大会では、3629編の投稿に対して2478編が採択されており、投稿数において約1,000編、採択数において約500編の減少となった。これは、地域的な影響があったと思われる。
    採択論文を分野別にみると、

    • -制御理論(システムと信号処理、制御系設計):42%
    • -制御技術(情報・通信・認知、メカトロニクス、ロボット):17%
    • -産業応用(製造・物流、電力・鉄鋼・化学プロセス、運輸・自動車・航空など、バイオ・医療・生態系、社会システム):41%
    であった。また、論文のキーワードの上位6個は以下の通りであった。
    • (1) Smart grids
    • (2) Motion control systems
    • (3) Control of renewable energy resources
    • (4) Multi-agent systems
    • (5) Optimal operation and control of power systems
    • (6) Modeling and simulation of power systems

    このことから、今回の特徴としては、制御理論がやや減少して、メカトロニクスや電力・エネルギー分野の論文が増加している。 全体的な傾向としては前回大会の場合と同じく、ネットワークシステムの制御理論とその応用、システム生物学と制御理論、生物から学ぶメカトロニクス、環境問題、社会問題、都市の交通問題などを具体的に解決するシステムアプローチにも引き続き多くの関心が見られた。
    8月29日午後4時15分からの閉会表彰式では、Textbook Prize、 Automatica, Control Engineering Practice, Journal of Process Control, Engineering Application of Artificial Intelligence, Mechatronics の各論文賞およびYoung Author Prize (YAP) とApplication Paper Prize (APP) に対する賞状が授与された。その後、主催者NOCの代表から閉会の辞があり、Ian Craig会長からJanan Zaytoon新会長にIFACのTapestryが渡り、2014年IFACケープタウン大会は閉幕した。


  • 次回開催予定
     第20回IFAC世界大会:

    2017年7月9日から2017年7月14日まで 6日間
    開催地 フランス国 ツルーズ市
    代表者 Janan Zaytoon, IFAC President 2014-2017

    主なテーマ:人類の福祉に貢献する自動制御の理論と応用を推進することがIFACの基本理念である。39のIFAC技術委員会TCがカバーする広範囲にわたる制御理論、制御技術とそれらの応用に関する最新の研究成果の発表と相互の意見交換を通して、この分野の一層の発展を図る。
    なお、総会、理事会、各種委員会などの期間を含めると、全体の会期は 2017年7月7日~7月15日(9日間)となる。


  • 各種役員会の概要
    • - 8月23日(9:00~14:35)

      今期最終の技術委員会TBには淺間委員(CC7:委員長)が出席した。片山委員は午前中のみオブザーバーとして出席。各調整委員会(Coordinating Committee; CC)から3年間の活動状況の報告があった。その後、TB副委員長のレポートと退任の挨拶があり、続いてTB委員長 Iven Mareelsが過去3年間の技術委員会の活動を総括し、Web siteの充実、Papers-On-Line (POL) の充実、TB内のコミュニケーションの重要性を指摘した。また、39の技術委員会 TC において約2000人のメンバーが活動しているが、メンバーの数はフランス、アメリカ、ドイツ、イギリス、イタリアの順であり、日本と中国からは比較的少ないという指摘があった。(昼休みの休憩) 午後1時からはIPC委員長のEdward Boje(南アフリカ)が今回のIFAC世界大会の論文数などを中心にその概要を紹介した。 続いて2017年世界大会および2020年世界大会に関する取組の状況がそれぞれ説明された。最後に、出版委員会委員長Denis Dochain から POLのEditorial Boardと新しいOpen Access Journal: Nonlinear Analysis and Hybrid Systemsの出版計画などが説明された。また過去3年間で65のIFAC Proceedings (論文総数8,252)がPOLに掲載されたことがPOL委員長 Juan de la Puente から報告された。

    • - 8月23日(13:00~16:00)

      今期最終の執行委員会EBには片山委員が出席した。前回の議事録の承認に続いて委員長報告があった。政策委員会Policy Committeeの仕事はIFAC戦略的タスクフォースのサポートであり、今期は新TaglineとWebpageのタスクフォースのサポートを行ってきたことが報告された。顕彰委員会 Awards Committeeの報告は片山顕彰委員会委員長が行った。口頭発表も評価の対象となるYoung Author Prize (YAP) とApplication Paper Prize (APP) 以外のすべての賞の選考を終了したこと、また YAPの応募要項の改定について説明した。庶務および会計委員会 Administration & Financeでは、事務局の運営、職員交代、ニュースレターのWebへの移行などが報告された。会計状態は2012年以降かなり良好で、引き続き2014年も良好であることが説明された。これは職員の交代による人件費の低下、IFAC Journals の売り上げの増加によっている。各NMOからの会費収入は総収入の約40%である。また未加盟国からのIFAC加盟を促進するために、NMOの会費検討タスクフォースから以下の提案があった。

      提案1:減額会費 Reduced-feeカテゴリーの導入
      提案2:制限付きの会員Limited membershipカテゴリーの導入
      その他、旧ProceedingsをスキャンしてPOLにアップロードすること、 2017年世界大会における60周年事業の企画について報告された。

    • - 8月24日(9:00~16:00)

      今期最終の理事会Councilには原委員が出席した。前日のTBおよびEB両委員会を受けて開催。議題を簡単にまとめておく。

      1.会長Ian Craig の3年間2011-2014 の活動報告(TB、EB、世界大会等について総括したもの)
      2. TB委員長 Iven Mareelsの活動報告
      3. EB委員長 Roger Goodallの報告
      4. IFAC基金 Pedro Albertosの報告。委員長はAlberto Isidoriに交代
      5. 出版事業委員会委員長 Peter Flemingの報告
      6. 総会 General Assemblyへの準備:IFAC憲章の一部改正と香港の加盟
      7. 2017年世界大会および2020年世界大会について

    • - 8月25日に開催された総会 General Assembly には、片山委員、原委員、淺間委員、木村委員が出席した。総会は加盟国が各1票の投票権を持ち,各国3名が出席できる.またIFAC役員のオブザーバー出席が認められている。   午後1:30 出席確認。簡単に項目ごとに述べる。

      1. 会長、技術委員会委員長、および執行委員会委員長からの報告、続いて事務局長、会員理事および会計理事からの報告が行われた。報告は、すべて承認された。
      2. IFAC 憲章・規約の改正
      (2-1) 役員選考委員会からの提案:Article 30(a)の改正 可決
      ≪TB委員会の活動範囲の増加に伴い、前回2014年、次回2017年、および次次回 2020年世界大会のIPC委員長3名をTBメンバー(ex officio)に加える。これによって、教育、出版、広報などを担当する4名の常任のTBメンバーを新たに選ぶことが可能になる。≫
      (2-2) IFAC会長提案:Article 22(a)の改正 可決
      ≪引退した会長、副会長、会計担当など理事の経験者をIFAC顧問に任命する制度があるが、今回これを実情に合わせて、IFAC Secretaryおよび顕彰委員会、政策委員会、出版委員会の各委員長経験者を含めることにする。≫
      3. 香港の加盟:可決 ≪香港は一度脱退したが、別の団体が新たなNMOとして加盟の申請をして、今回それが承認された。≫
      4. 役員選挙
      (4-1) IFAC 役員の選出:会長、次期会長、副会長2名、前期会長、財務委員の6名の新役員を投票により選出した。
      (4-2) Councilメンバー(新理事)の選出:12名

    • >5. 続いて,新会長が抱負を述べ、さらに2017年世界大会、および2020年世界大会の概要説明があった。16:00 閉会。

    • - 8月25日に開催された政策委員会 Policy Committeeには井村委員が出席した。新会長 Janan Zaytoonから(1) 新しいNMOの活動のためのガイドライン作成、(2) 若手研究者・学生活動のための委員会設置の可能性調査・企画、および (3) IFAC Newsletterの刷新などの方針が示された。
    • - 8月29日 午前、新技術委員会TBが開催された。議題を簡単に述べる。

      1.新委員の紹介と出席確認。
      2. 前TB委員長Even Mareelsから引き継ぎ事項などを説明。
      3. 新委員長Frank DoyleからTBの組織と3年間のプランの説明。2つのシンポジウムDYCOPS とCABの統合について説明があった。
      4. 39の技術委員会TCの新委員長の任命。これによって、2014-2017年のTBのすべての体制が整った。
      5. POLに関する報告と出版委員会からの報告。

    • >6. 2014年世界大会の報告、2017年、2020年世界大会のプラン。

    • - 8月29日午後

      新執行委員会 EB が開催された。今後3年間の各サブ委員会のプランが紹介された。議題の項目のみ簡単に述べる。

      1. 政策委員会:上記8月25日の委員会の内容に同じ。
      2. 出版委員会:IFAC Open Access Journalの検討、POLの編集委員会の新設、Science Directへの移行、過去の論文のスキャン等の説明があった。
      3. 顕彰委員会:各賞選考委員会の新委員長の提案、YAP(35歳以下)の規定見直し、ガイドラインの改定、IPP(ポスター論文賞)の規定見直し、Fellow選考委員会をAwards Committeeの傘下に移行、IFAC Young Achievement Award新設のためのタスクフォースなど。
      4. 庶務と会計委員会:新しいIFAC Website、IFACブランドのトレードマークと新ロゴ、その他Policy Committeeと連携したタスクなど。

    • - 8月30日(9:00~12:30)

      新理事会Councilには原委員が出席。片山委員はオブザーバーとして出席した。簡単に項目ごとに述べる。

      1. 出席確認に続いて、前回8月24日の理事会Outgoingの議事録の承認。
      2. 新会長Janan Zaytoonの報告、新技術委員会委員長Frank Doyleの報告、新執行委員会委員長Sergio Bittantiの報告および加盟国の状況、会計報告があった。
      3. 産業タスクフォースの委員長Tariq Samadの報告
      4. 役員の任命
      (4-1) IFAC Major Awardsの選考委員長の任命
      (4-2) フェロー選考委員長の任命

    • (4-3) 出版事業委員会のIFAC側の委員の任命 5. 出版事業委員会からの報告、IFAC基金からの報告、およびIFAC戦略的将来計画に関する報告があった。
      6. 2017 年世界大会、2020年世界大会からの最新情報について
      7. 次回理事会は2015年7月1~3日シカゴで開催の米国自動制御連合講演会ACCに合わせて開催することを決定した。

    以上で、すべての会議を終了した。


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