代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   国際宗教学宗教史学会 理事会
              (同学会の地域学会である、アフリカ宗教学会の第6回大会と同時開催)
               (英文)    International Association for the History of Religions,Executive Committee Meeting
              The 6th Conference of the African Association for the Study of Religion
  2. 会 期  2014年7月29日~8月2日(5日間)
  3. 会議出席者名  藤原聖子
  4. 会議開催地  南アフリカ共和国・ケープタウン市
  5. 参加状況  理事会 参加国 8カ国  参加者数 8名  日本人参加者 1名
    (アフリカ宗教学会 参加国 17カ国 参加者数 70名 日本人参加者 1名)
  6. 会議内容  
    • 国際宗教学宗教史学会・理事会においては、主として以下の議事が討議された。
      ・会長、事務局長、会計による報告
      ・他の委員による報告
      ・学会内のコミュニケーション促進方法の検討
      ・各国・地域の宗教学会の状況、新規加入
      ・地域学会のサーヴェイ計画
      ・アフリカ学術振興基金の運営
      ・CIPSHの運営状況の報告と検討
      ・学会名称の変更案の検討
      ・名誉会員予備選出
      ・広報パンフレット制作の検討

      アフリカ宗教学会の大会テーマは、「アフリカとディアスポラ状況のアフリカにおける宗教・エコロジー・環境」であった。
      主な提出論文(全体セッションでの発表)は以下の通りである。
        「アフリカから『アバター』までの宗教・自然と環境保全運動」
        「南アフリカのエコ・ジャスティス実践(南ア宗教団体環境保全組織SAFCEIの報告)」
        「南アの低木草原地帯の木々に隠れた神話をたどって―宗教と環境保護の交差―」
        「アフリカの環境破壊の根本的原因の省察」
        「宗教研究の方法論」

会議の模様

特に活発な議論が行われたのは、学会名称の変更案と学会内のコミュニケーション促進をめぐってである。

学会名称の問題は、単なる表記上のことではなく、国際宗教学宗教史学会のアイデンティティに関わるものである。本学会の呼称は、日本語の表記では慣例的に「宗教学」と「宗教史学」を併記しているが、英文名称は「history」の方のみである。これは、ヨーロッパ19世紀来の文献学的(philology)・歴史学的伝統から本学会が生まれたことを象徴している。しかし、その後宗教学では、人類学的方法、社会学的方法、心理学的方法などの多様なアプローチがとられるようになった。日本語表記で「宗教学宗教史学」意訳としているのも、「宗教史学」のみでは狭いという印象を日本の宗教学者は受けるためである。

英文表記の方も過去に何度か議論されたのだが、History of Religionsが今日まで用いられ続けてきている。昨年来、変更を求める意見が再燃しているのは、科学主義的な宗教学が台頭してきていること、学会が世界的に活動する上で、ヨーロッパ的伝統に立った名称は理解されにくいと考えられることによる。

これについては、各国の会員学会から意見を募り、来年の国際委員会・総会で議論の上決定することになった。しかし、会員学会の中には、上記のような問題が存在することを十分に把握していないケースや、会員に情報が行きとどかず、会員の総意をまとめにくいケースがある。さらには、ディシプリンのアイデンティティにこだわって学会名称を議論すること自体を無益であると考える会員もいる。そういった消極的・積極的に無関心な会員と、理事会や名称問題に関心をもつ会員との間に対話が成立しにくい状況が、もう一つの問題である。学会内のコミュニケーションの促進が課題となっている所以である。

同時開催のアフリカ宗教学会は、国際宗教学宗教史学会の地域学会である。アフリカにおける宗教研究を促進することを目的に、国際的な学術交流の場として1992年に創設された。数年ごとに大会を開催しており、その第6回目となる本大会は、「アフリカとディアスポラ状況のアフリカにおける宗教・エコロジー・環境」を共通テーマとして掲げた。ケニアの環境保護活動家、ワンガリ・マータイ氏が2004年にノーベル賞を受賞したことは記憶に新しい。本大会は、その後も深刻化し続ける環境問題を前に、宗教学者がどのような役割を果たしうるかを議論することを目的とした。宗教学者のみならず環境学者も参加し、学際的な共同研究の可能性を検討したり、アフリカ各国の公共政策や教育界に問題の重要性を伝える手立てを議論したりした。宗教団体を基盤とする活動家と宗教学者の間の真摯な対話も重ねられた。

参加者のおおよその内訳は、ヨーロッパや北米出身の研究者が3割、アフリカ出身で現在は欧米の大学に所属する研究者が2割、アフリカ出身でアフリカの大学に所属する研究者が5割といったところであった。会場はアフリカ諸国の中で近年経済発展が最も著しいとされる南アフリカ共和国・ケープタウン市であった。人口の8割はクリスチャンであるため、1967年にリン・ホワイトJrが現代の環境危機の歴史的源泉をキリスト教に求めて以来、キリスト教的環境倫理をどのようにして新たに構築するかという課題は、南アフリカでも重要なものとして共有されていた。聖書学・哲学的考察、南ア先住民宗教と環境の関係に関するフィールドワーク調査の報告、環境政策の分析、活動家の実践報告などの多様な発表が続き、討論も盛り上がった。

報告者以外に日本人の参加者はいなかったが、参加者の中には、半月前に横浜で開催された世界社会学会議に参加していた者が複数名いたこともあり、日本に対する関心は高かった。また、国際宗教学宗教史学会の理事会には、今期(2010~2014年)は毎回、日本から代表が参加しており、国際学術交流・促進に対する日本の積極性を示すことができている。今回の理事会でも、名誉会員に、新たに日本人の宗教学者を推薦することが決定した。



次回開催予定  2015年 8月


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