代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   国際美術史学会マルセイユ・コロッキウム、総会および理事会
               (英文)    CIHA Maseille Colloquium, General Assembly, and Board Meetings
  2. 会 期  2014年6月25日~28日(4日間)
  3. 会議出席者名  中村 俊春(京都大学大学院教授、日本学術会議連携会員)
  4. 会議開催地  マルセイユ(フランス)、ヨーロッパ地中海文明博物館(MuCEM)
  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)
      参加国 21か国、参加者数 約200人(うち日本人 3人)
  6. 会議内容  
    • 日程及び会議の主な議題
      2014年6月25日-6月28日
      コロッキウムのテーマ Civilization(s): the Mediterranean and beyond
                  ((諸)文明-地中海とその向こう)

      講演および研究発表
      6月26日 9:30-12:30、14:00- 17:30
      6月27日 14:00-17:20
      6月28日 9:30-12:15
      (コロッキウムの内容については、7会議の模様を参照のこと)

      理事会(理事会メンバーのみが出席)
      6月25日 17:30-19:00
      6月27日 11:00-13:00、18:00-19:30
      6月25日の理事会では、2013年10月31日の理事会議事録の承認、2013年の会計報告、2016年の北京大会の準備に関する報告と議論、2020年の大会の開催候補地の決定についての報告、2015年に開催予定のコロッキウムについての報告、委員の任期などに関する学会規則の改正案に関する試案の提示と議論が行われた。また、クロアチアとチュニジアの加盟が承認された。6月27日午前と夕方の理事会においては、2016年の北京大会の21のセッションの国際議長の選出が行われた。

      総会(理事会メンバー、加盟国代表委員、代理委員が出席)
      6月27日 9:00-11:00
      総会では、2012年7月15日と18日の総会議事録の承認、2013年の会計報告、2016年の北京大会の準備に関する報告と議論、2020年の大会の開催候補地の決定についての報告、2015年に開催予定のコロッキウムについての報告、委員の任期などに関する学会規則の改正案に関する試案の提示と議論が行われた。また、クロアチアとチュニジアの加盟が承認された。

    • 会議における審議内容・成果
      理事会および総会へ提出された決議案はすべて承認された。学会規則の改正案については、各国の国内委員会で審議した後、2015年5月にチューリッヒで開催される理事会でさらに検討されることになった。なお、次回の総会は、2016年9月の北京大会の会期中である。

    • 会議において日本が果たした役割
      <報告者の中村俊春は、日本の代表委員の一人として総会に出席したほか、理事会のメンバーである小佐野重利氏(東京大学大学院教授)が日本での公務のために出席不可能であったために、規定によって代理として理事会にも出席し、審議に参加し、北京大会の国際議長選出の決定に際しては投票も行った。

    • その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
      総会において、新たにクロアチアおよびチュニジアの国際美術史学会への加入が承認された。チュニジアは、南アフリカに次いで、アフリカ大陸からの2つ目の加入国である。もともとドイツ、フランス、イタリアなど西欧各国の美術史学会を中心として誕生した国際美術史学会であるが、近年のブラジル、中国における活発な活動に顕著なように、文字通りグローバルな広がりをもった学会として発展してきている。今後、美術史研究におけるグローバル化は、いっそう進展していくことと推測される。

会議の模様

コロッキウムは、「文明という用語の歴史的考察」、「関連づけとアイデンティティー」、「諸文明のフォーラムとしての地中海」、「博物館と文明」という4つのセクションからなり、①文明という用語の再検証、②「普遍的文明」が提唱される中での地域固有文明の強調、③内海、島、港と交易といった特徴を有する地中海、あるいは、それと類似した地理的条件を有する土地における「諸文明の出会いの場」としての機能、④美術作品と、特に美的意図なしに生み出された文明の産物である「モノ」を混在させた博物館での展示のあり方、以上4つの基本的問題を軸として多様な研究成果が発表された。

近年の美術史研究の大きな特徴として、グローバル美術史という視点、および「モノ」としての観点からの美術作品についての再考をあげることができるだろう。グローバル美術史は、西洋の美術作品を中心とした美術史研究のあり方を見直して、世界のあらゆる地域、時代の美術作品に視野を広げて美術史を再構築せんとする試みであり、「モノ」としての美術作品の再考とは、美的鑑賞のために生み出された特別なモノと特権化され、その特殊的なあり方を強調されてきた美術作品を、他のモノとの関連、境界づけから捉え直そうとする研究傾向であるが、本コロッキウムにおいては、まさしく、この2つの視点が前面に押し出されていたと言える。

コロッキウムでは、異文化交流の結果生まれた、幅広い地域、時代の美術作品とともに、歴史考古遺物、家具など日常の生活道具なども紹介され、美術史家、考古学者、人類学者たちによって活発な議論が繰り広げられた。こうして文明をキーワードに、学際的な研究の方法が模索されたのである。

日本人による発表は1つで、イスタンブール工科大学助教授のミユキ・アオキ=ジラルデッリ氏が、建築史家、伊東忠太の地中海沿岸地域をめぐる調査旅行と、その後彼が提示した独創的な建築文化史観との関連について非常に興味深い議論を展開された。その発表の行われた「博物館と文明」のセッションの議長は、イギリス代表委員で理事会メンバーの渡辺俊夫氏(ロンドン芸術大学教授)が務められた。

フランスで開催されたコロッキウムということもあり、参加者の大部分はフランス人の研究者で、発表も大部分はフランス語で行われ、数は少ないが英語による発表もあった。


国際美術史学会マルセイユ・コロッキウム会場となったヨーロッパ地中海文明博物館(MuCEM) コロッキウムにおける研究発表の様子
国際美術史学会マルセイユ・コロッキウム会場
となったヨーロッパ地中海文明博物館(MuCEM)
コロッキウムにおける研究発表の様子


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