代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   第11回国際人権ネットワーク隔年総会
               (英文)   Eleventh Meeting of the International Human Rights Network of Academies and Scholarly Societies
  2. 会 期  2014年5月25日~27日(3日間)
  3. 会議出席者名  吾郷眞一
  4. 会議開催地  ハレ(ドイツ・ザクセンアンハルト州)
  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)
      29か国、39人、日本人1人
  6. 会議内容  
    • ①日程と主な議題
      1日目は総論的な講演・特別講演のあと、特に大きな人権侵害がなされているバハレーンからの参加者による報告、昨年のネットワーク有志によるトルコ調査ミッションの報告、エジプトからの参加者による現在のエジプトにおける状況などの紹介があった。
      2日目は29人の参加者が簡単に自己紹介を行った後、事務局長からネットワーク活動の概要が紹介され、いくつかの一般問題(教育の権利と科学教育・医療中立・インターネットと人権)が討議されるとともに、シリア、トルコ、エジプトのそれぞれの状況に対して何をすべきか、何ができるかが審議された。
      3日目には参加者が米州、北アフリカおよび中東、サハラ以南アフリカ、アジア、欧州の5つのグループに分かれそれぞれの地域特有の問題が話し合われた。最後に、会議の最終まとめ(プレスリリース)について審議され採択された。

    • ②会議における審議内容・成果
      エジプト、シリア、トルコのそれぞれについて当事者(いずれも迫害を受けて国外に逃れているか、2年以上の拘束から解放されて刑事手続き中)が会議に招聘されたことは、事実を知ったうえで各国アカデミーが行動をとるということを行うためには極めて有意義だった。なお、トルコの参加者は偶然にも昨年日本学術会議が発出した嘆願書の対象となったエルサンリ教授であり、彼女と3日間にわたり意見交換ができたことは感慨深いものがあった。現在釈放されているものの、秋に予定されている公判でどのような判決が出るか予断を許さず、学術会議の嘆願書も一定の働きをするかもしれない。エジプトのシャヒン教授の場合も、現在拘束されているわけではないものの、本国に帰国すれば逮捕されることは明白で、ネットワークの支援を大いに期待していた。シリアは迫害の程度が異常に大きく、アルズービ医師の話は画像を伴っていなかったことが救いであるほど壮絶だった。この侵害の重大さに鑑み、ネットワーク会議として統一見解をまとめて発表することが提案されたが、それぞれのアカデミーでは別の対応がありうることから(私は、日本学術会議の場合、基準に従うと医療活動は学術研究ではないので、いわゆる医療の中立性問題は非対応ということになってしまうと述べた)、執行委員会の責任で文書を発表し、各国のアカデミーがそれに同調するのであればそれぞれ嘆願書を出してもらえればいい、ということに落ち着いた。
      3日目の地域別グループに分かれての討議は、すでに取り上げた個別問題を繰り返し議論することが多かったため、次期からは初日に行うほうが良いのではないかということになった。
      初日の特別講演は1993年のノーベル生理学・医学賞のロバート・リチャーズ博士によるものだったが、「ノーベル賞受賞者を善行に動員すること」と題され、氏がいかにして単独で、時には他の受賞者の応援を得て、たとえばリビアのカダフィ政権と果敢に交渉し、罪もないブルガリア人医療従事者を解放に向かわせたかを熱く語った。参加者に感銘を与えるとともに、会期中ずっと議論に参加し、ネットワーク活動の強化に貢献した。

    • ③会議において日本が果たした役割
      2年前の台北会期においても表明したように、日本学術会議の立場は「研究者がその学術研究の過程で人権侵害を受けた時に行動を起こす」であり、今度の場合もいかに事態が深刻であろうと、医師・看護師がその医療活動の過程で侵害を受けることは対応範囲を超えることを説明した。ただ、シリアの件について第11回ネットワーク隔年総会が決議として声明を出すことについて反対するものではない、と述べたが、同様な問題は他の国のアカデミーも抱えていることであるから、プレスリリースの中では執行委員会の名でシリアへの対応を行うこととなった。
      一方、5月初めから拘束されている(最近釈放された模様)中国人法学研究者のことについてアラートが来ないのはなぜかを質したところ、このネットワークは法律家の迫害について情報源が少ないことがその原因との答えがあり、学術会議が嘆願書を発出することになれば、ネットワークのアラートに載せるということだった。

    • ④その他特筆すべき事項(共同声明や新聞等で報道されたもの等)
      この会議自体が報道された情報は得ていないが、過去のネットワークの活動が報道されたものが配布資料の中に多く示されている。


会議の模様

素晴らしい環境(昔の宮殿だった建物をそのまま改装して利用しているドイツ科学アカデミー本部)の中での会議は、早朝からかなり遅い時間までの密度の濃い審議が行われても大きい疲れを感じさせず、用意されたホテルも快適で、主催者のきめの細かい準備・支援も手伝って効率的に推移した。参加者同士の交流もよく行われ、ネットワークとしての一体性が感じられるようになったのではないかと思われる


次回は、日程(2016年春)以外今のところ未定だが、事務局長の話では近々発表される模様である。


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