代表派遣会議出席報告

会議概要

  1. 名 称  (和文)   第42回地質科学国際研究計画(IGCP)本部理事会・総会
               (英文)   42nd Session of the Scientific Board of International Geoscience Programme (IGCP)
  2. 会 期  平成26年 2月17日~19日(3日間)
  3. 会議出席者名
       齋藤文紀
  4. 会議開催地   フランス国パリ市
  5. 参加状況  (参加国数、参加者数、日本人参加者)
      約25か国、約70名  日本人参加者 1名
  6. 会議内容

    本会議は、地質科学国際研究計画 (IGCP)の事務局を担っているユネスコ全球観測課が中心になり、年1回、現在進行中のプロジェクトの評価と新たに申請されたプロジェクトの採否などを中心に、IGCPの活動全体の審議のために毎年2月にユネスコ本部で開催しているものである。43年目に入るIGCPは、地球科学に関して、世界各国、特に南北間の研究者の連携のためのプラットフォームを提供するために、プロジェクトにシードマネーを付与することによって、研究と連携を促進する活動を行っている。

    日程及び会議の主な議題と概要:

    日程は、平成26年2月17日~19日の3日間であるが、報告者はIGCP国内委員会の委員長として理事以外の出席が求められている2月19日のみに参加した。2月19日の議題は以下の通りである。(1)ハン、ユネスコ生態地球科学部門長による挨拶、(2)オバーハンスリIUGS(国際地質科学連合)会長の挨拶、(3)マッキーバー全地球観測課長・IGCP事務局長の挨拶、(4)ビッカーズ・リッチ科学委員会議長による昨年度と今年度のIGCPの予算、プロジェクトの概要、(5)IUGS会長によるIUGSの活動報告、特にフューチャーアースに関連したプログラムの報告、(6)IGCPの過去40年間のプロジェクトのアセスメント報告、(7)IGCP議長の司会によるIGCPの5つのテーマリーダからの事業報告、(8)IGCP国内委員会報告(各国約5分)、(9)バジャ氏によるスエーデン国際開発協力機構の支援プロジェクトの報告、(10)トテウ氏によるSIDAプロジェクトのサハラ周辺域の廃止した鉱山の環境アセスメントプロジェクトの報告、(11)ロッシ氏による国際地質図委員会(CGMW)の2013年と2014年の活動報告。

    会議における審議内容・成果

    「社会に貢献する地球科学」とい視点、またICSUが推進している「Future Earth」の観点からも、地球科学が地球環境問題や社会に果たせる役割が大きく、この方向をより明確にしてIGCPのプロジェクトが推進される傾向にある。過去40年間のプロジェクトの推移が報告されたが、その解析でも明瞭に変化が表れている。Dr。 Katrien Heirmanが報告したアセスメントでは、1981-1982、 19991-1992、 2001-2002、 2011-2012の4つの期間の 196プロジェクト、336の年報告、489人のプロジェクト代表、参加した161ヶ国を対象に、分析が行われた。この4つの時期を比べると、プロジェクトでは水文地質と地質災害のプロジェクトが近年増えていること、アフリカの研究テーマが増えていること、プロジェクトの代表者の数と女性の代表者が増えていること、途上国やアフリカからの代表者が増えていること、アフリカとアジアからの参加が増えていること、プロジェクトの総数は減っているが会合と論文数が増えていること、シードマネーとして資金は潤沢ではないが他の予算を獲得するのに貢献していること、途上国の研究者との連携や共同研究に最も大きなメリットがあること、途上国の学生などの若い研究者の更なる参加が望まれること、特に知識の交換、人材育成、東西また南北の国々の連携が高く評価でき、今後もこれらが期待されることが報告された。ユネスコにおける地球科学に関連したプロジェクトの中でもIGCPは、最も成功している、また現在も中核をなすプロジェクトである。このIGCPを通じて、アフリカなどへの地球科学の普及、女性地球科学者の支援、社会への貢献などを関連する機関と連携して行うことが明確に示された。またジオパークの活動を正式にIGCPの一部として取り込み、今後1年間の間にその組織と体制が決められることが報告された。
    IGCPの体制、予算、プロジェクトなどについては、会議の模様に記述した。

    会議において日本が果たした役割

    会議に先立ち、以下の報告書を提出し、会議においては口頭で説明した。
      JAPAN CONTRIBUTION TO THE IGCP、 2013
      (International Geoscience Programme)
      ACTIVITY REPORT in 2013、 24p
    日本からはIGCPプロジェクトの共同リーダーのプロジェクトが3件、現在科学委員会のボードメンバーには、42名の内2名が日本から参加している。

    その他特筆すべき事項

    特になし

会議の模様

(1)IGCPの執行部の体制は以下の通りである。IGCPには5つのテーマが設定されており、執行委員会(理事会)は、これらの代表、及びスエーデン支援のプロジェクト(SIDA)の代表と事務局、これらに加えて、支援母体であるユネスコと国際地質科学連合からの委員から構成されている。
Chair: Patricia Vikers-Rich
テーマリーダー
Earth Resources: Robert Moritz
Global Chang: Guy Narbonne
Geohazards: Andrej Goser
Hydrogeology: Gil Mahe
Geodynamics George Gibson
SIDA projects: ViVi Vajda

(2)IGCPの2013年と2014年の予算収入は以下の通り
2013年予算収入
UNESCO: US$ 88,200
IUGS: US$ 70,000
PR China: US$ 20,000
SIDA (Sweden): US$ 128,200
2014年予算収入
UNESCO: US$ 65,876
IUGS: US$ 90,000
PR China: US$ 20,000

(3)プロジェクト
2013年は、総計で30プロジェクトが推進されており、このうち7つのプロジェクトがSIDAプロジェクトで、2つが資金支援無しである。2014年は23プロジェクトが継続し、そのうちの7つがSIDAプロジェクトである。2013年に受け取った新規プロジェクト提案は5件(地質災害2件、地球変化3件)で、採択の審議が17-18日に行われた。結果は1-2ヶ月後に正式に発表される。日本人が代表に加わっているプロジェクトが1件新規プロジェクトとして提案されている。

(その他)
IGCPの体制や取り組み方は2012年を境に大きく変化し、昨年の第41回は、その最初の総会であり、今年が2年目である。昨年の大会と比べて、内容が豊富で、各国からの報告も昨年の2件と比べて、10ヶ国近くから報告があり、充実した内容となってきた。特にIGCPの過去40年間のアセスメントは、明瞭にその傾向を示しており、IGCPが時勢に対応して、発展してきていることを示している。その役割の中心は、途上国や若手研究者の支援や、南北や東西の研究者及び途上国の研究者との連携や共同研究の推進にあり、その役割を着実に担ってきている。財政的には、ユネスコからの資金援助が減額している中で、スエーデンや中国の援助で維持している。 IGCPが始まった頃の日本は、IGCPから大きな恩恵を受けてきたが、現在は先進国として途上国を支援する立場になった。これらを踏まえた上で、日本の貢献を再度検討する必要があることを痛感した。

次回開催予定 27年2月16日~18日

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