代表派遣会議出席報告

会議概要

1 名 称   第32回南極研究科学委員会及び公開科学会議
       (XXXⅡ Scientific Committee on Antarctic Research (SCAR) and Open Science Conference )

2 会 期 2012年7月15日~25日(11日間)
3 会議出席者名 白石 和行(国際対応分科会・SCAR小委員)
4 会議開催地 ポートランド(アメリカ合衆国)
5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)
        参加国:約40カ国
        参加者:約2000名
        日本人参加者:17名

6 会議内容
・日程及び会議の主な議題
 今回期は、3つのSCAR常設科学グループ(Standing Scientific Group*:SSG)によるビジネス会合、公開科学会議、SCAR総会の3つの行事で構成された。以下、日程順に内容を示す。
 7月15日 : 3つのSSG及び課題別ワークショップ、プロジェクト研究集会、COMANPシンポジウムなどが開かれた。
 7月16~19日:16日午前、3件の記念講演会。午後から、公開科学会議(Open Science Conference)。パラレルセッションとポスターセッション。パラレルセッションでは、約10数課題のプログラムやプロジェクトグループの合同ビジネス会合を含めた集会。
 7月20日:再び、3つの常設科学グループ(SSG)に分かれて総括会議。今後のSSG新役員の選出、活動方針などを決議。
 7月23日~25日:SCAR代表者会議(総会)。活動報告、SSG及びプログラムグループからの報告、財務報告と分担金値上げの可否についての議論、役員選出、中期計画の検討と承認、次回以降の開催地決定など。
・会議における審議内容・成果
 1.北極研究との協力が大事であることが、様々な場で強調された。北極の学術組織であるIASC(国際北極科学委員会)の事務局長が参加しており、情報交換を積極的におこなっていた。
 2.南極の生態系保護に関する議論が高まっている。移入種問題(Aliens in Antarctica Project)を皮切りに南極における保全生態学が勢いを増しているが、環境保護から保護区の管理問題にまで踏み込んだ研究発表が目立った。保全に関するシンポジウムや特別講演もあり、南極研究の一つの柱となりつつある。
 3.21世紀に於ける南極や南極海の環境変化が、世界の気候に与える影響を予測することの重要性が強調された。
・会議において日本が果たした役割
 1.地球科学SSGでは、我が国の命名した南極地名の提案を行い承認された。
 2.2013年度のSCAR奨学金受賞者5名のうちの一人として国立極地研究所PDの辻本惠君が選ばれた。
7 会議の模様
 1.代表者会議での大きな争点は、分担金の値上げであった。いくつかの国が政府の財政状況の悪化から猛烈な反対意見を述べた一方、やむを得ないという意見もあった。経費節減努力(特に事務局経費)が不十分であるという指摘もあった。最終的には決議を取ることとなり、5カ国が棄権、残りは賛成として可決された。日本も財政事情が厳しいことを説明し、極力経費節減努力を行うことを主張したが、欧米やアジア諸国の動きを観察した結果、最終的には「消極的賛成」とした。
 2.SCARは近年、次世代の要請に大きな力を注いでいる。APECS(Association of Polar Early Carrier Scientists)という、若手研究者の組織を応援し、また優秀研究者の表彰や研究費補助、外国研究機関への留学援助などが具体的活動である。今回、インドが10万ドルの資金を拠出し、Visiting Professor 制度をつくることになった。これにより、経験豊かな研究者を他機関に派遣し、研究交流を促進するとともに、訪問機関の若手研究者の指導も期待するというものである。
 3.新規加盟を希望している国々は、以下の通り。オーストリア、ベラルーシ、チェコ、コロンビア。また、最近、トルコとイランからも接触がある。イスラム圏からの参入が目立ってきたが、最近南極観測を始めたというパキスタンからは参入の意志は表明されていない。
 4.次回は、ニュージーランド王立協会主催で、 オークランド(ニュージーランド)において、平成 26年 8月 22日から平成 26年9月3日までの13日間、開催される。


SCAR総会(ポートランド大学構内)
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