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代表派遣会議出席報告
1 名 称   第22回国際結晶学連合会議
        (XXII Congress and General Assembly of the International Union of Crystallography)
2 会 期  平成23年8月22日 ~ 30日(10日間)
3 会議出席者名  甲斐 泰(IUCr分科会委員)、若槻壮市(IUCr分科会委員)
4 会議開催地  マドリード(スペイン)
5 参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)
   73か国、2,768名(うち日本人 289名)
6 会議内容

     国際結晶学連合会議は、その英文名がCongress and General Assembly of the International Union of Crystallographyとあるように、コングレスと総会が並行して行われる国際会議である。今回の会議では、コングレスとして全体講演4、基調講演36、
    マイクロシンポジウム98という構成であった。各マイクロシンポジウムは口頭発表セッション2時間35分およびポスター発表数十からなり、ポスター発表総数は1,500件を超えるものであった。 会期は8月22日から30日であったが、最終日はコングレツツアー
    という形で予備日となっており、実質の会期は29日までであった。
     学術セッションのスケジュールは以下の通りであった。
      ・9:00- 9:50;全体講演あるいは基調講演(3会場パラレル)
      ・10:15-12:50;マイクロシンポジウム I(7会場パラレル)
      ・15:00-17:35; マイクロシンポジウム II(7会場パラレル)
      ・17:40-18:30;全体講演あるいは基調講演(3会場パラレル)
     また、総会は学術セッション終了後の19:30-21:30のスケジュールで、合計3回開催された。
     ソーシャルイベントとしては、22日の開会式とレセプション、25日のカルチャーイベント、26日のコングレスディナー、29日の閉会式などがあった。

7 会議の模様
     日本人基調講演者及び全体講演者の氏名とタイトルは以下のとおりである。
     日本人の基調講演:
      KN01;Tomitake Tsukihara, Structural studies of macromolecular assemblies playing roles in transportation
      KN06;Makoto Fujita, Crystalline Molecular Flasks
      KN09;Kei Hirose, Discovery of Post-Perovskite at High Pressure and Its Geophysical Implications
      KN31;So Iwata, Molecular basis of antihistamine specificity against Human Histamine H1 receptor
     全体講演:
      PL01;Thomas Steitz, From the Structure and Function of the Ribosome to New Antibiotics
      PL02;Omar M. Yaghi, Heterogeneity within Order in Metal-Organic Frameworks
      PL03;Venki Ramakrishna, Unraveling the structure of ribosome and its role in decoding the genetic message
      PL04; Ada E. Yonath, The Spectacular Architecture of the Ribosome and Clues about its Origin
     総会は学術セッション終了後、19:30-21:30に3回開催された。国際結晶学連合に対する分担金によって代議員数が決められている。5人の代議員を持つ国は、米国、英国、ロシアで、4人が日本、ドイツ、フランス、中国などとなっている。
     23日の第1回総会から、事前に各国代議員に配布された総会の議案書に従って議事が進められた。加入団体の入会・退会状況の承認、定款、規定の変更などの承認に引き続き、理事会報告が行われた。財務報告が大きな内容であった。
    また、IUCrが授与するEwald賞の決定について報告された。
     24日の第2回総会では、各種委員会、IUCrの下部組織に相当するACA(アメリカ結晶学会)、ECA(ヨーロッパ結晶学会)、AsCA(アジア結晶学会)の報告があった。また、2014年のIUCrコングレスはカナダで開催されることとに決まっているが、
    開催都市モントリオール、開催期間8月5~12日が最終的に承認された。最後に、2017年に開催されるIUCrコングレスの開催地に立候補しているチェコのプラハとインドのハイデラバードが誘致演説を行った。
     27日の第3回総会では、2017年の開催地について、各国代議員による投票が行われ、インドのハイデラバードに決定した。また、各種委員会の委員については、各国から推薦されたものについて理事会が審議し、ほぼ推薦通り決定した。続いて、
    理事会委員の改選について説明があった。会長については、候補者が1名しかいないため、無投票でインドのR. Desiraju教授が承認された。副会長には2名の候補者があり、投票した結果、フランスのC. Lecomte教授に決まった。理事は定員が6名
    であるが2名が3年の任期を残しており残留する。残り4名の理事を選挙で決めるが、2008年の理事会で、理事の中には少なくとも1名、ヨーロッパ、アメリカ、アジア地域から選ばれたものが含まれること、ということが決められた。2名の残留理事は
    いずれもヨーロッパ地域に属するため、まず、アメリカとアジアから各1名の理事を選ぶことになった。アメリカ地域から2名の候補者がいたため投票した結果、アメリカのM. L. Hackert教授が選出された。
     アジア地域はアジアとオセアニア諸国を含んでおり、5名の候補者がいた。その中に、日本から推薦している若槻壮市教授が含まれている。投票は、得票数の最小の候補者を1名ずつ除きながら投票を繰り返し、過半数得票するものが現れるまで
    続けられた。その結果、オーストラリアのJ. M. Guss教授と日本の若槻教授が最後に残ったが、最終投票の結果Guss教授に決まった。6名の理事のうち4名がこのようにして決まり、残り2名の理事は地域にとらわれず選出することになり投票が行わ
    れた。その結果若槻教授は8名の候補者のうち3位まで残ったが、惜しくも理事当選には至らなかった。
     3年前の第21回国際結晶学連合会議は大阪で開催された。その際のIUCr会長は大橋裕二東京工業大学名誉教授であり、組織委員長は月原冨武大阪大学名誉教授、国際プログラム委員会委員長は藤井保彦東京大学名誉教授、事務局長は
    甲斐 泰大阪大学名誉教授が担当した。日本結晶学会を中心として結晶学関連研究者が総力を挙げて取り組んだ一大事業となったが、海外の参加者から高い評価を得ることが出来た。会議終了後、次期開催国となったスペインの組織委員長に対し、
    開会式などの録画を送付したところ非常に喜ばれ、今回の会議の参考になったことに謝辞が述べられた。
     国際結晶学連合会議への日本からの参加者は毎回上位3位に入っており、2005年にイタリアのフローレンスで開かれた会議には米国に次ぐ参加者があったが、今回も主催国のスペイン(485人)に次いでアメリカ(290人)とほぼ同数(289人)の参加者があった。
     日本からの参加者には若い研究者も非常に多く、今後の日本の結晶学の発展が大いに期待できる。

   次回開催予定 2014年 8月5日~12日、カナダ、モントリオール



メイン会場で開かれたカルチャーイベント。スペイン各地の舞踊と音楽が順に紹介された。

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