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代表派遣会議出席報告
1 名 称  国際宗教学宗教史会議 第20回世界大会
        XXth World Congress of the International Association for the History of Religions
2 会 期  2010年8月15日~2010年8月21日(7日間)
3 会議出席者名 島薗 進(日本宗教学会会長)
              月本 昭男(国際宗教学宗教史学会前副会長)
              澤井 義次(日本宗教学会国際委員会委員長)
              藤原 聖子(国際宗教学宗教史学会理事)
             (以上は国際委員会への出席者。会議全体の参加者数は下記の通り)
4 会議開催地  カナダ・トロント市
5 参加状況 (参加国数、参加者数、日本人参加者)  51カ国、633名 、日本人参加者数93名(内、日本宗教学会会員数72名)
6 会議内容

・日程
  8月15日 オープニング・セッション、理事会
  16~17日 基調講演・パネル発表
  18日 国際委員会
  19~20日 基調講演・パネル発表、理事会
  21日 クロージング・セッション、総会
・会議の主な議題
 本会議は、世界諸地域の宗教学者の研究交流を目的とするものである。大会ごとに特色あるテーマが設定され、今大会のテーマは「Religion:A Human Phenomenon(宗教―人間的現象―)」であった。大会開催期間、連日1回または2回設けられた基調講演は、このテーマに即した内容のものであった。それ以外のパネル発表は、「Description(記述)」「Interpretation(解釈)」「Explanation(説明)」「Reflection(省察)」「Innovations(革新)」の5つのセクションに従って組織された。また、大会中に、国際委員会、理事会、総会が開催され、本学会の運営について審議がなされた。
・ 会議における審議内容・成果
  学術面での成果としては、世界諸地域の宗教研究者が研究交流を行ったこと、また、北米において近年台頭している、認知科学的宗教研究の現状が認識されたことである。
  学会運営面での審議の成果は、本学会のアカデミック・プロファイルをより鮮明にするために、定款を改定したこと、また会員間のネットワーク・情報化を推進する方策が具体化したことである。
・ 会議において日本が果たした役割
  日本人参加者は、日本の宗教研究の現状について、日本の諸宗教の動向、宗教概念批判、ジェンダー研究、宗教体験、神話、宗教学史、宗教教育といった多様なテーマに分かれて、諸外国の研究者とともにパネルを構成し、討議を行った。このように、テーマ設定においても、討議内容においても、えてして欧米中心になりがちな大会の国際性を高めることに貢献した。
 また、学術面でも運営面でも、欧米先進国と途上国間の格差や認識の違いが浮上しているが、これについても日本は、学会が多元的な世界の宗教研究の現状を反映し、多様な地域の研究の交流が可能になる方向で貢献した。

7 会議の模様

  本大会で目立った学術動向は、認知科学的宗教研究をはじめとした、自然科学分野への宗教研究の学際化である。たとえば「神」のような超越的存在の観念、あるいは「信仰」という心理作用は、どのような情報処理システムとして説明できるか、また、それらは人類の進化の過程でどのように形成されたかを解明する研究である。今期から学会の加盟団体として、国際宗教認知科学学会The International Association for the Cognitive Science of Religion (IACSR) が加わり、その会員による基調講演や研究発表がなされた。国際宗教学宗教史学会は、その発足時においては、宗教史や比較宗教学を中心とする人文的宗教研究から構成されていたが、20世紀後半には社会科学的アプローチが盛んになり、今大会ではさらに自然科学的アプローチが加わったことで、学際性が急速に高まっている。
 他方、本学会は、加盟団体を、従来の欧米諸国からそれ以外の世界諸地域、特にイスラーム圏へ拡大することも目指している。しかし、自然科学的アプローチは、神秘や超越性を自然現象に還元する側面をもつ。このため、学会の非西洋圏への地域的拡大と、学際化が両立しうるか、今後それら両方向において発展することが可能かが重要課題となった。

次回開催予定: 2015年(開催地未定)



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