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代表派遣会議出席報告
1 名 称  第31回南極研究科学委員会
       Scientific Committee on Antarctic Research
2 会 期  2010年7月30日~2010年8月11日(13日間)
3 会議出席者名 山内 恭
4 会議開催地  アルゼンチン・ブエノスアイレス
5 参加状況 (参加国数、参加者数、日本人参加者)  参加国約30カ国、人数800人、日本人参加15名(発表25件)
6 会議内容

・日程及び会議の主な議題
  2010年7月30日より8月11日まで開催された。初めの4日間は様々なビジネスミーティングに充てられ、中4日間、8月3日から6日まではオープン・サイエンス・コンフェレンス(OSC: Open Science Conference)の第4回目、そして最後の8月9日から11日は代表者会合とされた。
・ 会議における審議内容・成果
  代表者会合においては、モナコの準会員としての加盟を承認したほか、副議長2名を改選した。中心の議事は、3常置科学委員会や科学研究プロジェクト(5件+新規1件)その他の活動状況の報告とその承認であり、新しく南極天文・天体物理研究プロジェクトが発足した(近年の最も目覚ましい新規研究課題)。今後の活動への足がかりとして、来年度からの戦略プラン5カ年計画が審議され、来年度からスタートする。その他、予算(予算の窮乏状況から2012年からの値上げが提案されたが、承認されず)、次回2012年(米ポートランド州オレゴン)の日程が決まり、2014年次々回の開催地の提案があった(ニュージーランド・クライストチャーチ)。
・ 会議において日本が果たした役割
  各常置科学委員会にてわが国の活動状況を紹介したほか、物理科学常置科学委員会にては、今年度新しく昭和基地に設置する大型大気レーダーについて紹介し、今後の国際共同研究に重要な貢献をするものとして賞賛された。同じく、物理科学常置委員会の議長として、山内恭が選出された。科学シンポジウムにおいて、内陸ドームふじ基地での新しい天文観測はじめ、多くの科学的成果を上げていることが示された。代表者会合においては、来年度からの次期の戦略プランの議論に重要な視点(長期モニタリングなど持続的観測の維持の重要性)を取り入れるべきと提案し、多くの賛同を得、また分担金の値上げについては、難しい状況を発言した。
・ その他特筆すべき事項
  SCAR-COMNAP(南極観測実施責任者協議会)合同の会合にて、開会式の模様が現地新聞に報道された。

7 会議の模様

  代表者会合は31正規会員国の正副代表、4準会員国に科学協議会(同じくICSU傘下のIAA、IUGG、IUGSなど)、そしてオブザーバ(IASC、APECS=若手極域科学研究者協会など)の代表からなった会合である。8月9日から11日の3日間開催され、わが国からは、代表山内恭、副代表伊村智が出席した。初日の午前前半をCOMNAPとの共同開催とし、アルゼンチン科学大臣のCOMNAP開会挨拶やCOMNAP南極条約事務局の紹介、SCARレクチャー2件などが共同開催でもたれた。ちなみに、COMNAP会場は大きいりっぱな部屋で、各国の旗が代表団席に掲げられ、スペイン語―英語間の通訳も付くなど、かなり格式の高い(格式ばったというべきか)会合様式に見え、「本来SCARの下部組織だったものが分離発展したものなのに大げさ、大人数で格式ばっていすぎる」などというSCAR代表等からは、ひがみをこめた批判の声が聞こえた。この合同会合についても、両者の実質的な協議でもなく、その趣旨が不明だとの意見が多かった。
  代表者会合としても、全員が一同に会する全体会合を9日午前後半に行った後は、2つの分科会に分かれ、3日目11日の11時以降最後まで、再度全体で集まった。まず、モナコの準会員としての申請が認められた。その後、多くの議題は科学と運営の2つの分科会で審議された。科学分科会では、各SSGおよびSRPからの活動報告が各々45分と長時間にわたってなされた。各分野での(特に自分の属さない他分野)活動状況を詳しく把握するには良い多くの情報が得られる発表であるが、若干時間を取りすぎで、今後はSSGについても事前に文書を配布することでもっと効率的な審議をすべきとされた。内容的には、最初のSSG-GSの報告に対して、予算の執行率が極めて低く(未使用率76、94%など)計画がきちんとなされていないのではないかと指摘され、多くの議論となった。これはいずれのSSGにも多かれ少なかれ出ていることで、微妙な問題である。SCARの予算で本当に活動が行われているのならば問題なのだが、実際には、SCARの予算は潤沢には無く、別の資金で実質的研究活動は行われており、SCAR資金は会合費程度にしかなっていない中での予算の不使用の問題なのである。皆、分かった上での話であるが、もう少し制度的に工夫することで、無駄がないような執行形態が検討されるべきであろう。5 SRPの中では、ICESTARが今年で終了し、EGに移行する。同時に、南極天文・天体物理SRPが本格的に立ち上がり、ドームAでの、2010年からの第一期の予備観測期、第二期の2015年からの本格観測期などの、南極天文ブームを支えることとなる。各所での天文の積極的活動が目立った。SALEも今年終了、実質はロシア、イギリス、アメリカの具体的な掘削に移る。AGCSは2012年終了、ACEとEBAが2013年終了を期しており、各々は新しい考え方のものに入れ替わりのときを迎えた。SCAR改革後の第一期を終え、第二段を向かえたということであろう。
  SCARのこれからのあり方を規定する戦略として、新しい2011年からの5カ年計画”Strategic Plan” (2011 - 2016)が検討されてきた。SCARがいかにサイエンスの分野で先導者たり得るか、存在感を示し得るか、先端的な高度な科学を推進しなければいけないこと。また、SCARが南極条約体制の一員としいて生まれたいきさつからして、南極条約等への科学的な助言を行う役割も極めて重要であること、等が起草されてきた。この議論が今回の主要な課題として取り上げられた。わが国からは、単に先端的科学を推進するだけではなく、長期のモニタリング的な連続観測、その維持継続が様々な先端的サイエンスの実現には無くてはならない基本的なデータを提供するものであり、極めて重要でSCARとしても強調すべきであろうと意見を述べ、多くの賛同を得た。併せて、IPCCへのさらなる貢献の必要性の強調も提起されたが、これについては、既にSCARとしてのオブザーバを派遣することになっているとのこと。また、関連してSCAR全分野の科学シンポジウムであるOSCの持ち方についての議論も持ち上がり、これまで通りの2年毎、あるいは一回をビジネス・ミーティングのみとし4年毎、さらには間の1回はキーノート講演のみとする、あるいは現在別途開催している分野毎の生物、地学シンポジウムを開催するなどの諸案が出され、今後整理して意見を問い、来年の評議会にて決定することとなった。その他の議論が続き、今後さらに意見を取り入れ、10月中には案を固めるとのことであった。
  今回は、4年任期の副会長のうち2名、Selgio Malenssi(アルゼンチン)、とAntonio Meloni(イタリア)の改選の時期にあたり、選挙が行われた。アルゼンチン、ブルガリアおよび韓国から3名が推薦され、Selgio Malenssiが再選、Yedong Kim(韓国)が新任された。非改選の2名、Ad Huiskes(オランダ)およびRasik Ravindra(インド)を合わせ、副会長の内、2名がアジア選出となった。なお、会長Chuck Kenikutt(アメリカ)は任期4年の途中である。
  今後の会合については、次回2012年はアメリカ、オレゴン州ポートランド市に決まっており、7月13から25日の会期とされた。次々回の2014年については、ニュージーランドのクライストチャーチ市が立候補した。来年の評議会にて決まる予定。
  決算および予算についての議題は、2008および2009年決算については承認され、2010および2011年予算についても大きな変更はないことから順調に認められた。しかし、2012年予算については収入の不足が見込まれ、主な収入である各国分担金の20%引き上げた予算案が提示された。しかし、各国の分担金を増額することは容易ではなく、わが国も含めて困難な状況を発言した。なかなか合意に至らず、妥協案として、とりあえず2012年予算は分担金の値上げの無い範囲を認め、しかし「SCARの活動を計画通り進めて行く上では分担金の20%値上げが必要であることを認識した」との付帯事項を付すことで合意した。

次回開催予定: 2012年7月13日から25日、米国オレゴンン州ポートランド


写真1                            写真2

写真1:第31回SCAR総会における、常置科学委員会開会の様子
写真2:第31回SCAR総会における、SCAR代表者会合の様子


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